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121話 想定通りッ

 俺の呼びかけに二人は黙って頷いた。


「第1目標は今N2に攻撃を仕掛けている方の敵個体Aの制圧だ。これは俺とピノ、そして暴走状態のN2を利用する。ラズはもう一方の敵個体Bの気を引いてN2から引き離し、その後敵個体Aを制圧するまでその状態を維持。欲を言えば敵個体Bの攻撃パターンも把握したいが、無理はするな」


 そう言い終えると、ラズはすぐに駆け出して行った。

 俺とセシリアが作戦を立てている間、二人ともずっとN2のことを心配そうに見ていたから、もう我慢の限界だったのかもしれない。

 けれど、駆け出したラズの横顔はこわばった面持ちだった。

 気配に敏感なラズは、直感的に敵勢の総力に気が付いているのだと思う。


「レイ様、ピノは何をすればいいでしょうか?」


 不安な表情に焦りを織り交ぜながら、ピノが急かすように問う。

 制圧と一言でいっても、俺達がそれをすぐに実行できるわけではない。

 敵個体のエネルギーがあり余った状態では、拘束しても振りほどかれてしまうだろう。


 だから、エネルギーを無理矢理消費させてやればいい。


 セシリアの解析リストにあった敵個体Aの特徴の中に、やつの攻撃動作の直前、足元の雨水が消失するという項目があった。

 目を凝らしてみると、やつがN2にレーザーや爆発物で攻撃する際、周辺の水が吸い取られるように消えていくのを確認した。


 俺が試したかったのはこれだ。

 やつはおそらく、雨水を何かしらの動力源にしているに違いない。

 つまり、降雨を止めたり足元の水を蒸発させるようなことが出来れば、現状のパワーバランスを崩すきっかけになりそうなのだが……。


 そのことをピノに伝えると、少し考えた後俺の方に向き直り、


「雨水の蒸発ですか……。でしたら、丁度いい子達がいます。ピノにお任せくださいっ」


 と、答えた。

 それからピノはどこからか植物の種らしきものを取り出し、敵個体Aの方めがけて放り投げた。


 植物の名前はオオバケアロエというらしい。

 地下シェルターの畑を作ったときに出来た植物の一種で、なんとも扱いにくく管理に不向きなためボツになったとか。


「その理由が、オオバケアロエの成長過程に異常なまでの水分が必要だったからです。土の水分が無くなるまで吸水し続けるので、危うく土壌が死んでしまうところでした」


 ピノがそういう間に、蒔かれた種子たちはN2達のところまで雨水に流され、成長を始めた。

 小さな芽を出した場所からみるみるうちに乾いていき、雨がまだ降っているにも関わらずやつらの周囲の泥水は消えてしまった。

 けれどアロエが急成長したわけでもない。

 吸水された水分はどこへ行ったのかという疑問を抱く俺に、間髪入れずにセシリアが状況変化のアナウンスを告げる。


(「敵個体Aのエネルギーの減少を確認。並びに、敵個体Aの背部の温度が上昇中。効果ありです」)


 よし! 想定通りだッ。

 体温上昇もおまけについてきたのは意外だったが、雨水で熱放出をしていたのかもしれないな。


「ピノ、続けてアロエの散布を頼む!」


「はいです!」


 セシリアの分析で敵の移動を先読みし、気付かれないように動きながらアロエの種を蒔いていく。

 敵個体Aの動きは徐々に鈍っていき、ついには全身から蒸気のようなものを噴出し始めた。


 N2の攻撃を全てかわしながら攻撃を行っていた敵個体Aは、今や回避しか出来ない程追い込めている。

 いけるかもしれない、とわずかな希望を抱いた直後、脳内にアラートが響く。


(「レイとピノへのヘイト値が急上昇。敵個体Aのターゲットが変更されました。速やかに対処してください」)

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