165話 頼み事
スヴァローグ曰く、エージェント達の数に限りはないらしい。
言うなれば、際限のないリスポーン。
つまりは。
「我々が進軍を続ける限り、あるいは、オフィサー達が活動し続ける間は、いつでもエージェントが降って湧いてくるということだ、少年」
リングの声の主は続ける。
「エージェント達を無尽蔵に寄越す事は可能なはず。……けれど、何か魂胆があるのか、あるいは必要な条件があるのか、幸いにもそういった気配は今のところないようだ。こちらも、うかうかしていられない事には変わりないがな」
確かに、あんなのを一度に大量に送り込まれたら……。
想像するだけで身の毛がよだつな……。
ふと、ラズが改まって俺達に声をかけた。
「なぁ、お前等。アタシに少し時間をくれないか」
ラズからの頼み事。
今まであったようでなかったような……?
それはそれとして。
時間をくれってことは、しばらく別行動を取りたいって事だろう。
あえてこのタイミングで。
しかも、お前はまだまともに動けないじゃないか。
「何か策があるんだな?」
スヴァローグの問いに対し、ラズがコクリと縦に首を振った。
指輪にスピーカーのようなものはないけれど、ラズにもきちんとスヴァローグの声は届いているらしい。
次いで、俺もラズに頷きで応える。
これ借りてくぜと、ラズは重々しい体で、パグの臀部に付着した植物型のモノリスの綿毛を手に取った。
ああ、あれは確か俺がふざけてパグにくっつけたやつか。
微弱な静電気を発生させてた植物が保有してたものだが……何に使うんだあんなの。
「セイデンソウ……の綿毛か? ……なるほど」
スヴァローグが何かに気付き、独りで納得していた。
「知ってるのか?」
「知っているも何も、私が作ったからな」
そうか、そうだった。
モノリスは全てスヴァローグに作られたんだった。
となれば知っていて当然か。
ラズが綿毛を少し体にこすり付け、数メートル跳躍した。
なるほど、綿毛から電気エネルギーを造り、動力にするつもりか。
しかし着地までの動力確保までには至らなかったらしく、危うく地面に激突しそうになっていた。
「ラズ、綿毛をこちらへ」
スヴァローグの言うままに、ラズが綿毛を俺に手渡す。
指に嵌めたリングと綿毛が触れるやいなや、互いがビリビリと反応し、綿毛の毛量が少し増えた気がした。
「何をしたんだ?」
「レベルアップと、ちょっとした改造さ。ラズ、もう一度試してみたまえ」
言われるがまま、ラズは直前と同様の動作をし、今度は跳躍から着地までをきれいに完了させた。
「発生電力量と、譲渡電動効率を上昇させた。少しは助けになったかい?」
「ああ、助かるぜ。それじゃあちょっと行ってくる。……皆を頼んだぞ、スヴァローグ」
少し間を置き、任された、とスヴァローグが応えた。




