両者の溝
能力名「underground sea」
地面や壁を水のように潜り、泳ぐことが可能。
他人や物を地面や壁に引きずり込むこともできる。その中を呼吸できるのはミッドウェイ本人のみ。引きずり込んで簡単に相手を殺せるが、本人はそれが気に食わず、やるとするなら最終手段である。
自身の埋まっている体の部分は自在に切り離せ、壁や地面がつながっている限りどこでも体を飛ばせる。どんなに離れていても体として繋がっている。理屈はわからない。ただし、切り離している時、埋まっている部分から上は地表から出せない。
壁に耳を当てると、壁や地面に響いてる音を拾える。
要塞の壁が崩れ落ちたことによる怪我人は出たが、その全員がマックス率いる部隊だけだった。頑丈さが取り柄の彼らはかすり傷ぐらいで済み、なんなら自分たちだけで瓦礫の中から出てきた。
凍り付いたカテジナ達は無事で、今は牢屋に閉じ込められている。
それを確認したウルフェンは、リリィを抱えたまま自室へ行き、胸の中で眠っているリリィをそっとベッドに寝かしつけた。
彼は未だに実感が掴めない。本城で幽閉されているはずの妹が、こうして目の前にいること。そして、妹がこうしているということは、母も無事なのだと希望が湧く。
リリィを見守っていると、扉が軋みながら開く。
「ウルフェン様。少し、よろしいですか?」
軍師アレックスが覗きながら尋ねる。
「なんだ?」
「サマルーンの命で処刑するはずだった者たちですが、いかがいたしましょうか?」
「解放しろ。彼女らはあのサルの被害者だ。丁重に扱え」
「はッ・・・それと、ウルフェン様が探していたガナードという者ですが」
「どうなった?」
「見つけたのは、見つけたのですが・・・」
アレックスが口ごもる。
「ん?どうした?」
「いえ、ウルフェン様も来ていただけると助かると申しますか・・・」
「?」
ウルフェンは回復した護衛騎士団をリリィに就かせ、ガナードのいる裏庭へと向かった。
要塞の裏庭から怒号が聞こえてくる。
その所へと向かうと、木の幹にガナードが必死にしがみつき、その根元では多くのイヌ族の兵士がガナードを引きずり降ろそうと木を揺らし、槍で突くといったことをしていた。
「だーかーら!俺は『ウルフェンの元にリリィを安全に届けた』って言ってるだろ!」
「嘘をつけ!貴様は『ウルフェン様の前でリリィお嬢様を辱めてやる!グヘへへへへ』とリリィお嬢様に脅していただろ!」
「誰もそんなこと言ってねーよ!」
「なに!?『リリィお嬢様でイってない!』だと!・・・まさか!リリィお嬢様ではなく、ウルフェン様を辱めたのか!?」
「なんでだよ!どうやったらそうなるんだよ!このスケベども!」
「なに!?『もうスケベはした』だと!2人を手籠めしたのか!!」
「もういや!誰か助けて!」
「全く。あいつらは・・・」
ウルフェンは呆れながらその群衆に近づく。
「ウルフェン様!」
一人の兵士が気付くと、それに連鎖し周りの兵士達もウルフェンの存在に気付き、木に群れていた兵士達はあっという間に整列した。
「ガナードと言ったな!もう大丈夫だぞ!」
「あ!ウルフェン!」
ガナードは木の天辺から跳び下りる。
上手いこと地面に下り、服に付いている葉っぱを落とす。
「助かった。兵士達は全くと言っていいほど話を聞いてくれないから、どうなるかと・・・」
「すまなかった。何せ、ネコ族となると我々は敏感なもので」
「そうなのか・・・そうだ!リリィは!?」
「リリィなら今、寝ている」
「そうか。まあ、色々遭ったからな・・・」
「リリィについてだが、君にはなんてお礼したらいいのか」
「いや、お礼なんてされる筋合いなんてないですよ。現に、あの子をちゃんと守れなかった」
「だが、リリィを助けてくれたことは事実だ。私にできることがあったら、遠慮なく言ってくれ」
「うーん。まあ、お礼はまた今度でいいですよ」
「そうか。君とは色々と話したいのだが、いいかな?」
「構いませんよ」
ウルフェンの後に続き、要塞に戻ることになった。
「おーい!」
空から誰かが呼んでいる。
2人は見上げると、そこにはグリフィスが自分の部隊を引き連れゆっくり降下していた。
「白騎士さまー!要塞内ではあまり飛ばないでください!間違えて撃ってしまいますよ!」
「すまんすまん!癖でな!」
慣れたやり取りを兵士と交わすグリフィス。
「あ、グリフィ—」
「逃げろ!」
ウルフェンが突然焦りだし、ガナードを要塞に押し入れようとする。
「え?なんで?」
「あいつは帝国の幹部、『白騎士』だ!見つかれば殺されるぞ!」
「落ち着いて!大丈夫だから!」
ウルフェンの手を振り払い、グリフィスが下りるのを待つ。
そうしている内に、グリフィス達は地上に降り立った。
ウルフェンは静かに腰を落とし、剣を抜き取ろうとする。
「サマルーンはどうした?」
「ちゃんと始末したさ。この、炎で!」
ガナードは右腕を突き出し、炎で覆う。
「熱くはないんだな?」
「ああ。まあ、熱いというか、暖かいに近いな」
「やはり、その炎はピーチコックの炎。『浄化の炎』だな」
「その『浄化の炎』ってなんだ?」
「コーチピックがそう名付けた物でな。炎を操るだけでなく、その炎を浴びた超越者は能力を扱いずらくなるんだ。それが厄介なのと、奴の野心を恐れた帝国がここに左遷させたんだ」
「へー。これってそんな能力なんだ・・・」
手を振り、炎を消す。
「あのー隊長」
グリフィスの後ろにいた兵士が声をかける。
「どうした?」
「サマルーンを始末したと言っていたのですが、お知り合いなのですか?」
「おお、そうだ。紹介し忘れた」
グリフィスはガナードの肩に手を回し、ポンと叩く。
「このチーターの暗殺者はガナード。信頼できる筋から紹介されたんだ。出会って日は浅いのだが、なかなかユニークな奴だ。信頼できる。今後、作戦を共にするから、変にいざこざなんて起こさないように」
「よろしく」
ガナードは右手を差し出す。
「こちらこそ」
兜を取り、顔を露わにしながら握手をかわす。
種類は分からないが、肉食鳥というのが分かった。
「味方なのか?」
状況を読めないウルフェンはただポカンと眺めていた。
「ウルフェン殿。ガナードとの立会いの下、話しをしたいのだが、よろしいですかな?」
グリフィスは翼を広げ、周りから見られないようにして言う。
「アレックスも立会わせるというなら、応じよう」
「構いませんよ」
翼を戻し、ガナードに振り替える。
ガナードはグリフィスの部隊と挨拶しまわっていた。
「ガナード!こっちに来てくれないか?」
「え?ああ、分かった!」
ガナードは軽く別れの挨拶をし、ウルフェンの所へ向かう。
「白騎士殿はガナードの立会いの下、話しをしたいとのことだ。すまないが、付き合ってくれないか?」
「いいですよ。元より、私達はそっちが『メイン』で来たんですからね」
「メイン?」
「それも含めて話すので、行きましょう」
「わかった」
3人は歩を進め、会議室に
「そうだ。あの要塞が崩れたが、ケガはしてないのか?」
グリフィスがガナードに聞く。
「ん?いや、そんなに大きなけがはしてないけど・・・そうだ!思い出した!」
ガナードは手を叩く。
「この要塞の地下に『ガウェイン』って言うトラ族が捕まっていたんだった」
「・・・いま、『ガウェイン』って言ったか?」
ウルフェンとグリフィスの顔の筋肉が硬直する。
「ああ。リリィと知り合いだったな。ガウェインって、どこかで聞いたんだけど、思い出せないんだよな・・・」
「本気で言ってるのか!?」
腕を組み、記憶を巡らせているガナードに、ウルフェンが肩をつかみ、軽く揺さぶる。
「ガウェインはネコ族のもう一人の王、虎王のガウェインだぞ!」
「虎王・・・あ!そうだった!」
「それが何故、こんな所に幽閉されてるんだ!?」
「知らない!俺が聞きたいよ」
ガナードとウルフェンはグリフィスに顔を向け、答えを求める。
「いや、私も今知ったところだ。まあ、彼も呼んで聞いたほうが早いな」
「それもそうだな」
ウルフェンは兵士を使い、アレックスとガウェインを会議室に呼んだ。
会議室では張り詰めた空気で満たされ、誰も口を開かず、グリフィスとその隣で座っているガナードに視線が向けられる。特に、ガウェインがグリフィスに向けている視線は殺気がこもっており、グリフィスもガウェインを睨み返している。その溢れんばかりの殺気を感じているガナードは軽い胃潰瘍になりそうだった。
ウルフェンが本来、話を切り出すのだが、2人の殺気に押され口を出せずにいる。
「・・・で」
この空気の中、ガウェインが口を開いた。
「なんで白騎士がこんな所にいるんだ?」
「私が来たのは、コーチピックの死因の究明と、ここの要塞の後任者として来た・・・と言う名目だが、実際のところ左遷だ」
「はッ!左遷か!俺を撃退し、ドゥージー城を攻め落としたという功績を残したというのに、哀れな奴だ」
ガウェインは挑発参りに鼻を鳴らし、ふんぞり返る。
「笑ってくれても構わない。もう、私は君達に敵意はない。それどころか、私の部隊はデスボナ帝国に忠義はない」
「そういきなり言われてもな。根拠が全くない」
「その通りだな。だから、私が怪しい動きをしたら問答無用で潰しても構わない」
「3枚におろしても復活する奴がよく言うぜ」
ガウェインは椅子に持たれながら呆れる。
「裏切ることを帝国は見越してるんじゃないのか?こうしている間にも、誰かに聞かれてるかもしれないぞ」
「その心配はない。今さっき、その諜報員を殺した。情報は帝国に行くことはない。安心してくれ」
「それが本当なら、そいつの死体は今どこにある?」
ガウェインがそう聞くと、グリフィスは席を立ち、窓を開けた。
「おーい!持ってきてくれたか?」
窓から上半身を出し、下にいるグリフィスの部下を呼ぶ。
「はい!ここにあります!」
部下の手には白い袋が握られていた。
「よし!投げてくれ!」
「了解!」
部下がそれを投げ、グリフィスは掴む。
それをそのままテーブルの上にまで運び、袋の結び目をほどいた。
「ウゲッ!」
ガナードだけが顔を逸らした。
袋の中には白目を向き、口の両端に泡を溜めたまま舌を出しているミッドウェイの生首があった。
「ほう。こいつが諜報員か」
「こいつは一人で行動する。他の奴がいると邪魔なだけといって、組まないんだ」
ガウェインはその頭を手に取る。
大きな手にすっぽり収まり、目や舌を何度も突き、本物かどうかを確認した。
「どうやら、本物のようだな」
ミッドウェイの頭をそっと元の位置に戻す。
「これで信用してくれとまでは言わない。だが、私の話を聞いてくれるだけのことはして欲しい」
「・・・いいだろう。話せ」
「助かる」
グリフィスは再び席に着く。
「まず、デスボナ帝国の動きだが、このままいけば自国を滅ぼしかねない」
「と、言うと?」
「ただでさえ重税で生活がままならない中、ここの囚人を含めた神父たちが村や町でやりたい放題だ。しかも、それをトップが認識しても何も指導しない。何故、こんな政策をするのかも分からない」
「それをお前らは黙ってみていたのか」
「色々と呼びかけ、やめさせようとした結果が今の私だ」
「ふーむ・・・」
ガウェインは下あごを撫でる。
「ドゥージー王国の兵士達はどうしてたんだ?」
ウルフェンとアレックスに顔を向けながらガウェインが聞く。
ガウェインの問いにアレックスが答える。
「我々も助けようと何度も試行錯誤したのだが、そういうことをやった所は洗脳されて、奴等の言いなりになっている。洗脳された兵士はここにはいない。まだ、あちらにいる」
「反乱を起こす気にはならなかったのか?」
「女王を人質取られてるというのに、できるわけがないだろ!」
テーブルを強く叩き、ガウェインを睨みつける。
「アレックス」
「・・・申し分けありません。王子」
アレックスは深く一呼吸し、気持ちを落ち着かせる。
「女王が人質ってことは、リリィだけは何とか逃げ出せたんだな」
「いや、そのリリィも人質にされていた」
「なに?」
「私も正直、驚いてる。何故リリィがガナードに連れられていたのか」
ウルフェン達はガナードに注目し、答えを求める。
「そういえば、どうして連れてきたんだ?」
グリフィスもガナードに答えを求める。
「いや、俺も何時ついてきたのか分からないんだ。ここに着いたら、樽の中にリリィが入ってたんだ」
「そういえば、君はどこから入ってきたんだ?」
アレックスが聞く。
「まずはそこからか・・・」
ガナードはグリフィスと共に事の全容を伝えた。今回行った作戦、カテジナ達の事、グリフィスが女王達を助けたこと、そして、これから行う戦についても。
「なるほど。事は大方理解した」
「お母様からの手紙を預かっている」
グリフィスは鎧の中に入れていた手紙の入った袋を取り出す。
ウルフェンはそれを受け取り、手紙を取り出し、黙読し始める。
「・・・確かに。この字体、母の物だ」
「見せてくれ」
ガウェインは手紙を取り、目を通す。
「確かにドゥジーヌ女王の物だ」
「では、力を貸してくれるのか?」
「残念ながら、それはできない」
ウルフェンがピシャリと言う。
「・・・やはり、民のことが気がかりで?」
「ああ。残された兵士の事も気になる。仮に、その戦に我らが加勢し、その間に民が安全だという保証もない。勝利したところで、民がいなければ実質、国として成り立たない」
「やはりそうなってしまうか」
「兵はどのくらいいる?」
頭を抱え、悩むグリフィスにガウェインが聞く。
「兵?」
「そうだ。城を取り囲んでいる兵士の数だ」
「・・・万はいるだろう」
「よし、なら倒せるな」
口角を上げ、笑って見せる。
「なに?」
「聞こえなかったのか?俺がいれば、そいつらを倒せるって言ってんだ」
「もしかして、『鎧』が使えるのか?」
「ああ。だが、鎧は城にある。それを取るか取らないかで話しが変わっていく」
「どうやって取りに行く?」
グリフィスがそう聞くと、ガウェインは人差し指を立て、グリフィスに向ける。
「俺を城まで飛ばして運べ」
「正気か?」
「ああ。それに、お前はどうやっても死なないんだ。平気だろう?」
「だが、そこまで運ぶにしても、翼をやられれば―」
「途中、飛べなくなったとしても投げ飛ばせばいい。そこから向かう」
「本気で言ってるのか?」
「ああ。本気も本気。むしろ、それしか打開策はないと思うぞ」
「・・・ドゥージー王国の手を借りれないと言うなら、今はそれに掛けるしかないのか」
「すまない。白騎士殿が反撃の機会を作ったというのに、それを裏切るような形になってしまった」
ウルフェンが頭を下げる。
「いや、一国の王として当たり前の事だ。私も、時間が足らないが故、このような作戦しか立てられなかったことを許してくれ」
グリフィスも頭を下げる。
「えっと、いくつか聞きたいことがあるんだけど、いいですか?」
ガナードが手を上げる。
「ああ、何でも聞いてくれ」
ガウェインが笑顔で対応する。
「皆、気になってるんだと思うんだけど、どうしてここに虎王がいるの・・・ですか?」
「そういえば、そうだったな」
グリフィスが思い出したかのように言う。
「俺がここにいる理由、誰も知らないのか?」
「誰がここに連れてきたんだ?」
「さあな。特に何も言われないまま、目隠しされてここに連れ込まれた。白騎士
なら、何か知ってるんじゃないのか?」
「いや、私も今さっき初めて知ったんだ。何か心当たりでもあるのか?」
「ふーむ。白騎士の左遷に俺の秘密裏の輸送。一体何をしたかったんだ?」
「アレックス。どう思う」
ウルフェンが聞く。
「そうですね・・・デスボナ帝国は理由がどうであれ、自ら破滅の道を辿っている。そして、そこに白騎士の左遷に、ガウェインの輸送。私達、兵士の合流。それもこの場所に・・・
最悪の考えですが、帝国はここで我らをまとめて消そうとしたのでは?」
はっきりとした答えが出ない中の、恐ろしい考え。確かに、今ここにいる者たちは全員が帝国にとって邪魔者。それが一カ所にまとめられ、消すのに最適である。
「でも、どうやって?」
ガナードが聞く。
「問題はそこなんだ。魔法や武器で消すにしても、大規模な兵士の動員が必要だ。万人をネッコ―国に向かわせている分、人手が足りないはず。囚人を動員しているのがその証拠だ。
さらに言えば、白騎士は不死身。攻撃を受けたのなら、反撃することを目視するはず。白騎士と戦うのは、帝国にとって大きなダメージになる。そんなリスクを犯せるのか?」
「確かに。いくら破滅の道を辿ってるとはいえ、自分たち(トップの幹部)にはダメージがあまり無いようにはしてきてた。例えこの国が滅びようとも、奴らは逃げる準備を整えている」
「結局、帝国は何をしたいわけ?」
ガナードの質問に皆、沈黙する。
グリフィスを含む、この場の全員が
「・・・わからん。これが、世界をより良くするのか?」
「世界をよりよくだ?」
ガウェインがグリフィスを睨みつける。
「これのどこが良いってんだ!お前等、帝国が侵略してきて、土地は枯らすわ、虐殺はするわ、民を奴隷にするわで、ボロボロなんだぞ!?」
「だから私は裏切った!」
「実際の所、どうだかな?今度は俺等を裏切って、帝国に俺等を売り飛ばすんじゃないのか?ええ?白騎士さんよ?」
「貴様、いい加減にー!」
「やるか!」
2人は立ち上がり、テーブルに片足を乗り上げる。
「グリフィス!」
「ガウェイン殿!」
ガナードはグリフィスを、ウルフェンはガウェインを押さえ、止める。
「落ち着てくれ。ここで冷静さを欠いたら、信頼なんてされないぞ」
「ガウェイン殿。あなたの怒りはごもっともです。ですが、今は反撃のチャンスが来ているのです。落ち着いてください」
「「・・・」」
ガウェインとグリフィスはゆっくりと腰を落とす。
だが、空気は最初の時に逆戻りした。
そして、また沈黙。殺気が溢れんばかりのにらみ合い。
「え、えっと、他にも聞きたいことがあったのではないのか?」
アレックスがガナードに話しを振る。
「あ、ああ!そうだった!その、ネッコ―国でガウェインとグリフィス達が向かっている間、ウルフェン達はどうするのかな~って」
「正式にではないが、私達は城を中心に東西南北から町を開放しつつ城を攻め落とす考えでいる」
「なるほど。その作戦はそちらで決める感じですかね?」
「ああ。君はどうするんだ?」
「私は、グリフィスについていこうかと」
「そうか。じゃあ、それぞれ話し合うってことで、この場は一旦解散で」
「ああ。そうするか」
ガナードが立ち上がると、ウルフェンとアレックスも立ち上がった。
だが、肝心の2人は睨み合って立とうともしない。
ガナードとウルフェンは一度目が合い、互いに頷く。
「グリフィス。ほら、行こう」
ガナードはグリフィスの腕をつかみ、立ち上がらせる。
「ガウェイン殿。こちらに」
ウルフェンはガウェインの腕をつかみ、立ち上がらせ、3人で会議室を出た。
会議室に残されたガナードとグリフィスは、少し時間をおいてから会議室を出た。
ガナードは正直、後悔した。グリフィスと共にネッコ―国を助けに行くことになったが、肝心の戦力はガウェインしか確保してないうえ、目を離せば殺し合いが始まりそうな関係の2人。ガウェインは勝てるといったが、果たしてどうなるのやら。
(ああ、マコトに会いたい。会って、ほっぺやお腹プニプニしたい)
ガナードは軽く現実逃避し、胃の痛みを無くそうとする。