愛ゆえに人は苦しまねばならぬ!!愛ゆえに人は悲しまねばならぬ!!こ…こんなに…こんなに悲しいのなら苦しいのなら…愛などいらぬ!!嘘です妹紅たんペロペロって慧音が言ってた
主な登場人物
比那名居天子: 気符「無念無想の境地」のアーマーが実は気合いで我慢しているだけと言う理由のみでドM呼ばわりされるクッソ哀れな天人。しかし、この世界線では生粋のドMだったりする。のっけから下ネタですいません。
綿月豊姫:東方最強議論では最上位クラスだが、先日のダイエットの件で消えないトラウマを負ったクッソ哀れな月人。食事は腹八分目で抑えるようにした。
天子『皆さんこんにちは。比那名居天子です。最近、付き人である衣玖が色々とやばいです。具体的になにがやばいかと言うと、例えば、もう読まなくなった雑誌をゴミとして出す時、今まではビニール紐で十字縛りにして出していたのですが、何故か最近は麻縄で亀甲縛りにして出しています。外に干した布団を叩く際にも、何故か布団叩きではなく鞭で叩いています。他にも色々ありますが一番やばいと思った出来事は、夜ねむっていた私がなにか変な声が聞こえると思って目を覚ますと、衣玖が耳元で「総領娘様は私が好きになる。総領娘様はもういちど私に調教してほしくなる。お前のせいでこうなったんだよ。責任とれよ天子こら」との言葉を繰り返し囁いていた時です。おそらくサブリミナル効果による洗脳を狙っていたのでしょう。あまりの恐怖に私は気付かないフリをして狸寝入りを決め込むしかありませんでした。え?もとはと言えば私が自分の嗜好に無理やり衣玖を巻き込んだのが事の始まりだって?えぇ分かっています。分かっていますとも。確かに、過去に私は痛めつけられて興奮する自分のアレな行為に衣玖を無理やり巻き込みましたとも。しかしですね、今の私は本気で悩んでいるんです。無責任だとか自分勝手だとか言われるのは承知の上です。確かにそのとおりだし、自分でも罪悪感やなんやらは感じています。けどね、もう私1人の力ではどうしようも無くなって来ているんです。クソ真面目な人間ほど下手に遊びにハマってしまったらそれしか手に付かなくなるって言葉きいたことありますよね?今の衣玖がまさにその状態なんです。感の良い方ならもうとっくにご存じでしょう。奴は私のような美少女を調教する為に行動するサディスティッククリーチャー…穏やかな心を持ちながら激しいプレイによって目覚めた伝説の戦士…アルティメットサディスティッククリーチャー永江衣玖なんです!もう衣玖は嫌々私に付き合っていたあの頃の衣玖ではありません。血眼になって自ら獲物を探す野獣です。マゾヒストを極めるあまり一切の性行為を行わないオナ禁を自らに課した今の私では野獣と化した彼女を止めることはできません。しかもどこで道を踏み外したのか、今の衣玖はMを痛めつけて喜ぶような甘さを切り捨て、本気で嫌がる相手を痛めつける事にのみ快感を覚える暗黒面に堕ちてしまったのです。今の説明で私の悩みがいかに深刻であるかの一端が垣間見えたでしょうか?のっけから下ネタばかりで申し訳ない。現状説明の為なんです許してください。まぁ、簡潔になにが言いたいかと言うとですね、とにかく私は本気で悩んでいるんです。どうすれば良いのかと頭を抱えていると、この前、人里に新しくできたスポーツジムで起きたダイエット騒動を衣玖から聞いた時、私に天啓が舞い降りて来ました。もはや私の手に余る存在と化した衣玖をどうすれば良いのか。その解決策はずばり………』
天子「全部アンタに押し付けてしまう事よ。綿月豊姫」
豊姫「ふざけんなぁぁぁぁぁ!!!」
月の都に狼狽する声が響く。叫び声をあげると同時に勢いよく椅子から立ち上がった豊姫が両手で机を叩く。
天子「いや〜そう言いたくなるのは分かるけど〜最近やたらと衣玖の口からアンタの名前が出てくるし〜私としては有能な付き人を手放すのは惜しいけど〜やっぱり本人の幸せが一番だし〜みたいな〜?」
豊姫と向かい合う形で座っていた天子が、両手で自身の後頭部を抱えながら、豊姫から視線を逸らして白々しい口笛を鳴らす。
豊姫「さっきの説明と現在いってる言葉が全然噛み合ってないでしょが!厄介事を押し付けようとしている薄汚い魂胆が見え見えなんだよ!」
天子「まぁまぁそう声を荒げずに最後まで話を聞いてちょうだい。私が貴方に厄介事を押し付けようとしているのは事実だわ。けど、なんとかとハサミは使いようよ。衣玖が有能だって事も間違いなく保証するわ。彼女がいれば貴方達の仕事の負担もグッと減るわよ。それに、付き合いの長い私が相手ならほとんど遠慮しない衣玖でも、ほとんど初対面の貴方達が相手なら万が一暴走してもある程度の限度は弁える筈よ。確かにリスクもあるけど、それ以上のリターンがあるわ。こんなチャンスがただで降って湧いたんだからむしろラッキーじゃない」
豊姫「………色々ツッコミたいところはあるけど、とりあえずこれだけは言わせてちょうだい。万が一暴走した時にもある程度の限度は弁える?冗談じゃないわ。貴方はダイエット騒動の時の彼女を知らないからそんな適当な事が言えるのよ」
天子「特定の条件下とは言え鬼のような言動を取る人間は信用できないって言いたいのかしら?」
豊姫「えぇそうよ。あの時の私は死を覚悟せざるを得なかったわ。いやマジで」
天子「随分と的外れな答えね。それでも月のリーダーなの」
豊姫の返答を聞いた天子が、ワザとらしく両手を広げてやれやれといった具合に首を振る。
豊姫「はぁ?どういう意味よ?」
苛立った豊姫が真意を言うよう急かす。
天子「逆よ逆。特定の条件下で言動が変化するって事は、見方を変えれば切り替えができるって意味でしょ?私としてはどんな状況であっても言動の変化しない人間の方がむしろ不気味だわ。大体、ダイエットの時に豹変するのはアンタの妹も同じじゃない」
豊姫「そ、それはまぁ、そうだけど……」
天子「だからさ、お試し期間って感じで少しの間だけ衣玖を預かってくれても良いんじゃない?本人と貴方達が望むならそのまま本格的な契約を結んでさ。なにも一生って訳じゃないんだし、私としてもしばらく羽を伸ばせたらそれで満足だから。ね?今度ちゃんと埋め合わせするから、人助けだと思ってさ?お願い!このとおり!」
豊姫「う、う〜ん……」
天子が両手を合わせて頼み込むと、悩んだ様子で豊姫が唸り声を漏らす。
天子『よし、もう一息ね。このままなんとしても押し切らせてもらうわ』
衣玖「おやおや、本人のいないところで随分と勝手な約束事を取り付けるなんて、総領娘様には困ったものですね」
天子「どぅおわあッ!!?」
背後からの聴き慣れた声に驚いた天子が叫びながら腰を跳ねさせ、その振動で大きく動いた椅子がガタガタと音を鳴らす。
衣玖「ふふふ、お久しぶりです豊姫さん」
豊姫「お……お久しぶり…なぜ貴方がこんなところに?」
露骨に警戒した豊姫が体を僅かに硬直させながら質問を投げ掛ける。
衣玖「え?なぜって?そんなの決まってるじゃないですか。総領娘様に仕込んだ発信器がなぜか月を指し示していたので、なんの連絡も無しに遠出した主人の様子を見に来たんですよ」
天子「は、発信器!?アンタいつのまにそんなの」衣玖「そしたらまさか、本人のいないところで私を他所に貸し出すとかなんとか。少し身勝手が過ぎるんじゃないですか総領娘様?ねぇ?こういうのは普通、本人に相談してからですよね?そんな当たり前の事も分からないんですか?どうなんですか?ねぇ?総領娘様?」
天子の反論に被せるようにして衣玖が言葉を捲し立てる。
天子「い…いや…それより発信器…」衣玖「万が一総領娘様の身に危険が及んだ時にいち早く対応できる為に仕込んだだけですがそれがなにか?従者として主人の身を案じるのは当然ですよね?てゆうか今はそんな話ししてませんよね?総領娘様がなんで私に相談もせずに私を他所に貸し出そうとしていたかって話しですよね?私は道具かなにかですか?違いますよね?私は総領娘様の付き人ですよね?そうですよね?正直ショックなんですけど。私は総領娘様の事が何よりも大事なのに、こんなにも総領娘様の事を想っているのにどうして総領娘様は私の気持ちに気付いてくれないのですか?このような事は金輪際ないようにしてくれませんか?約束してくださいよ。総領娘様。ほら、指切りげんまん」
衣玖が背後から腕を伸ばし、天子の目の前で小指を立てる。
天子「あ…あの……」
衣玖「なにボケッとしてるんですか?早く指切りげんまんしてくださいよ。ほら早く」
異様な迫力に怯んだ天子が慌てて自身の小指を絡ませる。
天子「………ゆ…ゆーびきーりげんまん嘘付いたら」衣玖「針千本のーます!指切った!」
衣玖が急激に勢いをつけて小指を振り払う。
天子「い、痛っ!?」
予期せぬ衝撃に身構える暇も与えられなかった天子が左手で痛めた右手を小さくさする。
衣玖「謝ってください」
天子「え?」
衣玖「勝手に私を貸し出そうとした事を謝ってください」
天子「そ、その前に乱暴に手を振り払った事に対して何か言うことないの!?」
生来の腕白な性格により、振り返って思わず文句を言った天子の口元に衣玖が素早く指を突っ込んで、指で天子の舌を引っ張り出す。
衣玖「いいから謝れや。オカスゾ」
唸るようなドスの効いた声をあげながら衣玖が天子を睨み付ける。
天子「ヒッ!?……す……すいまひぇん……でひた………」
天子が謝罪の言葉を述べると、衣玖は指を離し、満面の笑みをたたえながら猫撫で声で「良く言えました」と、帽子の上から天子の頭を撫でる。
あまりに異質な言動を目の当たりにした天子は、衣玖から顔を逸らして下に俯く。
いつのまにかヤンデレ属性をも兼ね備えていた衣玖に対し、天子は生まれて初めて心の底から震え上がり、恐ろしさと絶望に涙すら流した。
衣玖「豊姫さん。すいませんでした」
豊姫「イェッ!?なにが…ですか!?」
ドロドロと纏わり付く殺意のような恐ろしい威圧感の張本人の意識が自分に向くと、豊姫が素っ頓狂な声をあげながら慌てて返事を返す。
衣玖「今回の件で自分の本当の気持ちに気付きました。やはり私は総領娘様の元から離れる気にはなれません。先日のデートのお誘いは忘れてください。私の気の迷いでした」
豊姫「え、あぁアレね!?いやいや全然気にしてないわよ!?やっぱり衣玖さんのお相手には天子さんが一番似合ってると思うわ!」
衣玖「ふふ、ありがとうございます。それでは私達はここらでお暇させていただきます。本日はお騒がせしました」
豊姫「いえいえ大丈夫ですよ!それではお達者で!」
衣玖「ほら、行きましょう総領娘様」
天子「は…ハイ…」
天子達のすぐ後ろの扉から2人が出て行くと、ちょうどそれと入れ違いになるタイミングで、豊姫のすぐ後ろの扉が開き、依姫がお茶と菓子の乗ったトレーを手にしながら「お茶が入りましたよー」と言い掛けるが、豊姫が慌てて依姫の口を右手で塞ぐ。豊姫は左手は自分の口元に添えながら、人差し指を立て「しぃー!」と、静かにしろとのジェスチャーを送る。
依姫「む、むぐ!?」
豊姫の心音が異様に高鳴る。
張り詰める緊張感の中、衣玖と天子の足音に耳を澄ませ続ける。足音は徐々に遠退いて行き、やがて聞こえなくなった。どうやら何事もなく帰って行った様子だ。
もう大丈夫だと思ったところで、依姫の口元から豊姫が手を離す。
依姫「ね、姉様?いきなりどうしたのですか?」
豊姫「いや…なんでもないわ…気にしないでちょうだい…」
依姫「え…しかし…」
どう考えても普通の様子には見えない。依姫がなにがあったかと気にする様子を見せたが、豊姫はあくまで「本当になんでもないわよ」で押し通した。
『これ以上、あの衣玖に長居されるのは御免だ』との考えに豊姫が至ったのも無理はないだろう。




