175話 リミットカウンター
「ホログラム……か」
リングから空中に映し出された画面を見つめながら呟く。
俺の宇宙船には積んでないが、金持ちの船には大体積んであって、航路の確認や通話なんかに使われている、まぁどちらかというと流行りの技術だ。
モニター設置の必要がなくなるし、おまけに省エネ。
まぁ、めっちゃ高いんだけど。
そんなホログラム技術の実現くらい、この星の、スヴァローグの科学力をもってすれば、造作もないことなのだろう。
小さな指輪から、思い出したかのようにホログラムの画面を出すことくらい、どうってことないんだろう……。
それはそうとして。
画面にはtype-ENDが取得したスキルと、その情報の詳細が表示されていて、さっきスヴァローグの言っていたレベルアップ条件というものも表示されていた。
スキル『蜘蛛糸』は、文字通り強靭な半透明の糸を生成するスキルで、レベルアップと共に、強度、生成量、発現持続時間等が上昇するらしい。
もう一つのスキル『錬金』は、金属になりうる素材に触れると、金属に変換する事が出来るスキルで、レベルアップと共に、変換可能素材の範囲、生成する金属の質や量等が上昇するようだ。
どちらもレベルアップ条件に記載されているのは使用回数が規定に達した時となっている。
がしかし、気になるところとして、スキルには使用回数制限が設定されていることと、蜘蛛糸の方は何故か既に4回も使用履歴があったことだ。
使用回数制限、つまりはリミットカウンターが存在するのに、どうしてレベルアップ条件にそれとは相反する使用回数達成が含まれているのか。
現状のリミットカウンターの設定値としては蜘蛛糸、錬金共に3回。
これではレベルアップ条件の使用回数10回には、いつまで経っても辿り着けないことになる。
「よくぞ聞いてくれた、少年」
「いや、まだ何も言ってねえよ」
「私が何色が好きかについてだろう?」
「脈絡がなさ過ぎるだろ、ちげーよ」
「では会話のユーモア度設定についてか?」
「不思議な機能を積むな! ゼロでいいよそんなもん!」
「カシコマリマシタ、ゼロニセッテイシマス」
「会話のレベルが落ちちゃった!?」
じゃなくて、なんだっけ。
そうだ、使用回数云々についてだ。
「スキルは主にモノリス同士の戦闘用に作られているからな。使用回数制限は弱者側に配慮して設けた機能だよ」
よかった、ユーモア度設定戻ってた。
「弱者側?」
「そう、モノリス同士の戦闘においての弱者とは、相手と比べてレベル差がかなり低かったり、その戦闘で不利な状況に立たされる側のことさ。例えば、1発の威力が低くても、長距離射撃が可能なスキルを持っていたらどんな敵であろうと倒せてしまうからな。使用回数制限は、そういった一方的なやり取りを避けるために、1エンカウント毎に上限を決めてあるルールだよ」
なるほど、言ってみれば、ハメ技禁止ってことね。
逆を言えば、そんな長距離射撃が可能なスキルを持つモノリスもいるという事か。
防御スキルとか、攻撃察知スキルとかがあればそっちの取得を急いだほうが良さそうだな。
錬金で作った粘土を体に塗るわけにもいかないし……。
しかし、これで使用回数制限の疑問点は解決した。
スヴァローグの言う、モノリスとのエンカウントの詳細条件は不明だが、その戦闘が終われば使用回数制限がリセットされるんだろう。
んー、聞けば聞くほどゲームみたいだな……。




