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163話 贄

 (にえ)とは。

 神に供える土地や物のこと。


 この場面で置き換えると、エージェントが供物で、黒いリングもしくは、スヴァローグが神ということらしい。


 俺には信仰心もないし、目に見えているリングを神として崇めようという気もないが、まぁモノリスを造った創造神ってことで納得しておこう。


「要するに、エージェントを糧にすることで、レベルを上げていくことができるのだよ」


 抵抗も虚しく、両手足や胴体のボディパーツが無惨にひしゃげたエージェント達を前に、黒いリングの声の主は言う。


 それはもう一瞬の出来事だったが、数秒前までは生きていたであろう黒い機械、生きていたという表現がこの際正しいのかはさておき、恐竜達は活動していたエージェント達を、メキメキと、バキバキと破壊してしまった。

 俺にとっては、命がいくつあっても足りなかった程の脅威が、一瞬で。



 体が朽ちていくにつれ、(あら)わになるエージェントの内部。

 その中心箇所に、四角いコアのような部分があった。


 トドメの一撃と言わんばかりの殴打を加え、コアにヒビが入ったかと思うと、破壊されて周囲に飛び散ったエージェント達の部品が、ドロドロと黒い液体へと変わっていく。

 やがて飛散していた液体達は、徐々に四角い部分、コアに、集合していった。


 いや、コアが飛び散った黒い液体を回収したのかもしれないが、ともかく、どちらにせよ不気味な光景には違いないのだが。


 液体が各々のコアに戻ったところで、ヒビこそ入ってはいるが、ようやく元通りとなり、さっき空から降ってきたキューブと同様の状態となった。


 リングの声の主、スヴァローグが言うには、ここまで痛めつければ機械学的にはもう死んでいるらしく、触ったり、放り投げたりしても、このキューブからエージェント達が再度出てくるという心配はないそうだ。



「2と3ってところだな」

「ん? なんの数字だ?」

「エージェント共を、モノリスレベルに変換した場合の影響度さ。まぁせいぜい、エージェント1がレベル2、エージェント2がレベル3がいいとこだろうな」


 触れたら即死の光弾を放つヤツと、舌を出しながら肩で息をするパグが同じレベルというのは、過小評価にもほどがある気がするが、まぁそこは機械にしか分からない基準があるんだろう。


 必ずしも、レベルが高い方が戦闘に勝つ、ってことでもないらしいのだが、それでも、恐竜達のレベル6という数字は、エージェントを圧倒するのには十分な値である事を証明していた。



 スヴァローグは、エージェントが格納されていたキューブを2つ俺に拾い上げさせると、それをリングと接触させろという指示を出してきた。

 言われるがまま、リングとキューブをくっつけると、一瞬だけ、磁石同士が引き合うような動作があった後、それっきり何がある様子もなく。

 キューブが爆散したり、リングが大きくなったりするというわけでもなかったが、どうやらそれが、Type−ENDが糧を喰らった、つまり、エージェントが贄となったことらしく、リングは密かにレベルアップを告げていた。


 詳しいことはよく分からないが、なんか、そんなもんなんだというか、案外呆気ない儀式なんだなと思うのだった。



「諸君、ご苦労だった。引き続き任務を続行してくれたまえ」


 リングの声の主が恐竜達にそう言うと、特にこれといった挨拶もなく、彼らは足早に去っていった。


 礼のひとつくらい言いたいもんだったが、言ったところで伝わるもんでもなさそうだしな。

 心のなかで、ありがとうと、唱えるだけにしておこう。


「お前は良かったのかよ、スヴァローグ。モノリス集めは全然途中なんだろ?」


 恐竜達にどのような指示をしているのかは謎だが、星中に散らばったモノリス達の回収作業が、こんなに早く終わったわけではないだろう。

 現に俺達の近くにも、まだモノリスはたくさんいるようだし。


「あぁ、それは心配無用だ。きっと今頃、私の本体が頑張ってくれているはずだからな」

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