51話 夢想
この星で一人で過ごす初めての夜。
不思議な夢を見た。
サーカス団の観客席に俺は座っていて、場内が暗くなったかと思うとスポットライトでステージ上の何かが照らされた。
照らされた場所には小さな白いロボットが立っている。
「レディースアンドジェントルメン! そしてロボット達よ! ようこそ御出でくださいました! 国越え空越え星を越え、遥々やってきた我ら星の遊劇団! 今宵はどうか立場を忘れ、存分に楽しんでいっておくれ!」
白いロボットがそう言い終えると、後方から様々な楽器を持ったロボット達がステージに登場した。
彼らは軽快な音楽に合わせながらダンスを踊っている。
オーケストラの前座が終わるとステージ中央に再び小さな白いロボット。
どこからか取り出したトランプを器用にショットガンシャッフルし、カード一枚一枚を宙に浮かべた。
白いロボットが観客席の先頭にいる女の子に何やら話しかけると、ドラムロールが始まった。
シンバルの音と共に宙に浮いたカードを一枚女の子に差し出すが、女の子はきょとんとしている。
何かのマジックのつもりだったのだろうか……。
観客全員を置き去りにしている。
再び軽快な音楽が鳴り始め、白いロボットが新たにトランプを追加し宙に浮かせていく。
数セットのトランプは観客の眼前に並び、大きなスクリーンを形成した。
カードの絵柄の明暗でモーションアニメをスクリーン上に描いていく。
数秒の短いアニメが終わると、スクリーンには『カードを1枚選んで想像して』との文字が。
ハートのJを頭に空想しカードを見守っていると、白いロボット自らの腕で大きなバレルを形成した。
そしてその中にトランプが吸い込まれていく。
軽快な音楽のボリュームが一層大きくなったと同時に、バレルからは大量の花が放たれた。
場内に花が舞い散り、甘い香りが充満する。
舞い散った花と共に大きなタンポポの綿毛が飛んでいて、その中のひときわ輝く綿毛に小さな薄緑色のロボットがぶら下がっている。
やけに見覚えがあるような……。
というかハートのJくだりは何処へ?
小さな緑色のロボットが一人の観客の手のひらに降りると、緑色の粉を場内に振りまいた。
すると舞っていた花は観客の手元でコップと甘いジュースに変化した。
客席からは歓声が上がり、緑の小さなロボットは満足そうにステージ裏へと消えていく。
曲が変わり、続いて登場したのは大型動物たちだ。
熊やライオン、象までいる。
ライオンが大きな雄叫びをあげると先程の女の子が泣き出し、一緒にいた人にすがりつく。
「泣かせてどうすんだアホ! メシやんねぇぞ!?」
声の主はおそらく、いつの間にかステージ上にいた赤色の小さなロボットだ。
怒られたライオンは申し訳なさそうに縮こまる。
「さぁアンタ達! お披露目だよ! 新芸を見せてやりな!」
赤色のロボットがそういうと動物たちはそれぞれ芸を始めた。
まずは熊が、演奏中のロボットを4体掴み、お手玉を始めた。
熊もすげぇが、投げられつつも演奏を続けるロボット達もすげぇ。
ついでライオンが奥から一輪車に乗りながら登場した。
それに続き、象が片足で立ちながら滑るように移動している……?
いや違う、象の足の下になんかいるぞ?
なんだあれロボットか?
小さなロボットがヨーヨーしながら片手で象を持ち上げている。
なんだあいつ。
気づいてるの俺だけか?
それぞれの出し物が終わり、終幕の雰囲気に場内が包まれる。
美麗なドレスをまとった少女が小さなロボット達を引き連れてステージ中央でお辞儀をした。
ロボット達、動物達もそれに合わせてお辞儀をする。
小さな白いロボットが観客の目の前にやってきて別れのセリフを言った。
「どうか我らに清きマナを! すべての者達に笑顔を! また会おう!」
そこで目が覚めた。
時間も日の傾きも分からないが、スッキリした目覚めだ。
宇宙船から見るに外は良く晴れている。
よかった、濡れずに食糧を探しに行ける。
夢にヒントを得たとは思いたくないが、『マナ』に関してすっかり忘れていた。
ピノも、脳内アナウンスもマナに関して何かしら言及している。
N2達に触れ直してもダメ、代わりの金属を見繕ってもダメ、となると脳内アナウンスがいっていた『マナメタル』を生成する必要があるのではないだろうか……。
作り方なんて微塵のかけらも見当がつかないが……。
作成方法を考えながら山菜を採取し一日が過ぎてしまった。
二人がいなくなって二日目。
成果――夢からヒントを得た。




