大は小を兼ねない
因みに筆者は大食いなので中と麺類とおかず(と、デザートとコーヒー)いけます。
『大』頼みたいですねえ( ̄▽ ̄)b。
ここはどこにでも在るような大衆食堂である。
トレーに幾つかのおかずを乗せ、彼は思案する。
「う~~~ん、今日のごはんは『並』でいいか。オバチャン、『並』一つ!」
「『なみ』ですか?」
「『並』で」
「本当に『なみ』でいいのかい?」
「??━━ああ、『並』でいいけど?」
「━━分かりました」
すると何故か食堂のオバチャンはカウンターの下に身を潜めた。
━━ゴゴゴゴ……。
「ん?何の音━━」
どっぱぁぁぁぁん!!
「どわぁぁぁ‼」
彼はカウンターから押し寄せた『波』に店外まで流されていった。
明くる日。
「昨日のアレは……。いや、夢だ夢。あんなのは」
そうして彼はカウンターに向かい。
「オバチャン、『並』ひと……いや、今日は『中』でいいか」
「はいよ!『ちゅう』一つ!」
ぶちゅ~~~~~~っっっ!
「くぁwせdrftgyふじこlp!!」
食堂のオバチャンの熱~~いキスで彼は悶絶して倒れたのだった。
さらに別の日。
「……俺、何しに食堂に来ているんだっけ」
「はいよ、ご注文は?」
「しょ……『小』で」
「イッツ、『SHOW TIME』!!」
「はい?」
彼の目の前でカーテンが閉ざされ、再び一気に開かれると━━。
「ほっ!ほっ!ほっ!」
食堂のオバチャン方によるフレンチカンカンが始まった。
「おげぇぇぇぇぇ!!!」
食欲は空の彼方へ消え去った。
「俺は……何を頼めばいいのだろう」
そもそも来なければいいというツッコミは無い。
「注文は?」
オバチャンの笑顔が彼には悪魔の微笑みに見えた。
「こうなったら……『大』で!!」
「『だい』、ですね?」
オバチャンがニヤリと笑った気がした。
「おい、コイツ死んだんじゃね?」
つんつん。
「返事がない。ただの屍のようだ」
その男の目の前には、巨大な丼に顔を突っ込んで白目を剥いている彼の姿があり、「嫌だ……オバハンのフレンチカ……」などとうわ言を呟いていた。
「だから止めろって言ったのに。おーい、誰か水持ってきてくれ」
「はいはい。まあ、看板に偽りなしって事か。正しく『Die』ってか」
そう言って彼の同僚が見上げた先にはこんな張り紙が。
『ごはん『大』 とても食えませんよ』