食べ放題の店に行ったらまず間違い無く食べ過ぎて後悔するって慧音が言ってた
主な登場人物
八雲紫:永遠亭に花粉症で通院していたところを、永琳に会いに来ていた豊姫と鉢合い、不摂生を馬鹿にされたので喧嘩になった。
綿月豊姫:永琳に甘える為に永遠亭に来ていたところを、紫と鉢合い、永琳とハグしていたところを見られてクッソ恥ずかしくなった為に話題を逸そうと不摂生を馬鹿にするが、まだ心のオムツが取れてないのかと言い返されてそこから喧嘩になった。
八雲藍:スキマでなんでも解決しようとする紫に偶には能力に頼らず健康管理ぐらいしっかりしろと提言するが、その実は花粉症で苦しむ紫を眺めて加虐心を満たしたりティッシュを差し出したり濡れタオルで顔を拭いてやったりと世話を焼いては歪んだ忠誠心を満たす為に付き添いをしていた。
綿月依姫:豊姫と共に永琳に甘える為に永遠亭にやって来ていた。順番で永琳にハグしてもらう事になっており、姉の立場を利用して半ば強引に先に永琳からハグしてもらう豊姫に嫉妬を募らせていたが、紫が診察室のドアを開けた瞬間、今は自分がハグをしてもらう番じゃなくて良かったと心から思った。
八意永琳:永遠亭の聖母にしてゴッドファーザー。色んな意味で誰も逆らえない。やっぱし怖いスね ヤクザイシは。
199X年、幻想郷は紫と豊姫の喧嘩に巻き込まれた!湖は枯れ、地は裂け、紅魔館は爆発した!藍と依姫がそれぞれ主人と姉をはっ倒した後、紫と豊姫の空間に干渉する能力でなんやかんやして湖と地は元に戻った。だが、問題はまだ解決していなかった!
空間を操る能力者同士が戦いの中で能力を乱発した結果、永遠亭の中には様々な次元が複雑に混ざり合う局所的多次元空間が発生していた。
永琳「それじゃあ、私は何処かの誰かさん達が造ったふざけた空間が外に悪影響を及ぼさないよう結界を張っているから、中の事はアンタ達で解決してきなさい。分かったわね?」
永琳が額に怒りマークを浮かばせながら紫と豊姫を睨む。
紫・豊姫「サーイエッサー!!」
姿勢を正した状態で話を聞いていた2人は、声を挙げる瞬間、そこから更に背筋をピンと伸ばして二つ返事で答える。
言葉こそ荒げないものの現状での永琳はめちゃくちゃ怖い。
2人の表情は緊張で強張っていた。
永琳はしばらく無言で紫と豊姫を睨み付けた後、呆れた様子で「はぁ……」とため息をひとつ落としてから、視線を移動させ、横にいた藍と依姫に言葉を掛ける。
永琳「本当なら当事者達だけで解決するべきなんでしょうけど、たぶん中はけっこう面倒な事になっていると思うわ。不測の事態が起こらない内に終わらせるよう、あなた達も協力してやってね」
藍・依姫「サーイエッサー!!」
藍と依姫の2人も表情を強張らせながら勢い良く返事する。
2人とも直接問題を起こした訳では無いものの、藍は藍で花粉症に四苦八苦する紫を眺めて楽しむ時間を引き延ばす為に境界を操る能力での治療を阻害して永遠亭に向かうよう提案しており、依姫は依姫で永琳に会おうと(正確には一方的に甘え倒そうと)と先に言い出した側であり、今回起こった事件の発端は自分にも有るとの気まずさから緊張の冷や汗をかいていた。
藍と依姫の様子からなんとなく実際の事の起こりに近い想像をした永琳だったが、その辺を突っ込み出すと無駄に時間が長引くと思った為に、そこは敢えて流しておいた。
永琳「………まぁいいわ。とにかく行ってきなさい。アンタ達ならまず大丈夫だとは思うけど、何かあっても確実に対応できるよう2人1組で行動するようにね」
依姫「わ、分かりました。じゃあ姉様、さっそく向かいましょう」
『なんだかんだ言いつつも八意様やさしい!好き!』と、心中で叫びながらも、依姫がそれを顔に出さぬようグッと力を込めた険しい表情で豊姫に出発の合図を掛ける。
豊姫「そうね、じゃあ中に入りましょうか」
豊姫は相槌を返してから、異世界へ繋がるであろう宙空に停滞する黒っぽい渦に視線を向ける。
永琳「ああ、ちょっと待ちなさい。2人1組で行動しろとは言ったけど、いつもの2人で組んじゃダメよ。依姫は藍と、豊姫は紫と組んで行動しなさい」
紫「はぁ!?」豊姫「え!?」
永琳の言葉に、藍と依姫は不可解な表情を浮かべ、紫と豊姫は不可解な表情に加えて不愉快な様子を見せる。
紫「なっ、なんで私がコイツなんかと!?」
豊姫「私のセリフよそれは!!八意様!いくら八意様の御意見とは言えこんな組み合わせは賛同できません!!納得のいく説明を要求します!!」
永琳「納得も何もアンタ達の仲が悪いからよ。顔を合わせる度に喧嘩しては強力な能力を乱発して周りに迷惑を掛ける。大きな力にはそれ相応の責任が伴うのよ。もうすこし己の立場に自覚を持ってほしいわね。無理に仲良くしろとは言わないけど、これを機にちょっとでもマシな方向へと交流を深めなさい。ほら、分かったらサッサと行く!」
紫・豊姫「う…了解です……」
正論で殴られたと言うよりは、正論の関節技で反抗心をボッキリと折られた紫と豊姫が渋々と了承の返事をかえす。
永琳「あぁそれと、アンタ達2人は本当にどうしようも無くなった時と混ざり合った世界を元の世界へ返す時以外は能力の使用禁止ね」
豊姫「えっ!?」
紫「は!?なんでそんな!?」
永琳「中の世界はタダでさえあらゆる次元が複雑に混ざり合っているわ。そこへ次元に干渉する能力をおいそれと乱発しようものなら均衡が乱れて崩壊する可能性も0ではないからね。まぁその可能性は限りなく低いけど、能力以外で解決できそうな事は自力で解決なさい。元はと言えばアンタ達が撒いた種だしね」
紫「ぐ……分かったわよ。やりゃあ良いんでしょやりゃあ」
豊姫「しょ、承知しました……」
永琳「アンタ達もそれで良いわね?」
永琳の中では紫と豊姫を組ませるのは決定しているつまりだが、永琳はいちおう、藍と依姫に意見の確認を行なう。
藍「はぁ、別に私は構いませんが」
依姫「私も、藍殿が良いと言うなら問題はないです」
永琳「やれやれ下の2人の方がよほどシッカリしてるわね……まぁいいわ。皆、油断だけはしないようにね」
2人組みが決まったところで4人は出発した。
まずは紫と豊姫の2人が渦を潜り、藍と依姫がそれに続く。
渦を越えると、目の前が一瞬だけ真っ暗になったものの、すぐにまた光の有る空間に着いた。
中の世界は古今東西の建築物が乱立しており、高さ5メートル程の天井にはこれまた様々な素材や色が広がり、道は幾つかに別れた路地になっている。
それぞれの世界の人や物を元の時空に戻そうにも、何処に何が有るのかを知らなければ話にならない。
まずは周辺の地理を探索しようと、藍が歩きはじめる。
藍「私達はあっちに向かってみましょう、よっちゃん」依姫「了解し、え!?よっちゃん!?藍「では紫様、豊姫さん、そちらは任せましたよ。御武運を」依姫「え!?あ!2人とも!喧嘩しちゃ駄目ですからね!」
その場に残った2人が、嫌々と言った様子で互いに視線を合わす。
紫・豊姫「………じゃあ私達はアッチで」
どちらからともなく向かう方向を指差すが、藍と依姫が向かった方向を前だとすると、紫は自身達が立つ十字路の右の部分、豊姫は左の部分を指差す。
紫「………」豊姫「………」
それぞれ別の方向を指差してしまったが、永琳の言葉を胸に留めている為に、仕方なく相手に合わそうと指の向きを変える。
紫・豊姫「じゃあソッチで」
今度は紫が左、豊姫が右を指差す。
紫・豊姫「イヤどっちだよ!!」
紫と豊姫が互いに頭突き合い、相手を睨み付ける。
紫・豊姫「ヌググググ……最初はグー!ジャンケンほい!」
紫がグーを出し豊姫がパーを出す。
豊姫「ふふん、運も実力の内ってね」
紫「くそ、いちいち引っかかる言い方しやがるわね……」
紫と豊姫がどちらに進むかでグダグダしている一方、藍と依姫は、とりあえず適当に辺りを歩き回って、大まかに周囲の状況を観察している最中だった。
藍「それでね、このまえ人里を歩いてる途中いきなり紫様がグレープジュースが飲みたいって言い出すから慌てて辺りにそれらしい店が無いか探した訳ですよ。散々探し回ってようやく見つけたから座って休憩している紫様を呼びに行って店まで案内したんですけど紫様が「アンタこれ白ブドウじゃない!グレープじゃなくてマスカットじゃない!」って騒ぎ出して、真夏日でクソ暑かったからこっちもイライラしててつい喧嘩になっちゃったんですよ。そんで次の日から食事に隠し味としてちょくちょくブドウと白ブドウを入れたりしたんですけど、そのつど紫様に今日はどっちを隠し味として使ってるか当ててみろって言ったら、「ら、藍ってばもうイイじゃない。ブドウも白ブドウも似たようなもんでしょ」って言い出して思わず笑っちゃいましたよ。よっちゃんは豊姫さんとはどんな感じなんですか?」
依姫「そ、そうだな。姉様は玉兎に対して甘過ぎる部分があるから、訓練中は偶に言い合いになったりもするな。普段は仲良くやれているとは思うが……」
依姫『よっちゃん…よっちゃん……何故よっちゃん?私と藍殿は愛称で呼び合うほどの仲なのか?いや、私も別に藍殿の事が嫌いって訳では無いし寧ろ親しくやっていきたいとは思っているのだが、なんてゆーかその……距離を縮めるのが早くないか?言葉は悪いが分かりやすく一言で表してしまえば若干馴れ馴れしいと言うか、それは構わないんだがこんな調子で距離を縮めても良いものなのか?私が難しく考え過ぎているだけか?ならば私もグイグイ行っても大丈夫か?引かれたりしないよな?あぁもう分からん!こんなりゃ直接本人に聞いてやる!』
依姫「な、なぁ藍殿」
藍「ん?どうしたんですか?」
依姫「その……変な意味じゃないんだが、どうして藍殿は私の事を愛称?で呼ぶんだ?私と藍殿ってそんなに親しかったっけ?いやほんと変な意味じゃないんだけど……」
依姫『はぅあっ!?なんか変に緊張して親しいのかと言ってしまった!?今の言い方ってなんか凄く感じ悪かった気が!?大丈夫かコレ!?』
上手く喋れなかった依姫が緊張の冷や汗を垂らして返事を待つが、藍は特に気を悪くした様子もなく相槌を返した。
藍「どうしてって……よっちゃんはよっちゃんでしょ?」
依姫「いや、私には依姫と言う名前が」藍「まぁまぁ細かい事はイイじゃないですか!依姫よりもよっちゃんの方がなんか良い感じだし、それともうひとつの質問ですけど、確かにまだ私達はお互いの事を詳しくは知らないし、本当の意味で親しいとは言い難いでしょう。でも、私はこれからよっちゃんと仲良くなっていきたいとは思ってますよ」
依姫「あっ、そっ、それは私もそう思う!藍殿!改めてこれからもよろしくな!」
藍「ハイ!こちらこそよろしくお願いします」
話の流れで改めて挨拶を交わした2人が、しばらく互いの顔を見つめ合う。
依姫「…………な…なんだか照れくさいな…」
藍「そ…そうですね……こういう雰囲気は得意じゃないです……」
気恥ずかしさから思わず2人が顔を逸らすと、路地裏から唸るような声が聞こえて来る。
依姫「っ!?構えろ藍殿!!」
藍「っ!!」
依姫と藍が後ろに跳び、曲がり角を睨む。
パルスィ「そこはかとなく百合の波動を感じるわ…妬ましい妬ましい……どいつもこいつもイチャイチャイチャイチャしやがって……」
路地裏から現れたのは嫉妬の橋姫、水橋パルスィ。
しかも気配はひとつでは無い。
屋根から屋根へ移り藍と依姫に近付く2つの人影。
妖夢「スイカー…やるんだな!?今…!ここで!」
萃香「あぁ!!勝負は今!!ここで決める!!ミッシングパワー!」
進撃○巨人ごっこをしながら屋根から降り立ったのは魂魄妖夢と伊吹萃香。
萃香「ハッハァー!!アンタから強者の気配をビンビン感じる!遊び相手になってもらうよ!」
巨大化した萃香が好戦的な眼光で依姫を睨む。
妖夢「庭を手入れしていたと思ったら急に訳の分からない世界に巻き込まれて困っていたところですが、まぁ異変なんてモノは適当に斬っていればそのうち解決するでしょう。とりあえず斬らせてもらいます」
妖夢が刀の切っ先を藍に向ける。
並行世界の妖夢は辻斬り趣味の妖夢だった。
藍「よっちゃん!!妖夢とパルスィは私が引き受けます!そっちを頼みましたよ!!」
依姫「引き受けた!掛かって来いデカブツ!」
藍と依姫が敵と戦っている一方、紫と豊姫は味方同士でバトリあっていた。
紫「なに言ってんのよここはさっき通ったじゃないのよ!!」豊姫「通ってないわよ似たような景色だからそう思うだけよ!!だいたい仮にそうだったとしても後ろからアンタがそこは右だのやっぱり左だの茶々を入れて来るからじゃないの!!」紫「はぁー!?自信が無いからって人のせいにするとか言ってて恥ずかしくないの!?だいたい最初に一回ジャンケンに勝ったからってなんで当たり前のようにアンタがずっーと前歩いてんのよ馬鹿じゃない!?」豊姫「アンタがカルガモの子供みたいに勝手に着いてきてたんじゃないの自分1人じゃなにも考えられないから私に着いてきてたんでしょアンタの方が馬鹿じゃない!!」紫「考えてますーだから後ろから茶々入れてたんですーだいたい前に行く人間についていくのは当たり前ですーアンタ達がわざわざ月から甘える為だけにやってくるほど大好きな八意様が2人1組で動けって言ったんですー私はそれに従う訳じゃ無いけどもしも1人じゃ対処に手間が掛かる問題が起きたら確かに面倒だと思ったから敢えて言う通りにしたんですー良い年こいて八意様にベッタベタの甘えたちゃんが二言返事でママの言う事を聞いてるわけじゃないんですー」豊姫「んだゴルあぁ!!!殺すぞテメェ!?」紫「やってみろオラァァ!!!確かに儚月抄の時は遅れを取ったけどアレは万が一にも地上の生命に危害を及ばさないよう考えた大人の対応って奴だからな!!野蛮な月人は何しでかすか分かったもんじゃねぇからな!!!ただし私がその気になったらボッコボコの血塗れでテメェは地べたを這いつくばる事になるからな!!!」豊姫「ハアァァ!?」紫「オオォオン!?」
「紫様」
紫「アン?」
豊姫と超至近距離でメンチを切り合っていると、背後から聞き慣れた声が聞こえた。
紫「あ、あぁ…藍…そっちはどんな調子?」
藍「紫様?誰ですかその女?」
紫「藍?何を言っているの?そっちはどんな調子なの?」
藍「またですか?またですか紫様?」
この時点で、通路の奥に立つ藍から露骨に不穏な気配が漂い始める。
紫「ら、藍?さっきから何を」藍「また浮気ですか紫様ああぁぁあぁああ!!!」
次の瞬間、懐から取り出した包丁を片手に藍が猛スピードで2人に襲い掛かる。
紫・豊姫「どわぁぁ!?」
左右に分かれた2人の間を藍が抜け、空ぶった包丁が近くに伸びていた配管をぶった切る。
藍「おやぁ?近くで見れば今度の浮気相手は色彩的にも割と私と近い方のようですねぇ?ちょっと待っててください紫様。今その方と近しい容姿になるよう、私のこの尻尾を全て切り落とすので、それからその女を亡き者にした後はちゃあんと私の事を愛してくださいね」
ぶっ飛んだ言動を吐きながら、並行世界の藍が9本ある自身の尻尾の内、1本に包丁を当て力を込める。
豊姫「え?えっ?あの人なにして」紫「うわぁぁぁヤンデレだぁぁぁ!!あの人怖いよぉぉ!!」
豊姫の視界がガクンと揺れ、腰が浮き上がる。
豊姫「ちょ!?いきなりどうしたのよ!?てゆうかヤンデレってなんなの!?」
自身の常識の範囲外にある事態が連発し、紫に担がれた豊姫が言動の真意を問う。
紫「ヤンデレって言うのは愛の表現が極端かつ歪に曲がりくねった危険思想の持ち主よ!いちばん関わっちゃいけない種類の相手なの!とにかくここは逃げるわよ!!」
藍「あっ!?待ってください紫様!!」
逃げ出した紫と豊姫を追いかけようと、自身の尻尾に当てていた包丁を引き、立ち上がった藍が2人を追う。
豊姫「と、とりあえず降ろしなさい!!この状態だととてもじゃないけど逃げ切れないわ!!」
紫「いま降ろしたらその隙に追いつかれるでしょ!!次の角を曲がった所で降ろすわよ!!」
言葉通り曲がり角を曲がった所で豊姫を降ろす。
紫「こっちよ!!」
豊姫を降ろしたところで、自身のすぐ左手に路地裏に入る道があった為に、紫が豊姫の手を引く。
藍「紫様ああああああ!!!」
2人が路地裏に逃げ込んだ次の瞬間、ひとつめの角を藍が曲がってきた。
藍「む!」
比較的ひろい通りに抜ける前か、路地裏に続く左かの2択で藍に数秒の迷いが生じる。
藍「スンスン…こっちか!!」
残り香を追って藍が路地裏に入る頃、紫と豊姫は何度か角を曲がり、必死に逃げている最中だった。
紫『ぐっ!そろそろ来る気がするわ!この扉を抜けて内側から鍵を閉めたら少しは時間を稼げないかしら!?』
角を曲がる内に、扉が目に入った紫がドアノブをガチャガチャと回す。
豊姫「は、早く!早く開けなさい!」
紫「うるさいわね今やって…よし開いた!この中に逃げ込ん、ん?うぁぁぁ!?」
豊姫「うるさいわね今度は何!?」
紫「天狗装束を着た茨木華扇が廊下を練り歩いてるぅぅぅ!!」
豊姫「なぁ!?深い意味は分からないけどアンタ今ものすごくエッチな事言ってるわね!?とにかく扉を閉めなさい!R18認定されかねないわ!!」
紫「わわ!分かってるわよ!!」
紫が慌てて扉を閉め、再び2人は藍から逃れようと走り出す。
藍「見えた!待ってください紫様ぁぁ!!」
今ので時間をロスした為に、豊姫の後ろ足が通路の奥に消える寸前の光景を捉えられた。
豊姫「やばい!!来てる!!近くまで来てるわよ!!」
紫「分かってる!!また曲がりまくって姿をくらますわよ!!」
しばらく路地裏を走り回ってる内に、暖簾に【鬼ラーメン】と書かれた店が見えて来た。
紫「しめた!!豊姫!あそこに逃げ込むわよ!!」
豊姫「はぁ!?頭沸いてんじゃないの!?こんな時に呑気にラーメンなんかくってる場合じゃないでしょ!?」
紫「だからこそよ!まさか藍も逃げ回ってる私達が呑気にラーメン屋に入ってるなんか思いもしないでしょ!?敵の裏をかくある意味絶好のチャンスよ!」
豊姫「なるほどアンタにしては上出来かもね!じゃあそこのラーメン屋に入りましょう!!」
2人が暖簾をおしのけ店内へと駆け込む。
「ィイラッシャい!!」
紫・豊姫「シィィィ!!悪いけど静かにしてちょうだい!!」
店主に静かにするよう頼み込み、低い姿勢のままボンヤリと透ける厚いガラスの向こうの人影を眺める。
藍「紫様ぁぁあああ!!!何処に行ったんですか紫様あぁああぁ!!!」
9本の尾を持つ人影が大声で叫びながら走り去っていく姿を確認する。
紫・豊姫「はぁぁぁぁぁ…………」
とりあえず一難去り、紫と豊姫が安堵のため息をもらす。
紫「ありがとう店主、世話になったわね。じゃあ、私達はコレで」
手短に店主に挨拶しながら、紫が立ち去ろうとするが、それを制止しようと店主が声を掛ける。
「お客さん。冷やかしですかい?」
紫「悪いけど急いでるのよ。失礼するわ」
「悪いけど内は冷やかしお断りなんでね。なんでも良いから摘んでいってくださいや」
紫「はぁ?しつこいわね、こっちは急いでるんだって」
苛立ちながらも紫が振り返ると、視線の先には【ラーメン命!】と記された鉢巻を巻いた並行世界の星熊勇儀が立っていた。
紫「げっ!?」
豊姫「どうしたのよ?早く行きましょうよ」
怪訝な表情で店を出るよう言う豊姫に、紫が肩を合わせてヒソヒソ声で囁く。
紫「だ、駄目よ。コイツは鬼の四天王で単純な肉体強度なら最強クラスの化物なの。能力の使用が制限された状態で勝てる相手じゃないわ。時間が掛かっちゃうけど、ここは大人しく適当に何か摘んで帰った方が賢い選択って奴よ」
豊姫「ハァ?地上の穢れた食物なんか食べたくないんだけど?」
紫「んな事言ってる場合か!逆らったら張っ倒されるわよ!?」
豊姫「ぬぅぅ……仕方ないわね。じゃあなるべく量の少ないメニューを頼みましょ」
勇儀「オイ!何をコソコソやってんだいアンタら!逃げようってんならタダじゃおかないよ!」
急かす勇儀の言葉に、振り返った2人が分かりやすい愛想笑いを浮かべる。
紫「いやぁ〜ごめんごめん。確かに冷やかしは良くないわよね。それじゃあメニュー表を頂こうかしら」
豊姫「わ、わ〜い。地上の食事たのしみだな〜。月の桃とかあるのかな〜」
勇儀「あぁ!?内にはメニュー表も月の桃もねぇよ!あるのはラーメン鬼盛りかラーメン大盛りだけでい!サッサと決めなサッサと!」
紫「あ、じゃあラーメン大盛りで」
豊姫「わ、わたしもそれで」
勇儀「おう!ちょっと待ってな!チャチャっと作ってやるからよぉ!」
そして、10分後にラーメンは完成した。
勇儀「ハイよ!!ラーメン鬼盛り二丁あがり!!」
2人の目の前に置かれる超特大の器。
そのサイズたるや丼と言うよりは特大の業務用ずんどう鍋をそのまま持って来たような大きさで、そのままバスタブとしても使えるような代物に並々と注がれたスープと具材。
紫・豊姫『??????????????』
あまりの衝撃的なサイズに2人の思考が停止する。
勇儀「さぁ!冷めない内に食べてくれよな!丹精込めて作ったからよ!」
紫「あの…私達が頼んだのは鬼盛りじゃなくて大盛り……」
勇儀「あぁ!?鬼盛りだ大盛りだなんてただのノリで深い意味はねぇよ!どっちにしろウチはこのサイズでやってんだ!文句言わずにサッサと食えや!残したりしたら承知しねぇぞ!なぁお前ら!?」
勇儀の呼び掛けに応え、バックヤードからそれぞれ【麺狂】とか【麺極】との文字が印刷されたブーメランパンツ一丁のガチムチの鬼が複数人出てきて無言で紫と豊姫を睨む。
しかも戦闘態勢なのか元からデカイのかは不明瞭だが、漆黒のブーメランパンツの中に収められたガチムチ鬼のガチムチ鬼はガチムチ鬼になっており、ふと気がつけば、彼等の意にそぐわない言動を繰り返して変に刺激した場合、その後の展開がダークファンタジー的なアレになる可能性をも示唆される状況へと2人は陥っていた。
紫・豊姫「う、うわぁーちじょうのたべものはけがれがいいぐあいにあくせんとになっていてとってもおいしそうだなぁー」




