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星屑のアーティファクト 〜かつて世界を救った小さな英雄達〜  作者: ゆるは
デバッグ・トゥ・ザ・フューチャー
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48話 アフター・ダーク

 手の中のN2だったパーツが脳内アナウンスの発言と同時に淡く輝き始めた。

 真空管の中身の部品の回転は加速し、白いナイフが一層強い輝きを放つ。

 先程までの絶望的な光景とN2が放つ光の幻想的な光景が混合し、目の前の状況をただただ眺めるしか出来なかった。


 白いナイフの輝きが収まると、そこにはナイフではなく3つの白い球体のオブジェクトが形成されていた。

 ビー玉程の大きさの3つの玉がゆらゆらと宙に浮かんでいる。


 黒い生命体に似たやつは俺が射程圏に入ったのか歩みを止め右腕を突き出した。

 そしてピノを焼き焦がした青白い炎が放たれる。


 その瞬間、球体が俺と炎の間に入り込み三角形状に並んだ。

 3つの頂点で結ばれた内側に膜のようなものが生成され、こちら側への炎の侵入を完全に防いでいる。

 熱さこそ感じるが、外側に漏れ出た炎も弱体化しているように思える。


 炎の放出が無駄と分かったのか『ヤツ』が手を止める。

 すると3つの球体はそれぞれ高速で『ヤツ』に向かって突進していった。

 1つ目の玉が『ヤツ』に接触し、カンという音と共にものすごい勢いでやつは後方に飛ばされシェルターの内壁に叩きつけられる。

 やつが地面に落ちる前に2つ目の玉が追撃し、シェルターの内壁に『ヤツ』が少しめり込んだ。

 次いで3つ目が追撃し、1つ目の玉が更なる追撃の態勢に入る。

 4回、5回、6回……と次々に追い打ちをかける。

 『ヤツ』は腕を交差し、かろうじて防御をしているが、玉の追撃は止まることなく加速していく。

 そして、激しく金属を叩きつける音が共鳴を起こし途切れることのない一つの音となった時、『ヤツ』よりも先にシェルターに限界が来た。


 玉の攻撃は分厚いシェルターの壁に『ヤツ』をめり込ませ、ついには貫通させてしまった。

 その拍子に『ヤツ』はシェルター外に吹き飛ばされる。

 なんて威力だ……。


 3つの玉は更なる追い打ちをかけるためか、自ら開けた穴から外へすーっと移動していく。

 しかし3つとも同じ距離でピタッと止まってしまった。

 残されたN2のパーツが手のひらの上でずりずりとやつの飛ばされた方角へ移動を始める。

 あの玉には本体からの可動範囲があるのだろうか。


 立ち上がりシェルターの外に出ると、その進んだ距離だけ玉も移動した。

 やはりこれには可動範囲があるらしい。


 『ヤツ』はあれだけで倒されてはいないだろう。

 ただでさえ視界が悪い夜中だ。

 さらには『ヤツ』のボディーは闇に溶け込む黒色。

 シェルターの外にでてしまった以上、いつどんな攻撃を仕掛けてくるか分からない。


 すると球体が三角形状に並んだまま俺の頭上をくるくると回り始めた。

 それぞれの球体が小さなバレルに変化し、白いレーザーを周囲に向けて放つ。

 視界を遮っていた植物が一瞬で切り倒されて燃え上がり、暗闇さえも明るく照らす。

 そしてその照らされた暗闇から『ヤツ』が姿を現した。


 というよりレーザーによって無理矢理あぶり出された。

 全身から火花を散らしながら横たわっている。


「コンナモノデータニナカッタゾ……! アリエナイ……」


 『ヤツ』は立ち上がろうと力を込めては崩れを繰り返す。

 意識はあるが相当なダメージを受けているらしい。

 3つの白いバレルが次の攻撃の準備を始めようと目標を定めた時、『ヤツ』が突然体の節々から炎を噴出した。


「ワタシガキュウガタニアットウサレルナド、アッテハナラナイ……アッテハナラナイノダ!!」


 がくがくと足を震わせながら立ち上がり、『ヤツ』はそう叫んだ。

 そして腕を構え、今までで一番青い炎をレーザーのようにしてこちらに放つ。

 3つのバレルは俺の眼前でまたも三角形状に並び、それぞれが青いレーザーに向けて白いレーザーを放つ。

 互いのレーザーが激しくぶつかり合い、周囲を眩い光で照らす。

 バレルのレーザーがさらに太くなり、青いレーザーを押し戻していく。

 やがてバレルの白いレーザーが『ヤツ』に届き、その黒い体を貫いた。


 『ヤツ』が膝から崩れ落ち、貫通した穴から勢いよく炎が噴き出る。

 カチンという音がしたと思うと、『ヤツ』は目の前で爆散した。



(「目標の破壊を確認。スリープモードに移行します」)



 もはや思考する事も叶わなくなった映像を記録するだけの脳にアナウンスが響いた。

読んでいただきありがとうございます。


次話より、新しい章となります。


評価や、ブックマークも、モチベーションに大きくつながりますので、差し支えなければ応援よろしくお願いいたします。

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