鎧の伝説
「・・・きろ」
腹部からドスンドスンという衝撃と共に激痛が走る。
「・・・きろ!—れーも!」
衝撃がさらに強くなり、それに伴い痛みも先程よりも増す。
ガナードは唸りながら目を覚ます。視界がボヤけているが、自身の腹の上に真っ赤な何かが乗っている。何度も瞬きをしているうちにそれがハッキリと分かってきた。
「ほら!こうすれば目を覚ますていったでしょ!!」
真っ赤なドレスを着たリリィが、後ろでどうしたらいいか分からずオドオドとしている白衣のイヌ族に向かっていった。
ガナードは口を開こうとしたが、口が思うように動かない。それどころか、腕や足、指先すら動かす事ができないことに気付く。視線を動かすと、自身が包帯に巻かれていることが分かった。
(デジャブ?)
その間にガナードの上に乗っているリリィが顔の前にまですり寄ってきた。
ジッと互いに見つめ合うと突然、
「寝てろ!」
リリィが突然指を2本突き立て、ガナードに目潰しをした。
「~~~~~~~~~~~~ッ!!!」
痛みの余り、ガナードは包帯越しに叫びながら体を大きく跳ねらせ暴れる。その上でキャッキャと喜びながらまたがっているリリィ。
「いけません!」
医師が慌ててリリィを持ち上げ、ガナードから離す。
目が充血し、開けることができず、激痛のあまり涙を流すことしかできない。
「何時まで泣いている!しゃきんとせんか!」
リリィは叱咤するが、なぜこんな叱咤されるか分からずにいるガナード。
中の騒ぎが気になったのか、医務室の扉が開かれる。
「騒がしい。なんだ?」
医務室に入ってきたのはペルジアンマリノア族の王直属護衛騎士の1人だった。
「リリィ王女が、あのお方に目潰しをしたのです」
「ん?」
騎士がガナードに振り向く。
「生きてた。凄い」
騎士はそう口にするが、全くと言っていいほど表情と言葉に感情がない。機械のような話し方だった。
騎士がジッとガナードを見つめると、ガナードの寝ているベッドの横に歩み寄った。
「こいつ、話せるか?」
騎士が医師に向かって聞くが、医師は首を傾げる。
「包帯。切れ」
「は、はい!」
医師はリリィを慎重に降ろし、鋏を使ってガナードの顔を覆っている分厚い包帯を切った。
「話せるかい?」
医師が優しく声をかける。
「ええ、なんとか」
久々に声を出したからなのか、ガナードの声は掠れていた。
「のめ」
騎士は水が入ったポットをコップに注ぎ、ガナードの口元に持って行った。
口元から少しこぼしながらだが、水を飲み干した。
「ありがとう」
「仲間を呼ぶか?」
「いるのか?」
「ああ。で、どうする?」
「呼んでください」
「わかった」
騎士は医師に『リリィ王女を頼む』と言い残し、部屋を出た。
暫くしたのち、廊下のほうがどたばたと騒がしくなる。
「ガナード!」
ミールがドアを破らんばかりに開き、ガナードに駆け寄る。その後にマコト、ヴァル、ラーブルが入る。
みんなが心配そうにガナードを見つめる。
「大丈夫なの?体、動かせるの?」
ミールがガナードの体に手を添えて聞く。
「包帯で動けない」
「たしかに」
ヴァルが手をポンと叩き納得する。
「包帯ってもう取れますか?」
マコトが医師に聞く。
「無傷なところがないくらいの大怪我だ。君達の魔法があったとはいえ、2日程度で治るとは思わない。もう少し安静にさせよう」
「そうですね」
2人がそんなやり取りをしている裏で、リリィがガナードの寝ているベッドに登り、勢いよく手をガナードの胸を叩く。
「何時まで寝ている!ブレーモノ!」
「イッ!」
「ちょ、ちょっと!王妃様!?」
ミールが止めようかどうか迷っているが、リリィは容赦なく胸を叩く。
「こいつはもう立てる!何時まで寝かせるつもりだ?早く起こせ!」
「ですが、この者は全身の骨を—」
「いーいーかーらー!!!」
医師の言葉を遮り、リリィはガナードの髭を引っ張り暴れる。
「いだいだいいだいいだいぃぃぃぃぃ!!」
激痛の余り悲鳴を上げるガナード。医師もミール達も手を出そうにも相手は王妃。下手に手を出してどうなるか分からないがゆえ、戸惑っていると突然リリィの動きがピタッと止まった。
「えっと、今のうちに・・・ね?」
ラーブルが人差し指をリリィに向け、能力で動きを止めた。
医師はすぐさまリリィの胴体を両手で優しくつかみ、そっと持ち上げた。
「はい。解除」
ラーブルが手を戻すと、リリィは目を丸くし、
「なんだ!?体が止まった!」
なぜ止まっていたかを不思議そうに自身の体を見たが、意識はすぐガナードに戻った。
「そうだ!今すぐ包帯を取れ!」
何度も要求するリリィに観念し、医師は仕方なさそうに、
「わかりました。取りましょう」
医師はリリィをそっと降ろし、ガナードの包帯を取り始める。
その様子をミール達は心配そうに見つめていたが、リリィはベッドに顎を乗せ、さながらご飯を待つ子供のようにルンルンとした表情で見つめる。
右腕の包帯が最初に取れる。
「どうだい?動かせるかい?」
医師がそう聞き、ガナードは右腕を曲げる。
痛みこそあるが、問題なく動き、天井に手を伸ばしたが全く問題はなかった。
「うん。動かせる」
「少し触るが、いいかい?」
「はい。大丈夫です」
「じゃあ、失礼するよ」
医師がガナードの右腕を触診し始める。
「凄い!!骨が完璧に治ってる!!」
医師は何度もガナードの腕を揉み、骨が治っていることを確認する。
「あの、そんなに揉まれると痛いです」
「ああ、ごめんごめん。つい夢中になってしまった」
医師は残りの包帯を取り始める。その間にガナードはミール達に今日までの経緯を聞いた。
ガナードが巨人の兜に覆われた後、暫くしたのちに巨人が倒れその残骸にガナードとベルガーとその部下の死体が落ちていた。ミールとマコトがガナードの治療を行っていたところ、王国の兵士がポータルで現れ、城の医務室へと運ばれていった。
その後、ベルガーたちの身元を調査したが少なくともドゥージー王国の兵士ではないとの報告をミール達は受けた。
その話が終わると同時に全身の包帯が取れる。
「やはり凄いな。あんなにボロボロだったのに治っている」
「そんなにボロボロだったんですか?」
「覚えてないのかい?全身傷だらけな上、足は砕けていたのだよ?」
「そうだったの?」
自分の足と腕を改めて見てみたが、そんな怪我をしていたとは思えない程無傷だった。
「しかも、そんな状態のまま戦っていたそうじゃないか。鉄の巨人を相手に」
「鉄の巨人?」
「今、城下町ではその話で持ちきりなんですよ」
マコトが解説をしだす。
「巨人が大暴れをしていたのを目撃した人がいたらしいのですが、私達と戦っている事は今のところバレていないようです」
「まあ、あれだけ巨大な奴が暴れてたら嫌でも目立つか」
「ところで、足は何ともないんだね?」
医師が首をかしげ聞く。
ガナードは自分の左足をベッドの上に乗せ、揉んでみた。ちゃんと骨があり、砕けていたとは考えられない程元に戻っている。
「何ともないですね」
ガナードは足を降ろし、スッと立ち上がる。
「一体どうなってるんだ?君の体は」
医者は唖然とした表情でガナードを見つめる。
「言ったであろう?もう立てると」
リリィが自慢げに医師にいうが、医師は全くと言っていいほど気にも留めてなかった。
「じゃあ、これから俺達はどうするんだ?」
「王様に御礼をしなきゃいけないでしょ」
ミールが呆れた顔でいう。
「確かにそうだな。お世話になりました」
ガナードはボロボロのままの自身の服に着替え、マコトから武器を貰い装備し直し、医者に深く頭を下げ御礼を言った。それに続く様にミール達も頭を下げた後、部屋を出た。
「まて!私を置いていくとは何事だ!ブレーモノ!」
慌てながらリリィも医務室を出た。
「彼の回復にもたまげたが、リリィ王女はなぜ彼の回復を見抜いたんだ?」
上唇の上に人差し指を置き、下あごのラインを親指で沿って撫でて考えるが、一向に結論は出ず、
「リリィ王女は鼻が利くというし、それの類なのか?・・・まあ、今はまぐれとしとこう」
と結論付けて元の業務に戻った。
ガナード達は医務室の前にいた護衛騎士の後に続き、リリィを部屋に戻そうと彼女の部屋へと向かっていた。
「もっと慎重に運べ!ブレ―モノ!」
「分かりましたから、耳元で叫ばないでください」
ガナードに抱きかかえられたリリィが耳元で大声で騒ぎ、ガナードはそれに半ば無気力な声で返す。
医務室を出てすぐリリィは『王女を歩かせるな!』と騒ぎ、廊下のど真ん中で座り込んだためだっこする事になったのだが、リリィのリクエストでガナードでないと嫌だとまた騒がれ今に至る。
「つまらない!何か面白い話をしろ!ヒステリーガール!」
「ヒステリーガール?」
ガナードがリリィの顔を伺うと、リリィは前で歩いてるミールに向かって顔を向けた。
「・・・え?私のこと言ってるの?」
視線に気付いたのか、ミールは振り返り聞き返した。
「お前以外ヒステリーなやつここにはおらん」
「あたしがヒステリー!?どこがですか!!」
「ほら、すぐ感情的になった」
リリィがそう指摘すると、ミールは目を泳がせ言葉に詰まらせた。
「早く面白い話でも魔法でもいいから私に見せよ!ヒステリーガール!」
「・・・ッ!」
言い返そうとしたが、相手は王女。下手をすれば首が飛んでもおかしくない。ミールはグッと堪え、何か面白い話がないか思い出そうと記憶を巡らせ、1つ思い出した。
「この間あった話なのですが—」
「すぐに思い出せない話など面白いわけない。何も話すな」
リリィはプイッと顔を背け、聞く耳を持たなくなった。
「—ッッッ!!」
ミールは愛想笑いと怒りの表情が入り混じり、顔面神経麻痺のような顔付になる。
「おい、小心者のクマ族。名はなんと申す?」
後ろにいるヴァルにリリィはガナードの肩に上半身を乗せて聞いた。
「え?私ですか~?」
ヴァルが自分を指さし首をかしげる。
「私はヴァルって名前です〜。あと、小心者じゃないですよ~」
「そんなことない!私の鼻に狂いはない!お前は小心者だ!な?ブレ―モノ」
「私には分かりません」
ガナードは素っ気なく返す。
「ブレーモノはつまらんやつだ。な?デブ」
デブと呼ばれ、イラっとしたマコトは半ば口調を強めて言い返した。
「話題を変えませんか?あと、私はデブじゃなく、骨太でぽっちゃりなだけです」
「デブではないか」
「デブじゃない!骨太でぽっ—」
言いかけた瞬間、先頭を進んでいた騎士がマコトのお腹にすこし食い込むように剣を突き出す。
マコトはあまりにも一瞬の出来事の余り、足を止め、目を丸くして剣先を見つめる。
「王女様にむかってその口調は失礼だ。あと、お前はデブ。それ以外認めない」
騎士が冷たい眼差しでマコトを睨みつける。
「ですが、わたしは—」
「認めろ」
「いえ、私はほね—」
「認めろ」
マコトは抵抗を止め、顔を俯かせ、
「・・・はい。私はデブです」
と渋々言った。
「それでいい」
騎士は剣を納め、先頭に戻った。
マコトは自分のお腹をさすりながら、『そこまでする必要ありますか?』と小声で愚痴る。
リリィはマコトに興味が無くなると、ラーブルをジッと見つめる。
「おい。ブレ―モノモドキ」
「モドキ?」
「お前じゃない!」
反応したガナードをリリィがドンと彼の背中に拳を振り下ろす。
「そこのハゲザルに用があるの!呼ばれるまで歩き続けろ!」
「はい。分かりました。王女様」
「それでいい」
少し満足げにふんと鼻を鳴らすと、ラーブルに話を戻した。
「で、先程私の体を止めたのはお前か?」
「その通りです」
そうラーブルが返すと、騎士は聞き耳を立てる。
「ほ~う。それは魔法なのか?」
「それは分かりません」
「自分で使ってる癖に、分からないとはどういうことだ?」
「えっと・・・何でしょうかね?返す言葉がありません」
苦笑いでラーブルは返す。
「変なの。な?ブレ―モノ」
「そうですね。王女様」
「もっと面白い反応をしろ!」
リリィはガナードの背中をまたドンと強くたたく。
そんなやり取りをラーブルが乾いた笑いで見守る中、ふと顔を上げ先頭の騎士に視線を向ける。
(今、見ていたよね?)
ラーブルが眉をひそめ、騎士をジッと見つめ続ける。騎士はその視線に気付いているが、決して振り返らず歩み続けた。
リリィの部屋に向かっている途中、奥から話し声が聞こえてきた。
「兄上!」
ガナードの腕の中にいたリリィが跳び下り、声のする方へと走っていった。騎士もその後に無言で駆け足気味で追いかける。
「兄上って事は、ウルフェンか?」
ガナードが顔を覗かせると、奥の部屋の扉が開き、そこからウルフェンがリリィに手を引かれ出てきた。
派手な装飾はないが、気品のある黒いタキシードを身に着けていた。
扉を出てすぐウルフェンはガナードの存在に気が付く。
「無事だったのか!」
ウルフェンはリリィの手を放し、ガナードに歩み寄った。
「怪我は何ともないのか?」
「はい。助けていただきありがとうございます」
ガナードは深く頭を下げた。
「いや、御礼を言わなくてはならないのは私の方だ。君には感謝してもしきれない程の恩がある。頭を上げてくれ」
ウルフェンはガナードの肩にそっと手を置き優しい口調でいう。
ガナードが頭を上げようとした瞬間、突然頭をガシッと掴まれ、
「きたねぇ面をウルフェン様に晒そうとするんじゃねぇ!!」
怒号と轟音と共にガナードを床に押し付け、その衝撃で床が少し揺れる。押し付けられた瞬間、その圧力でガナードの目玉が飛び出そうになる。
ガナードを地面に押し付けたのは屈強な体をした大きな体のイヌ族。特攻隊長のカンガルードッグのマックスだった。
「ネコ族は地面に伏してろ!1ミリも地面から頭を離すんじゃねぇ!!そのまま床を舐めずりまわしながら城から出ていきやがれ!!」
マックスはガナードを床に頭をこすりつけ、雑巾のように扱った。
余りにも衝撃的な出来事にミール達の思考は止まり、目を丸くして呆然としていた。その中で真っ先に止めに入ったのはウルフェンだった。
「マックス。お前、このお方がどんな方か知っての狼藉だろうな?」
静かに低い声でウルフェンは言い、ガナードの頭を抑えてる腕にそっと手を乗せる。
「こいつがどんな奴でも、どんな行いをしてようと、ネコ族が目の前にいるだけで反吐が出ちまいそうなんです。こうせざるを終えないんですよ!」
「その手を放せ!」
ウルフェンは声を少し荒げ、牙を剥き出しにし、マックスの腕を強く握る。それと同時に騎士が剣を抜き、マックスの喉元に突き立てる。
「・・・はい。ウルフェン様」
マックスは露骨に不満げな表情と声色でガナードから手を放し、後ろに数歩下がる。
「すまない。怪我が治ったばかりだというのに」
ウルフェンが膝をつき、立ち上がるガナードの肩にそっと手を乗せ、寄り添うようにゆっくりとたちあがる。
「大丈夫です。もし何かあったらマコトに治療してもらいます」
かなり強い力で抑えられたせいか、ガナードの首に違和感があり、何度も首を左右に動かす。
「マックス。これはいくら何でも擁護なぞできんぞ」
後ろからハキハキとした女性の声が聞こえた。ドーベルマンの軍師アレックスが鋭い目つきで睨みつけていた。それに気付いたマックスはオドオドしながら、
「ネコ族がどんな奴かお前も知っているだろ!忘れたとは言わせないぞ!」
「だからと言って、よりにもよってこの方にその行為をするというのは無礼だぞ。こんなにもお前を見苦しいと思ったのは初めてだ」
「み、見苦しい・・・」
その言葉が余りにもショックだったのか、マックスは面食らい俯きながら引き下がる。
「申し訳ない。今度から君と会わせないように取り計らう」
「そうしてくれ。アレックス」
「うぅ・・・」
呆れた表情でマックスを見つめるウルフェンとアレックス。その視線が余りにもきつかったのか、マックスはこの場から去っていった。
「少し時間を貰えないかな?母上が会いたがっているのだが」
「こんな身なりですが、いいのですか?」
ガナードは手を広げ、ボロボロになった服を見せる。
ウルフェンが顎に手を置き考えていると、リリィがガナードの傍に駆け寄り手を引いた。
「身なりはいいから母上の所に行くぞ!ブレ―モノ!」
リリィは全体重を使って引っ張り、ガナードはリリィが転ばないようにゆっくりと歩き、半ば強制的に連れていかれた。
「嬉しそうでなによりだ」
ウルフェンは優しく微笑みながら2人の後を追いかける。その後に騎士も続いた。
「美男美女の兄弟ねぇ」
「ミールちゃんウルフェン様を狙ってるの?」
ヴァルがミールに耳打ちで聞く。
「んなわけないでしょ。早く行きましょ」
ミールはそそくさと後を追いかけていった。
その後、ガナードはリリィに手を引かれ中庭へと案内された。中庭は職人が丁寧に手入れされた植木が並び、石畳の上を進んでいくと正面に噴水が見え、その傍にドレス姿のドゥジーヌ女王が水面を眺めながら佇み、脇には護衛騎士の1人がいた。
「母上!!」
リリィはガナードの手を放し、ドゥジーヌ女王の元へと走っていく。
リリィの喜々とした声に反応したドゥジーヌ女王は振り返り、リリィはそのまま彼女の足に抱きついた。
「どうしたの?リリィ」
「ブレ―モノを起こした!」
「ブレ―モノ?」
ドゥジーヌが顔を上げると、少し離れた所にガナードが胸に手を添えて跪き、その後ろからウルフェン達が追いつき、ウルフェン以外全員ガナードの後ろで跪いた。
「リリィあの方をブレ―モノと呼ぶのはよしなさい」
「ブレ―モノはブレ―モノ!」
全く悪びれる様子もなくリリィは言う。
ドゥジーヌは少し呆れたかのように鼻でため息を吐き、リリィの手を掴み、ガナードの前に歩み寄る。
「顔を上げてください。夜明けのアサシン達」
優しい口調でドゥジーヌは言った。
ガナード達は顔を上げると、ドゥジーヌはガナードの前に腰を降ろした。
「あなた方のおかげで、私達は大事な国を取り戻すことができました。いくら感謝しても足りません」
「勿体なきお言葉です」
「ご謙遜なさらないでください。さあ、お立ちになって」
ドゥジーヌはガナードの手を取り、優しく引いた。ガナードはそれに合わせ立ち上がる。
「体の調子もよさそうですね」
「はい。ここに運ばれ治療を受けたことを仲間から聞きました。助けていただきありがとうございます」
「英雄様をお助けできたのです。私達からしてみればとても栄誉なことです。御礼の言葉など勿体ない」
「英雄・・・」
そう言われこそばゆい感覚が走り、ガナードは苦笑いしながら頬をかく。正直、ガナード自身はそう言われるような人ではないと思っている。だからこそ、こそばゆい。
「今は褒美もなにもしてあげられませんが、お困りごとがありましたらお呼びください。喜んでお力になります」
ドゥジーヌは優しく微笑みかける。
その微笑みを見た途端、ガナードはある1つの決心を抱いた。
「では、そのお言葉に甘えて1つお聞きしたいことがあるのですが、よろしいでしょうか?」
「ええ、いいですよ」
「私達が運んでいた物は何だったんですか?」
ガナードがそう聞くと、一瞬でこの場の空気が凍り付いたのを感じた。ドゥジーヌの先程までの優しいほほえみから一転し、険しい顔になった。脇にいる騎士もガナードを睨みつける。
「ねえ。それはちょっと—」
「構いません」
その様子を見たミールは今の発言を撤回させようとしたが、ドゥジーヌが遮った。
「シエル。リリィを自室へ運んでいって」
「はい。女王様」
リリィに付いていた騎士はリリィを抱きかかえる。
「私も行く!放して!」
リリィはシエルの腕の中で暴れるが、それに構うことなくこの場を去った。
「ウルフェン。私はガナード様と話してきます。お連れの方たちのお相手をしなさい」
「わかりました。母上」
「では、行きましょう。ガナード様」
ドゥジーヌは城の中へ続く道へと歩み、ガナードと脇にいた騎士が彼女の後に続く。
この話を持ち出すのに正直勇気が必要だった。あの言葉があったからこそ、パッと見はただの鉄の箱。それを奪うのが金目の物目的の盗賊なら分かるが、来たのは帝国の者であろう超越者の兵士。頭が冴えてくるにつれ、タダならない物だと自覚し始め気になり始めていた。
ガナードは出来る限り情報を引き出そうと心に決める。
ドゥジーヌの後に続き、ガナードは城の一角にある塔へと向かった。人気はないが、手入れがされており埃と言ったような汚れが無かった。
騎士は入口に立たせ、ガナードとドゥジーヌの2人で塔に入った。長い階段を登り、塔の最上階にまで登ると1つの扉があった。
その扉を開け、中に入ると簡素な部屋がそこにあった。壁には本がギッチリ入っている本棚が3つ並べられている。窓が一つあり、そこから日がさし、その先にシックなテーブルとそれを囲むように椅子が4つ並べられていた。
「おかけになって」
ドゥジーヌが座り、その対面側の椅子に手を出し座るように促す。ガナードはその椅子に座る前に刀を取り、椅子の足元において座った。
「では、早速本題に入る前にこちらからお聞きしたいことがあります」
ドゥジーヌが先に口を開いた。
「何でしょうか?」
「この大陸に伝わる『鎧の伝説』について、どの程度知っていますか?」
「確か、3つの鎧があり、1つは武器を宿している鎧。2つ目は神にも悪魔にもなれる鎧。3つ目は自然を超越する鎧。この3つがあるという位しか知りません」
「では、それにまつわる歴史は?」
「まったく」
ガナードは首を横に振る。
ドゥジーヌは立ち上がり、本棚から分厚い本を1つ手に取り本を開き、それをガナードの前に置いた。
ガナードの目の前にある文字は見たことのない文字だが、瞬きすれば一瞬で日本語に変わる。この力は女神さまが体を作ったときに備えた力だ。
ドゥジーヌは本を指さしながら読み始めた。
「大陸に3つの鎧があった。1つは武器を全身に宿す『エンペラーの鎧』。2つ目は神にも悪魔にもなれる『カイザーの鎧』。3つ目は自然を超越する『キングの鎧』。何時からかあって、どうやって作られたか分からない。
この大陸の領主たちがバラバラだったとき、この鎧を求め幾つもの種族が戦争を起こしました。ですが、この時誰も知らなかったのです。鎧が人を選ぶということを」
「鎧が人を選ぶ?」
その不思議な言葉を思わずガナードは口にする。
「ええ。どのような理屈か分かりませんが、この鎧は人を選びます。
そして、この戦争の最中、資格の無いものに鎧がわたってしまった。渡った鎧はカイザーの鎧。資格の無いものに渡った事によりこの大陸は地獄と化した。敵味方関係なく闇に飲まれ、光りを浴びた土地や建物、人や作物は一瞬にして塵と化して後には何も残らない。あったのは人が住めることのできない虚無の土地のみ。武将による力試しや争いにしか生きるすべを見いだせなかったものが挑んだが、結果は惨敗だった。
次々と土地が虚無に変えられ、次は自分の所かもしれないという絶望が大陸中に飲み込まれる中、キングの鎧を身に纏った者が現れ、カイザーの鎧を止めるべく戦いました。戦いは激しく、その衝撃で地面が隆起し魔力を帯びた山が多くできた。戦いは長く続き、3日目の夜明けと共に戦いに終止符が打たれました。打ったのはキングの鎧。だが、鎧を壊すには至らなかった。
戦いを終えると、キングの鎧は虚無の土地へと向かい、そこを豊穣の土地へと変えた。そこだけでなく、大陸全土、戦いで荒れた土地を全て豊穣の土地に変えました。キングの鎧を身に纏った者は、それぞれの土地の領主や武将を1人1人説得していきました。
『この力があれば神にも悪魔にもなれる。だが、そのどちらも我々から全てを奪い、虚無へと変えることができる。最初から悪魔はおろか神すらいないのだ。いるのは我々【人】だ。例え、自分が神であったとしても信仰する人が居なければ意味をなさない。人を誑かす悪魔だとしても、人がいなければ悪魔の存在意義などない。
もう一度やり直そう。このチャンスを無駄にしてはいけない。我々はそれができる。【人だから】」
読み上げていると、ドゥジーヌの瞳に涙が溜まっていくのが分かった。
「私の亡き夫、オースタインはこの話が好きでした」
本を優しくなで、思い出に浸るように見つめていた。
それをみたガナードはオースタインという男の存在がどのような存在だったのか気になった。かつてこの大陸を1つにまとめようとした王。どんな王だったのか出来る事なら一目会ってみたかった。
ドゥジーヌは涙を拭い、呼吸を整えるように深く呼吸をすると続けた。
「だが、王の説得で全ての領主と武将を率いることはできなかったが、彼等も死の恐怖を目の当たりにし考えが変わったのか戦争をせずに静かに過ごした。そして、何時しかキングの鎧を中心とした国、ドゥージー王国が築かれた。その向かいにはカイザーの鎧を扱える者が王として統べる国、ネッコ―国が生まれた」
本を読み終えたドゥジーヌは向かいの席へと向かい座った。
最後の文を読み終えた瞬間、ガナードに1つの疑問が浮かび聞いた。
「ん?ガウェインの国は生まれなかったのですか?」
「虎王の国はこの戦争からしばらくして、ネッコ―国内でネコ族の待遇が他の種族より良いと知った種族が、ハイエナ族を中心とした反乱を起こしました。内戦が起きましたが、この時初代虎王が鎮圧の功績を上げた事により獅子王からエンペラーの鎧を授かり、国を築き上げました。こうして今の3つの国の形になりました」
「ハイエナ族と会いましたが、彼等は処刑されなかったのですか?国事犯でしょう?」
「最初はネッコ―国内でハイエナ族だけが処刑される予定でしたが、ドゥージー王国が待ったをかけました。王国は彼らを統治下に置き、監視するということを条件に引き渡しました。ネッコ―国も今回のことを反省し、ネコ族に対する優遇をやめました。最初は不満を口にしたらしいですが、徐々にその声が小さくなっていきました。
ハイエナ族は戦いの中で罠を作るのが上手かったため、ドゥージー王国はそれを生かし狩りと放牧で生計を立てることを提案し、彼等に昆獣の生態や放牧に向いている昆獣を教え、ハイエナ族もまたそれに応えようと努力し生計を立てました」
「そして、上手くいき平和になったところ3つの国の内戦と帝国の侵略が起きた」
ガナードがそう言うとドゥジーヌは何も答えず黙った。
「正直、ドゥージー王国でも余り上手くいったと言えなかったのです」
「と、言いますと?」
「オースタインは国の暴走を止めようと権利を3つに分けましたが、権力を持った右大臣と左大臣がオースタインを追い詰めていきました。それでも、夫は民の支持が高く3つの国を1つにする政策を進められましたが、それが達成することなく亡くなりました」
「それが、『狼王の献身』」
「はい。突然起きた内戦で心身ともに尽きた所に帝国が押し寄せ、抵抗する間もなく私が捕まり、保護という名目の中の人質を取り国を乗っ取りました」
「なるほど。それが解放される前の出来事だったのですね」
「ええ。少し話が逸れてしまいましたね」
「私もこの国について知りたかったので、良い機会でした」
「そう言っていただけると助かります」
ドゥジーヌは優しく微笑み返す。
「では、あなたが知りたかったのは運んできた物ですね」
「はい」
「今回あなた達が運んできたのがその『鎧』だったのです」
突然出たドゥジーヌの答えにガナードは一瞬思考がフリーズした。
「あれが、鎧?」
ガナードが頑張って出た言葉がそれしかなかった。
「あんな小さな箱に鎧?」
「これ以上の事は流石の英雄様と言えど、口を割ることはできませぬ」
ドゥジーヌの目つきは一瞬にして鋭くなり、ガナードを睨みつける。その風貌はまさしく女王そのものだった。
「分かりました。女王様がそういうなら私は鎧の事は深く追求しません。ですが、今の言葉である程度察しが付きました」
「察し?」
「はい。運んでいる最中、私は帝国の兵士に襲われました。どうやって鎧だと分かったのか分かりません。ひょっとすればまぐれかも知れない。ですが、過剰戦力とも言える必死さに彼ら帝国の目的は分かりました。それは、『鎧を手にすること』ですね」
ガナードがそう答えると、ドゥジーヌは頷き返した。
「ご名答です。ですが、どの程度必死だったか、それをお見せします」
ドゥジーヌはガナードに手招きをする。ガナードは小首を傾げながらも立ち上がり、ドゥジーヌの横に立った。
「ドレスのフックを外していただけますか?」
ドゥジーヌはガナードに背中を向ける。
「いいのですか?」
そう聞くと、ドゥジーヌは頷き返す。
ガナードはドゥジーヌの背中に手を伸ばし、ドレスのフックを外し始めた。半分まで外したところで彼は目を丸くし、息をのみ言葉を詰まらせた。
「この傷は・・・一体ッ!?」
美しい白い毛並みには相応しくない、赤黒く肉が見えるまで深く付いた傷跡が背中にあった。その傷跡は背中をほぼ埋め尽くしていて、どのようにして付いたのか想像が出来ない。
「私が捕らえられた時、道化師の男に受けた拷問の傷跡です」
「道化師の男?マディスですか!?」
「ええ。そう名乗っていましたね」
ガナードの脳裏にガウェイン城で出くわしたマディスがチラつく。何とも言えない不気味な白化粧で不気味と言えるほど笑顔を見せるあの男。
背筋がゾッとしながらガナードは隠すようにドレスのフックを元に戻した。
「今でもこの傷は疼きます。あの時、私の心は折れかけていました。あと一歩のところでガウェインが来てくれなければ私は吐いていたと思うと、恐ろしくて・・・」
ドゥジーヌは自身を抱きしめるように手を回し、震えながら背中の傷跡を優しくなでる。
「ふふ」
突然ドゥジーヌが静かに笑い、振り返る。
「気味が悪いでしょう。一国の女王がこんな体をしているなんて」
微笑みながらいうが、ドゥジーヌの声にはどこか怯えがあった。余程つらい拷問だったのだろう。強がりでもしない限り気が持てない程に。
ガナードはそんな彼女に向かってまっすぐに、
「あなたは立派な女王です。悪魔に鎧が渡らないように最後まで守り通したのですから」
「そうですね。あの悪魔から鎧を守ったんですもの。これは勲章とも言えますね。ですが、それのせいで民はひどい仕打ちを受けたのもまた事実です」
そう言い傷跡を撫でるが、暗い顔付のままだった。
「ですが、これでもっと謎が深まりましたね」
ガナードが顎に手を置き、輪郭に沿って撫でおろす。
「謎と言いますと?」
「あっさりと帝国が逃げていったことです。反乱があったとはいえ、余りにも潔い。正直、帝国は彼等を打ち負かすことができたと思うのです」
「それはどういうことですか?」
ドゥジーヌはガナードを睨みつける。
「あなたの兵が弱いという意味での打ち負けるということではないのです。むしろ、彼らが強すぎるのです。想像をはるかに超えるほどに」
「強すぎる?」
「ええ。私は一度だけ帝国の王、オディオと戦いました」
「オディオと!?」
予想だにしない名前が出たのか、ドゥジーヌは面食らった。
「はい。彼には一切攻撃が通じませんでした。炎を飛ばしても、気の斬撃を繰り出しても一切彼には当たりませんでした。正直、仲間が加勢に来なければ命は無かったでしょう」
「その話は本当なのですね?」
「本当です。彼に触れることはできましたが、たった一度だけでした。その一度も一瞬で逃げられましたが」
ガナードの目を真剣に見つめてドゥジーヌは聞いていた。最後まで聞き終えるとガナードから顔を逸らし、口先に人差し指を添え俯く。
「その話が本当なら、帝国が逃げるのも謎ですね。先日の巨人が帝国の兵だったら、我が軍に打撃を与えることもできたでしょう。ですが、何もせず明け渡すとは・・・」
「失礼ですが、先日運んだ鎧が偽物だったのでは?」
「いえ、あれは間違いなく本物でした。私の鼻に狂いはありません」
ドゥジーヌは凛とした顔付きで言った。そこから嘘でも偽物でもないという自信は確かなものだった。
「鎧に変わる何かが見つかったとか?」
ガナードは改めて訊ねる。
「それしか見当は付きませんが、気になりますね」
「帝国の追跡はしているのですか?」
「はい。ですが、何処に逃げたか全く何の手がかりも掴めてはいません」
「そうですか。何かつかめると良いですね」
「ええ。あの者達は絶対に逃がしません」
ドゥジーヌは拳を作り、震えながら握り締める。その怒りは自分達が受けた仕打ちだけではない。帝国の上層部の処刑はおろか、何も責任も取ることなく雲隠れ。国を荒らされた身としてはこれ以上にない侮辱。執念にも似た怒りが彼女から出ていた。
「帝国には私も借りがあります。私の方でも見つけましたら報告します」
「ええ。その時はお願いします」
「本日は私のワガママに付き合ってくださりありがとうございます」
ガナードは深く頭を下げお礼を言った。
「もう良いのですか?」
ドゥジーヌは表情を和らげ、ガナードを見つめる。
「はい。全てではありませんが、今の話で気掛かりだったことが解消されました」
「そうですか。それは良かったです」
ドゥジーヌは席を立つ。
「今は何も褒美を出せませんが、後日改めて話しましょう」
「ありがとうございます。私の褒美は今の話で十分でしたので、仲間の方に褒美をやってください」
ガナードから出た言葉にドゥジーヌはキョトンとし、
「いいのですか?今の話が褒美で」
「はい。かなり機密な話のようでしたので、これを聞かされた上に褒美を貰うのはおこがましいです」
「遠慮なさることはないのですよ」
「私は大丈夫です。もう十分に受け取っていますので。それに元々、褒美だ名誉の為に行った訳ではないので」
「では、どうしてあなたは戦ったのです?」
「私みたいな人を増やさないためです」
「あなたのような人を?」
ドゥジーヌは不思議そうな顔でガナードを伺う。
「はい。私のように、家族を奪われる悲しみを増やさないためです」
そうガナードが答えると、ドゥジーヌは優しいく微笑みかけ、
「ご立派ですね。その心がけを忘れないでください」
「はい。女王様」
ガナードは胸に手を当て、もう一度深く頭を下げる。
「私は暫くここに残ります。貴方様はどうなされるのですか?」
「仲間と共にここをでます」
「もうですか?お目覚めになったばかりでしょう?」
「ネコ族を歓迎するような雰囲気ではなさそうなので、落ち着きましたら改めて訪れます」
「そうですか。その時を楽しみにしております」
「失礼します」
ガナードは刀を腰に差しなおし、扉の前で一礼し部屋を出た。塔を出ると入口の脇には護衛騎士が佇んでいた。
護衛騎士は出てきたガナードをジッと睨みつける。
「女王様は暫く残ると言っていました」
ガナードはそう言い残し、塔から離れた。それと同時に護衛騎士は塔の中へと入っていく
。
ガナードは庭を抜け、城の中に入ろうとした瞬間、
「見つけた!」
遠くから聞き覚えのある声が聞こえた。
その方角へと顔を向けると、リリィがドレスのスカートを持ち上げこちらに走って向かってくる。その後ろから真顔で護衛騎士が小走りで向かってくる。
ガナードの足元にまで走り、息を整えると、
「ブレ―モノ!私を運べ!」
「えぇ・・・」
その為にわざわざ戻ってきたと思うと、思わず困惑の声が漏れる。
「拒否などしないだろう?」
リリィが満面の笑みでそう尋ねる傍らで、護衛騎士は無言で睨みつける。
「はい。喜んで」
ガナードは愛想笑いで返し、リリィを抱き上げる。
その様子を塔の天辺で見届けていたドゥジーヌは思わず目を丸くする。
「リリィが他人にあそこまで心許すなんて」
リリィは物心つく前から人を選ぶような気質があった。
かつて城にいた右大臣と左大臣が赤子のリリィの近くに行くと酷く泣いていたという過去があった。だが、マックスやアレックス、護衛騎士達には泣くそぶりは全くなかった。
これが何を意味するかというのは当時誰もわかっていなかったが、成長し言葉を発するようになるにつれリリィの相手の素質に気付く者たちが出てきた。
(なぜあの子は無礼者と呼ぶのかしら?)
ドゥジーヌはその言葉の本質が気になり、顎に手を置く。
「まあ、本当に無礼者だったら抱っこなんてさせないでしょう」
そう結論付けると、窓際から離れ、テーブルの上にあった本に手を添える。
「あの子なら大丈夫ですよ。オースタイン」