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107.5話 アリス・イン・ワンダーワールド ~魂のカタチ~

 まぁそんなことはどうでもいいさ、とギルフォードは笑う。

 僕の場合、目的を一つに絞らないと何も手につかなかった。

 この世界は何かを失わないと、何も得られない、と。


 アリスは、その意味深な言葉に反論しようか迷ったが、自身が知る"世界"で語るにはとても狭過ぎる、と思いとどまる。


 ギルフォードの少し寂し気な横顔にかける言葉が見付からず、セシリアに小声で助けを求めようかアリスが迷っていると、いつの間にか到着していた実験室の扉が開かれた。


 中は薄暗く、時たま光を放ついくつかのランプが、床に散らばった何かや、乱雑に数式が書き殴られた紙を照らす。


 どこに目を向けても知らない機械ばかり。

 アーティファクトを作るための道具だと事前に説明を受けていなければ、ここがただの物置だと思ってもおかしくないほどだった。

 実験室の最奥にあるものを見るまでは。


 天井まで伸びた、青白く輝く溶液で満たされたガラスパイプ5本。

 一つは空になっているが、他の4つはパイプの中腹に人型の小さなロボットが沈んでいる。


 見覚えのあるシルエットに、アリスはそれらがロムの仲間だと瞬時に理解した。

 付け加えて、同じ人型であれど、異なる形状をした彼ら各々の能力があるのだろうと予想する。


「みんな、ロムみたいに不思議な力を持ってるのよね? あの赤いロボットにはどんな力が?」


 早く何か聞いてくれと言わんばかりの表情をした白衣の男に、アリスは一際目立つ色をしたロボについて問う。


「その子は"ビースト・アーティファクト"。動物とコミュニケーションをとったり、遺伝子を借りて動物の特徴を真似たり出来る。機動力が一番なのもこの子だね」


 言葉の意味は理解出来る。

 仮にその能力が本当に実現するとしても、アリスはそれをすんなりと受け入れたくはなかった。

 この実験室という空間において、ギルフォードとの会話を真に受け止めるには時間がかかり過ぎるとアリスは思った。


「じ、じゃあ……あの緑のロボットは?」


「その子は"プラント・アーティファクト"。可愛いだろう? 植物を急激に成長させたり、土からエネルギーを吸収したり出来る。もちろん、植物との会話も可能だ」


 もちろんじゃないわよ、とアリスは心の中でツッコむ。

 この子がいれば、土地さえあれば食料問題は解決するのでは? 等と考える余裕が少し出てきた自分が怖かった。


「この黄色の子はわたしが当てるわ。そうね……黄色……電気よきっと。電気をなんやかんやする力だわ!」


「残念。正解は"パワード・アーティファクト"。本来は大量の廃棄物を処理するために消化器官を積もうとしたのだけれど、それだけだと変換した後のエネルギーが過剰に余ってしまってね。何か別のエネルギーに変えられたら、と考えた結果、単純に物理エネルギーに変える機能を追加したんだ」


 やっとまともなのが出てきたと謎の安心感を抱くアリスに、ギルフォードは、戦車を投げ飛ばすくらいの力はでるはずだよ、と言った。


 あぁそうか、きっと公開されていないとても軽い戦車の事なのだろうと、アリスは自分にそう言い聞かせる。


 ふぅ、とため息をついてから、最後に残った白色のロボットの能力を聞く心の準備を整える。


「この白い子は……そうだな……言うなれば、"クラフト・アーティファクト"……かな。作りたいものを金属で実現させたり、壊れた機械を直したり……まぁ色々さ」


 実現というのは? と問うアリスに対し、部品さえあれば、この世に存在する金属製の製品を、自ら創り出す事が出来る、とギルフォード。

 停止寸前だったアリスの思考回路はここに来て止まってしまい、既製品でないものの場合を聞くタイミングはこれ以降も来ることはなかった。



 後半は相槌を打つばかりだったアリスに、ギルフォードが言った。


「皆良い子たちだから、仲良くしてくれると嬉しいな」


「……? ロムは分かるけど、ここにいるロボット達に、まだ中身はないわよね?」



「いや……ある。記憶以外の……生前の自我がこの子たちにはあるんだ」

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