今回は三本仕立てだよんって慧音が言ってた③
ダイエットに協力してくれるコーチ陣
綿月コーチ:教え子を大切にし過ぎるが余り厳しくし過ぎてしまう極端な人。
八雲コーチ:特定の教え子にだけ異様な執着を見せる危険な人。
博麗コーチ:かなり厳しくて言葉使いも荒いが実はコーチとして一番有能な人。
永江コーチ:公私の区別が甘く個人的な主従関係の不満をダイエットの場に持ち込むなかなかにタチの悪い人。
上白沢コーチ:幻想郷きっての知識人!文武両道才色兼備!すっごく優しくてすっごく有能なすっごく素敵な人!うそじゃないよほんとだよじょうほうそうさなんかぜんぜんしていないよ。
ダイエットは凄惨を極めた。気合いを込めた奇声の如き雄叫び。
飛び交う叱責、怒号、悲鳴。
溢れる弱音、涙、汗、涎。
そしてまた激励と鞭が飛び交う。
妹からの圧力、姉に対する怒りと期待、部下への度を超えた依存、主人への加虐心、ライバル(?)への対抗心。
不穏な気配と異様な熱気にドン引きした村人達がそそくさとジムを出て行く。
従業員兼オーナーのにとりとしては商売あがったりだが、幻想郷の管理者と月のリーダー達が相手では文句など言える筈もない。
にとりの心労など知る由もなく、紫と豊姫は死ぬ気でダイエットに励んだ。
日に30時間の鍛錬と言う矛盾!!
この矛盾をひたすら鍛錬の密度を高めることで補い続けるーーーーーこと3日間。
紫と豊姫の体型に大きな変化は無かった。
当たり前と言えば当たり前だろう。
死ぬ気で3日間頑張ったとは言え、今の巨体になるまでには、この3日間よりも遥かに長い時間に渡る怠惰な生活とエネルギーの過剰摂取を繰り返してきたのだ。現実は非常なり。いくらダイエットの内容が濃いと言っても短時間で出せる結果には限界がある。
紫と豊姫が同時に体重計に乗ると、両者ともに10キロ近くの減量に成功した。
10キロ減量と言う事実だけに焦点を当てれば大収穫には違いないが、体重計に表示される数字は相変わらず3桁の大台のままだ。
紫「そ……そんな………」
豊姫「あんなに頑張ったのに………」
紫と豊姫がよろよろとその場に崩れ落ちる。
依姫「姉様!」
藍「紫様!」
心配して依姫と藍が駆け寄ると、紫と豊姫は泥のように深い眠りに落ちていた。
依姫「な、なんだ…眠っただけだったか……」
安心したように依姫がホッと息を吐いた。
藍「無理もありません。トレーナー側の私達が言うのもなんですが、狂気とすら言えるトレーニング内容でしたもの」
依姫「む、確かにそうだが、その割には藍殿は妙なテンションだったと言うか、なんかやたらと喜んでいた気がするが」
依姫の言葉に藍が肩を跳ねさせる。
藍「えっ!?いや別に変な意味はありませんけど!?ひとつの目標に向かって頑張る主人の姿を見て悦ぶのは部下として当然の事と思うんですけど!?」
依姫「なるほど。藍殿は主人想いなんだな」
藍「え、えぇまあ、本当に…あはは…はははは…………」
藍『あっぶねぇぇぇ!なんて洞察力!けどよっちゃんが純情だったおかげでなんとか助かった!もう少しで私が紫様を虐めて楽しんでいるのがばれるところだった!』
藍が着物の袖で口元を隠しつつ、慌てて依姫から顔を逸らす。
依姫「しかし、怒鳴りっぱなしで喉が渇いたな。近くに茶屋は無いものか。姉様が起きた時用に桃も用意しておきたいし」
藍「ああ、それなら心配いりませんよ。おーいにとりさーん!」
藍が大声で呼ぶと、トレーニングルームの出入口から、あからさまな迷惑顔のにとりがやって来た。
にとり「なんのようだい」
にとりがむすぅと頬を膨らませながら面倒くさそうに質問する。
藍「桃と油揚げとちゃんこ鍋と煎茶を数日分持ってきて。あとお泊りセット四人分ね」
にとり「あんたスポーツジムがなんなのか分かって言ってる!?」
藍「幻想郷は全てを受け入れるのよ。それはそれは残酷な話ですわ」
にとり「えぇ…」
清々しいまでの図々しさと非常識っぷりだ。とりあえずこれ言っとけば何とかなると言う気がしないでも無い紫の名言中の名言的なアレと友人同士なんだし多少の無理は聞いてくれよ的なゴリ押しと幻想郷の管理者(の付き人)と言う立場とを利用したトライアタックに、にとりもたじたじだ。
藍「あ、そういえばよっちゃん。月人は桃を食べるけど飲み物は何を飲むんですか?やっぱりピーチティーとか?」
依姫「よっちゃん!?……えと、いや…あの…飲み物は基本的にお茶か水ですけど……私個人としては水の方が良いです」
藍「じゃあにとり。水もお願い」
にとり「………はぁ…後で特別料金を請求させてもらうからね」
藍「あ〜平気平気、この人たちの分も全部紫様にツケといて」
依姫「え!?」
藍の言葉に依姫が驚いた声をあげる。
にとりが部屋から立ち去っていったところで、依姫が藍の言葉の真意について質問する。
依姫「藍殿、なぜ私達の分まで八雲紫にツケとくだなんて言ったのですか?自分達の分は自分達で払うつもりですが」
藍「それには及びませんよ。紫様が迷惑を掛けたからこのくらいは当然です。それに、今の貴方達は幻想郷に足を運んできた客人なのですから遠慮は無用です。ぶっちゃけた話、これを機に良好な関係を築けたら儲けもんですしね」
藍が嘘を吐いてる様子は無かった。先日、紫が月の住民に迷惑を掛けた事実もあるし、ならば必要以上の遠慮は無用かと、依姫が藍の言葉に肯定の意を示した。
依姫「そうか、済まないな。それじゃあ、今回はご好意に甘えさせてもらいます」
本人が寝ている間にちゃっかりと好印象を与える藍の功績と、自身に向けられる歪んだ愛情と忠誠心に気づかぬまま眠り続けた紫が、6時間後に目を覚ましたところで、豊姫も同じく目を覚ました。
にとりが用意した食料でエネルギー補給を済ませ、お泊りセットの中に含まれていたバス用品を使い、スポーツジム内のシャワーで体を洗い、紫と豊姫が再びダイエットを再開した。
紫「うぅ……全身筋肉痛で動くのが辛いわ…」
豊姫「珍しく同意見だわ……ねぇよっちゃん…今日は軽めに流すだけにしましょうよ」
ダイエットを再開したものの、予想以上の成果が出なかった事と、全身を襲う筋肉痛に紫と豊姫が弱音をもらす。
依姫「何を甘えた事を抜かしているのですか姉様!早く痩せて早く帰らないとサグメ様に仕事を丸投げしたままになるじゃないですか!」
豊姫「分かっているわよ。けど、あれだけ頑張ったのにまだまだ元の体型には程遠い訳だし、サグメちゃんに仕事を任せっぱなしにするのも悪いから、八意様のところに戻って痩せ薬を作ってもらいましょう」
依姫「ほほぅ?どうやらまだ寝ぼけたままのようですね」
依姫がどこからともなく鞭を持ち出し、それを豊姫に向けて勢いよく振るう。
依姫「グズの癖に愚痴ばかり漏らしおって!!いいか良く聞け!?今この場に置いて私は貴様の上官なのだ!!上官の命令にはYESかハイで答えろ!!口を動かす暇があるなら体を動かせこの豚がぁ!!」
指導者スイッチの入った依姫が凄まじい剣幕で声を荒げる。
豊姫「ぎゃあああすいません!!私が間違ってましたああああ!!」
恐怖に駆られた豊姫が追ってくる依姫から逃れようと室内を駆け回る。
藍「紫様、こちらへどうぞ」
一方の藍はと言うと、右手で腹筋台を指さしながら、左手で紫を手招きする。
紫が露骨に嫌そうな顔をすると、どこからともなく取り出した木刀で素振りを開始する。
これ以上ケツを叩かれては満足に座る事もできなくなるだろうと恐ろしい結果を予測した紫が誘導されるがまま腹筋台に寝転び腹筋を開始する。
しばらくの間、比喩的な意味でも物理的な意味でも尻を叩かれて運動を続ける両者だったが、1時間ほどしたところで力尽きて動きを止める。
依姫「誰が休んでいいと言った軟弱者がぁぁ!!」
豊姫「ンァァァァァッ!!」
鞭で打たれた豊姫が悲鳴をあげる。
藍「ほらどうしたぁ!!ただ寝転がる事を腹筋運動だと勘違いしているのかお前はぁ!!起きてこなければミミズ腫れのみで隈取りメイクが完成してしまうぞ!!」
紫「ふぎぃぃぃぃ!!」
両頬をつねられ痛みに悶える紫だが、なかなか体が起き上がってこない。
3日間とは言え、死ぬ気で頑張ったのに思った成果が出なかった事と、全身を襲う激しい筋肉痛。心身共に負ったダメージとゴールの遠さに二人の心は折れ掛けていた。
それでも強引に気力を奮い立たせようと、依姫と藍が、豊姫と紫を叱責するが、いくら追い込んだところで目に見えた効果は出なかった。
依姫「く…お仕置きの痛みにも相当慣れてきたみたいですね。これ以上の追い込みは難しいか」
藍「てゆーかむしろ喜んでないか?これじゃあ雌豚と言う単語がダブルミーニングになってしまう。いい加減にしないと多方面から怒られるぞ。別の手を考えなければ」
ダイエットが行き詰まり、汗だくでぶっ倒れる紫と豊姫を放置しつつ、暫くのあいだ藍と依姫が頭を抱えていたところで、トレーニングルームへと新たに来客が現れた。
衣玖「それでね、毎日頑張った甲斐あって5キロの減量に成功したんですよ。継続は力なりとはよく言ったものですよ」
霊夢「ふん、いい御身分ね。こちとら賽銭が少ないせいで毎日が強制ダイエットだっつうの」
依姫「あ!霊夢!おーい久しぶりー!」
霊夢に気付いた依姫が嬉しそうに大きく腕を振る。
衣玖「なんか呼ばれてますよ霊夢さん。初めて見る方ですが、あんなひと幻想郷にいましたっけ?」
霊夢「あ〜…まぁ……説明すると少し長くなるんだけど……」
顔を合わせ、簡単な自己紹介と現状の説明を済ませる。
霊夢「なるほどね。簡単な話よ。私達が協力すれば良いわ」
ダイエットに行き詰まっている事を説明すると、霊夢がすぐさま、自信満々に答えを返した。
依姫「しかし、いくら追い込んだところで二人の体力と気力は限界間近ですよ。休ませているので少しは回復しているでしょうが、コーチが変わったからと言って急に結果が出るとも思えませんが」
霊夢「いくら工夫したところで所詮はひとりの人間。どうしてもその行動には一定の法則性、つまりは偏った考えが出てしまうわ。そうなれば出せる成果の範囲もどこかで頭打ちになってしまう。その点、複数人いれば色々な方法と刺激で同じダイエットにも広い幅を持たせる事ができるわ。質も勿論だけど、大事なのは量よ量。食事と同じくね」
藍「なるほど。確かに一理あります」
霊夢「よし決まり!私が紫のサポートに付くわ。後でたんまりと報酬の食料を頂くわよ」
藍「私は紫様の泣き顔……じゃ無かった…紫様が努力できる人物だと証明してくれたらなんでも良いです」
衣玖「じゃあ私は豊姫さんを見ますね。一緒に頑張りましょう豊姫さん」
豊姫「え、えぇ、よろしく」
豊姫『やった!この人はよっちゃんより断然優しそうだわ!」
ダイエットを再開して5分後、豊姫の淡い期待は無残にも打ち砕かれた。
衣玖「腕が下がってますよ豊姫さん!!根をあげる前に重りを上げてください!!」
豊姫「な…なこと言われたって本当に腕が動かな……」
ベンチプレスを続ける豊姫の腕がプルプルと震える。
衣玖「仕方ありません。電気で強引に筋肉を動かしましょう」
豊姫「うぐんんんんんんん!?」
衣玖の指先から放たれた電気で豊姫の全身が激しく痙攣する。
紫「あ……あとどれぐらい止まってなきゃい…いけないの?」
空気椅子を続ける紫が滝のような汗を流す。
霊夢「あと10分続けなさい」
紫「10分!?そんなのできるわけが!」
霊夢「口答えすな!パスウェイジョンニードル!」
霊夢が手にした針で紫の体を突っつく。
紫「痛ぁっ!?ご、ごめんなさいぃぃ!!」
ベンチプレスと空気椅子を終えた紫と豊姫が、今度は同時にぶら下がり器で懸垂を行う。
衣玖「ちゃんと顎を棒の上まであげなさい!100回を終えるまで降りる事は許しませんよ!」
豊姫「100回終えるまで!?せめて休憩を挟ませてくれないと不可能だわ!」
衣玖「ご安心を、いざとなれば電気刺激で強制的に腕を上げ下げさせてあげますので」
霊夢「こうして見るとまるで冷凍室の吊るし肉ね!暴飲暴食を繰り返した結果だわ!少しは私の身にもなれってんだコノコノ!」
紫「痛い痛い!執拗にスネを蹴るのはやめてぇぇぇ!!」
霊夢と衣玖がダイエットチームに加入してから更に3日が過ぎた。
数え切れないほどの泣き言やら汗やらを流しながらも豊姫と紫は必死にダイエットを続けた。
本日も朝早くから豊姫は背筋を繰り返していた。
豊姫「きつ、キツいィィィィ!腰が砕けるうぅぅぅぅ!」
衣玖「相変わらず泣き言ばかり漏らして!少しは自分が情けないと思わないのですか!?どうやら豊姫さんに足りてないのは羞恥心のようですね!」
豊姫の裏腿に乗った衣玖が豊姫のズボンを下ろす。
豊姫「ちょっ!?なにを!?」
大きな桃の如き尻を丸出しにした豊姫が顔を赤らめながら手でズボンを上げようとするが、衣玖は座ったまま少し前進して、自身の両膝で豊姫の両腕を押さえ付ける。
衣玖「良いですか豊姫さん!このセットを終えるまで私は延々と豊姫さんの丸出しになった尻を叩き続けます!それが嫌なら早く残りの回数をこなしてください!」
一方的に言い終えるなり、宣言通りに衣玖が豊姫の尻を平手打ちで叩く。
藍「ちょっと衣玖さん!?流石にそれはやり過ぎでは!」
藍が慌てて静止の声を掛けるが、衣玖は恍惚とした表情のまま延々と豊姫の尻を叩き続ける。
霊夢「駄目だコイツ。極限までマゾを拗らせた天子が調教を必要としなくなったから、日常レベルまで浸透していた毎日のアレなプレイと、それに伴って無意識化で育まれたSっ気が行き場を失った挙句に暴走してやがる」
衣玖「ククク、綿月豊姫よ、ダイエットを手伝う代わりに我が加虐心の生贄となれ」
藍「あんた月のリーダーになんて事してんの!?」
豊姫「分かった分かった!頑張るからせめてズボンを上げてぇぇぇ!!」
依姫「おぉ!目に見えて効果が出ています!衣玖さん!その調子で姉様を追い込んでください!」
霊夢「私達も負けてられないわよ紫!今からアンタに向かって夢想封印を放つから、スキマ使用なしで躱してみせなさい!」
紫「霊夢!?な…何を言って……」
霊夢「行くわよ!夢想封印!」
紫「ちょっとおおおおお!?」
霊夢の放った大量のホーミング弾から逃れようと紫が限界を超えた動きで逃げ回るが、もちろん、最終的には弾幕の餌食となった。
紫「ぎゃああああああああ!!!」
更に日数が過ぎ、ダイエットと言う名の拷問に紫と豊姫が苛まれる中、トレーニングルームに新たな客がやって来た。
慧音『む、珍しい組み合わせだな』
霊夢「お、アイツは……依姫、ちょっと耳を貸してちょうだい」
依姫「なんですか霊夢?」
慧音の来訪に気付いた霊夢が、ひそひそと依姫に耳打ちする。
依姫「なるほど……祇園様の剣よ、あの者を拘束せよ!」
依姫が剣を地面に突き立てると、慧音の周りに無数の剣が突き出して慧音の動きを封じ込める。
慧音「うおっ!?いきなりなんだ!?」
驚いた慧音が構えながら叫ぶ。
依姫「神霊の依代となる能力発動!我が身に降りたて!スー○ーサ○ヤ人ゴッドベジー○!」
更に依姫は、神霊の依代となる能力を発動させ、自身の身にベジー○を降ろす。
依姫「初めまして上白沢慧音。初対面でいきなり申し訳ないが、貴女には我々のダイエットに協力してもらう」
慧音「だ、ダイエットに協力?」
依姫「月の光は太陽光が月にはねかえったものだということは知っていよう…月に照り返されたときのみ、その太陽光にはブルーツ波が含まれる。1700万ゼノ以上のブルーツ波を目から吸収するとワーハクタクは変身を始める。そして、限られたサ○ヤ人にだけ人工的に1700万ゼノのブルーツ波を超える小さな満月を造りだすことができるのだ!ご都合主義のなぁなぁな空気とこのパワーボールを混ぜ合わせることでな!」
依姫の手から浮き出た球体状のエネルギーの塊が宙空に投げ出される。
依姫「はじけてまざれ!」
スポーツジム内に現れた小さな月が輝き始めると、慧音の体が変化を始め、頭部から2本の鋭い角が伸びてくる。
きもけーね「ブルアアァァァァァァァァ!!(【訳】穴を掘らせろぉ!!)」
妖怪と化した慧音が雄々しい雄叫びをあげる。
本能のままに暴れようとする慧音だったが、祇園様の剣が檻のように慧音の動きを阻害する。
檻の中から角だけ飛び出したような状態でヘドバンの如く荒ぶる慧音の側へと、依姫と霊夢がルームランナーを配置して、ボタンを弄り、速度を最大にしてから豊姫と紫を手招きする。
数日間に渡る指導によって逆らう気力の消え失せた豊姫と紫が恐る恐るルームランナーへと足を踏み入れる。
きもけーね「ブルアアァ!!ブルアアァァ!!(穴を掘らせろ!!穴を掘らせろ!!)」
少しでも足を止めればたちまち後方に待ち構える慧音の角で穴を掘られるだろう。まさに地獄。死にたくなければ死ぬ気で走る他ない。
霊夢「ほらほら気合い入れなさい!どうなっても知らないわよ!」
依姫「甘えを捨てろ!己の弱さと決別するのだ!走れ走れぇ!」衣玖「あぁなんて楽しいのだろう。これは私が求める行為の完成形のひとつだわ」藍「おほぉぉぉぉ!!紫様の泣き顔サイコォォ!!紫様!こっちですこっち!もっとカメラ目線でお願いします!!」トレーニングルームに絶え間無いシャッター音と慧音の雄叫びが響き渡る。
紫「もう……」豊姫「もう……」
紫・豊姫「もう勘弁してぇぇぇぇぇ!!!」
そして
永きに渡る闘いに遂に終止符が打たれた。
依姫「色々とお世話になりました。このお礼はいずれまた」
紫、藍、霊夢、衣玖、にとり、慧音の6人へと依姫が頭を下げる。
藍「えぇ、また遊びに来てください」
霊夢「今度来るときは桃を持ってきて頂戴。月の桃は美味しいから」
にとり「頼むから今度私の店に来る時は争い事の無いようにしてくれよ」
慧音「まったく、いきなり周期に無い変身をさせられたおかげでまだ頭痛がするぞ」
衣玖「豊姫さん。よければ今度お食事にでも行きましょう。2人きりで、ね?」
豊姫「そ…そうね…ま…前向きに検討しとくわ……」
豊姫が露骨に衣玖から視線を逸らす。
紫「まぁ、今回は引き分けにしといてあげるわ。勝負内容はあくまでダイエットの速度、どちらがナイスバディかじゃないものね」
すっかり痩せて元の体型に戻った紫がくびれと胸を強調するかのように、わざとらしく体を捻ってポーズを決める。
豊姫「ふ、まぁそういう事にしといてあげるわ。美しさを競ったら私と貴女なんかじゃあ勝負にならないものね」
紫「お?」豊姫「あん?」
紫と豊姫が闘牛の如く頭を打ちつけ始めると、面倒毎が起こらない内に早く帰るように依姫が急かす。
帰路に就いた豊姫と依姫が数時間経て月に辿り着くと、なにやら都の方から騒ぎ声が聞こえてきた。
都へと歩を進め、曲がり角をまがって大勢の声のする広間へ、「ただいま帰りましたよー!」と元気な声をあげながら豊姫が顔を出す。
依姫「貴方達、何をそんなに騒いでいるのですか」
続けて顔を出した依姫の表情が、広間を見るなり時が止まったかのように凍りついた。
玉兎A「ダハハハハハ飲め飲めー!!」玉兎B「騒げ騒げー!!」サグメ「今は口うるさいよっちゃんはいない!今宵は酒池桃林の宴じゃあ!踊れ踊れぇ!」玉兎C「今宵はじゃなくて今宵もでしょサグメ様〜」サグメ「あれそうだっけ?まぁなんでも良いや!歌え歌えー!」
広間には大量の酒樽と桃が散乱していたが問題はそれだけに留まらない。
依姫がいない間、サグメと玉兎達はどれほどサボり倒して遊び倒したのだろうか。
全員が全員、ブクブクに肥え太り、最低限の秩序とストイックさどころか、人としての尊厳すら失いかねない程の無法地帯へと変化していた。
豊姫「あ……あの…依姫……さん…?」
見るも無残な惨状に、豊姫が恐る恐る依姫へと声を掛ける。
依姫は無表情のまま携帯を取り出し、地上への通信を行った。
依姫「にとり殿、近い内にまた地上へ出向く事になると思うので、無理を言って悪いが100倍の重力発生装置と超高温のサウナルームを作っておいてくれないか。えぇ、費用はいくらでも出しますので超特急で作っておいてください。えぇ、お願いします。それでは」
電話を終えた依姫は、およそ生き物のソレとはかけ離れた化物染みた表情のまま、無言で広間へ向かって歩きだす。
豊姫は顔を真っ青にしながら、何も見なかった事にして、両耳を塞ぎながらその場から素早く立ち去った。




