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教皇謁見4

「我々はダールバイにおける政教分離を行うつもりです」

「うむ、願ってもないことだ」

すぐさま、ケレスティヌスの同意が返った。

「猊下を初めとするダールバイ教の中枢を担う聖職者のほとんどは、その職を安堵します。しかし、政治的権力はすべて剥奪させていただく」

「異存ない。将軍の政策は、ダールバイ国にとっては大変な仕打ちとなるだろうが、ダールバイ教にとっては願ってもないことだ」

「この地は今後、クヴァルティス帝国の一部としてダールバイ州となります。その一方で、タクラス市を中心に宗教上の中心都市として存続するでしょう」

「良いだろう。それは最終的には、私の望みとも合致する」

ケレスティヌスは、ほっとした様子を見せた。余裕のある態度を見せてはいたが、やはり緊張していたのだろう。

「猊下の望みとは? 差し障り無ければ聞かせていただきたい」

「大した望みではない。『宗教人は政治家である前に宗教人であれ』という考えを浸透させたかっただけだ。それによって宗教としてのダールバイを立て直し、国としての立て直しにつなげる。……だが、政教が分離されれば、話は変わる。我々はただの宗教人でしかなくなる。強制的に本業に専念せざるを得なくなるのだから、より都合が良いという訳だ」 

「逆に宗教に専念出来なさそうな人物も居そうですね。心当たりは? お力添えできると思いますよ?」

ケレスティヌスは、ふむ、と頷いて間を取る。話してしまうべきか、考えを巡らせている様子が窺える。

ケレスティヌスに政治から距離を置きたいという意向があったのなら、マルティンにとっても都合の良いことだ。ついでに政治家としてしか動けない宗教人には、政治の舞台からも宗教の舞台からもご退場願おうとマルティンは考えた訳である。そのような人物は、今後ケレスティヌスがダールバイ教を立て直す時にも障害になるはず。ゆえに、将軍の権限で予め排除してしまおうと考えたのである。

一方、ケレスティヌスにとっては、この場で具体的に宗教政治家の名を挙げるのは簡単なことである。だが、彼はその先が見えている。迂闊な対応を取れば、恨みを買って、かえって牙を剥かれる可能性がある。さらに、クヴァルティスの将軍に政治のみならず宗教の範囲まで権限を振るわれてしまっては、その後、宗教的権威としての教皇の立ち位置が弱くなる。それを考えれば、将軍の権威を借りつつも教皇自身の手で改革を断行出来る方が望ましい。

マルティンの発言が教皇の権威弱体化を狙っている訳ではないと理解しつつ、ケレスティヌスは、そう判断した。ゆえに、

「心当たりは、ある。だが、彼らの罷免は私の権限で行わせて欲しい」とケレスティヌスは願い出る。

「確実に実行すると確約いただけるなら、問題はありませんよ。ですが、その場には私も立ち会わせていただきたい」

マルティンは、簡単な条件を付けて了承した。罷免が、クヴァルティス帝国も了承済みのことであると公に明示するには、その方が都合がよい。

「了承した。それでは、そのように」とケレスティヌスは初めて笑みを浮かべて見せた。

こうして、ダールバイの改革は始まった。

たが、新生ダールバイに向けて雲間から光が射したはずが、実は暗雲が近づいていたとは、この時の誰も気付くことは無かった。

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