138話 防衛システム
スヴァローグが言うには、人を使って遊ぶゲームのようなものを始めたのは、3体の黒い機械達らしい。
ちなみに、ピノが倒したベロボーグとチェルノボーグの担当は破壊と創造。
スヴァローグは生物の担当だったらしい。
よくわかんないけど。
「ある日一隻の宇宙船がこの星に不時着してな。その船には一人の人間の男が乗っていた。彼は元々あった傷のせいですぐに死んでしまったが、ペルーン達3人はその出来事にえらく興奮し、なんとかまた人間を星に呼ぼうと、わざわざ宇宙船をハッキングするシステムを作ったのだよ。私達の反対を押し切ってな」
「そのへんはちょっと聞いた気がする。俺の船もそれにやられたんだろ?」
「察しの通りだ少年。まったく、おかしいと思わないか? あんなものの制作のために1カ月もかけるなんて。その時間があればちょっとした研究の一つや二つがこなせるというのに。……まぁあれがなければ、私は君と出会えてなかったと考えれば、全く無駄というわけでもないか」
いや、ひと月でそんな危ないもんを作れる技術力よ……。
「そうしてシステムを作ったはいいが、この星には人間に適した食糧がなかった。故にせっかく呼び寄せた人間達も、いずれ死んでしまう。そこで彼らは、生物担当の私に依頼してきたんだ。人間用の食糧を作れってね」
「人間用の?」
「あぁ。それで私は、根の一部が肥大成長した植物を作り、それを星中にばら撒いた。君もここに来た時に見たはずさ。人間の言葉では何と言ったかな……ほら、あの地面に埋まっている丸っこいデンプンの塊だよ」
「地面に埋まったでんぷんの塊……芋のことか?」
「そうそれだ」
「あれか……なんかN2がやたら気に入ってたな」
「そうなのか? なぜあんな不格好なものを……」
「それには俺も同意だ」
「まぁいい、続きを話そう。結局のところ人間は、食糧問題を解決しても、自分から死んでしまう者が後を絶たなかったんだ。何でだと思う?」
「ん~食べるのに飽きたとか……」
「近からず遠からずってところだな。要は、人が生きていくには目的が必要だったのさ。例えば、壊れた宇宙船を直す、とかな」
「なるほど……」
「そこで3人は、閉じ込めていたアーティファクト達を開放し、人間達の手伝いをさせたんだ。初めに組むアーティファクトや、エージェント達をどのタイミングで送り込むか、とかをあらかじめ決めてな」
エージェントってのは、この星に来て最初に遭遇した大きいサイズの黒い機械とかのことか。
初めに組むアーティファクトってことは、場合によっては最初に会うのがN2以外という可能性もあったのか。
「あとは君が知っている通りの有様さ。自分達が負けるはずが無いとたかをくくり、大いに油断し、チェルノボーグとベロボーグはピノに倒されてしまった」
スヴァローグは簡単そうに言うが、ピノが2体を倒せたのも、ほんっとにぎりぎりだったんだけどな。
脳内アナウンスもとい、セシリアがいなかったら、今頃俺はとっくに死んでるだろうし。
「この星とスヴァローグ達の事は大体は分かったよ。けど今の話だと、N2達の存在がどうにも薄い気がするんだが。そもそもなんで皆はこの星に? スヴァローグ達が防衛システムとしてここにいたってことは、何かから皆を守ってたのか?」
「逆だよ少年」
「……逆?」
「私達は君達の住む世界を、アーティファクト達から守っていたんだ」




