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ゲイルゴーラ2

「おいおい、お代はどうした?」

少し焦り気味の店主。

「お代?」

レーイは何のことか判らず、首を傾げる。その仕草の可愛らしさに、店主は一瞬、無料(ただ)にしようか迷ったが、すぐに思い直す。店主にも養うべき家族が居るのだ。

「50セントだ」

店主の言葉に、レーイは大事なことを思い出した。

『下界では物々交換ではなく、貨幣を使って物の取引をする』

ぽんっと手で槌を打ったレーイは「ちょっと待って」と答えて、背負っていたずた袋を下ろし、中からずっしりと硬貨のはいった袋を取り出す。そして、そこから1枚取り出すと、

「これでいい?」

と店主の手のひらに乗せた。

店主はぎょっとして手の中のものを見つめる。

それは、金貨だった。

「こんな大金を渡されても、釣りなんか無いぞ?」

「釣り?」

また首を傾げるレーイは、釣りという概念が判っていない。

「困ったな」と店主は頭を掻いた。

と、その時。

不意に現れた人影がレーイに体当たりしてきた。

レーイは支えきれずによろける。そこにさらにもう一つの人影が割り込み、レーイが手にしていた貨幣を入れた袋を奪い、あっという間に走り去った。

それを、レーイは状況が飲み込めないまま見送る。

その間に、最初にぶつかってきた人影が、ずた袋を担いで走り出す。

「こら! 小僧ども!」と店主は叫び、それからレーイに向かって、「おい、嬢ちゃん、早く追いかけねぇと。って、あー、もう姿が見えねぇ……」

店主は困ったように頭を掻いた。

「どうするんだ、嬢ちゃん?」

「今のは、『泥棒』という存在か?」

レーイは冷静に答える。

「そうだが……」

この子は肝が据わっているのか、ただの無知なのか、店主は困惑し、周囲をに助けを求めるようにきょろきょろと視線を動かす。

見かねたように、近くで成り行きを見ていた青年がレーイに駆け寄った。

「お嬢さん、早く追いかけないと!」

「うむ、そのつもりだ」

「私も手伝うから! さあ!」

青年はレーイをせき立てる。

「ご助力感謝する。しかし、そなたの名前は?」

「そんなことより! 早く!」

「判った……。アレーナ、足止めを」

レーイがその場に居ない者に命じると、『仰せの通りに』と女の声だけが聞こえた。

「今の声は?」と青年。

「気にしなくて良い。それでは行こうか、助っ人殿。それから店主殿、戻ってくるから、その時に釣りの話を頼む」

「あ、ああ」

唖然として見送る店主。

レーイは悠々と歩き出す。

「早く! 急いで!」

と先を急ごうとする青年に、レーイは「焦る必要はないぞ、助っ人殿」と余裕で返した。

親切な青年は気が気ではない様子で、「先に行ってるからね!」と走り出し、泥棒が消えた角を曲がって行った。

その時、『捕獲しました』と女の声。

「判った。感謝する」

『わたしはあなた様の僕なれば、当然のことです』

「うん」

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