89話 アーツ
今まで生成した武器はハンドガンと白く光る金属の棒だけ。
そこで今後起きるあらゆる戦闘想定し、扱える武器は複数あったほうがいい。
N2の申し出は、他の武器を空いた時間で少しづつ作っていこうというもの。
でも武器なんてそんなに知らないしな……。
というか、白く光る棒って……。
よくあんなので戦えてたな……。
戦闘中の限られた時間の中で生成したとはいえ、あれではまともに戦えない。
作成する武器のイメージをしっかり作っておかないと、生成後の武器があられもない形になる。
そうならないためにも事前にイメージを作っておき、戦闘時にいつでも引き出せるように訓練する必要がある。
「昨日の黒い機械と戦った時にレイが新しく作った武器は何というんだ?」
赤いロボットのネーミングを借りるなら、キラキラ棒か……?
「いや、あれは咄嗟に作ったモノだから名前なんてないよ。ほんとは細長くて黒い浮遊体を叩き落せれば何でも良かったんだけど、多分その漠然としたイメージが、生成しようとした武器に現れたんだと思う」
なら逆にイメージがきちんとできていれば正しく生成されるかというと、そういうわけでもない。
以前N2が作ったデカN2のような大きなロボットをイメージしてみたり、何かと便利な白い浮遊体をイメージしてみたけれど、N2に渡された白いふわふわに反応はなかった。
生成できる武器と出来ない武器で、何か法則があるみたいだ。
いずれにせよ近距離武器は必要になると思う。
俺の知ってる中で馴染みのある近距離武器は、N2の使っているナイフだ。
まずはそれに近くて、俺でも扱えるようなサイズの物をイメージしてみるか。
となるとピノといる時に襲ってきた、炎を出す機械の刀みたいな感じか……?
「N2、ちょっとお前が使ってるナイフ出してくれるか? 実物を見ながらの方がイメージしやすい」
おーけー! の返事と共に、N2の右腕が大きなナイフへと変化した。
「助かる。しばらくそのままでいてくれ」
N2のナイフを見つめながら武器のビジュアルをイメージしていく。
持ち手の部分は両手で持てる長さの方がいいよな。
刀身は、んーと……1メートル……いや長すぎるか? まぁいいか、だいたいそれくらい。
この長さでN2のナイフくらいの刃の幅だったら重すぎるだろうな。
もうちょい細めに……。
白いふわふわをN2から渡されたり、返したりしながらより深くイメージしていく。
イメージを深める毎にN2に渡された白いふわふわが形を変えていき、ふわふわの光が収まる頃には、手にズシリと重みのある刀が握られていた。
「おし、成功! ずいぶん時間かかったけど、なかなか立派n」
(「類似したパートナーズアーツが既に登録されています。上書きしますか?」)
刀の作成完了で気の抜けていた頭の中に、脳内アナウンスが響いた。




