プロローグ2
やがて3人が辿り着いたのは、円形をした塔だった。石を積み上げて構築された塔は、おそらく、この国でも1、2を争うほど古いものだった。この塔もまた牢として、高位の者を収監するために使われていた。
現在の塔の主は、ドミナス・カヴァリエリといった。
木製の扉の鍵をマルコが開き、先頭をマルコ、タルシオン、レーイの順で足を踏み入れる。そこには、螺旋状の階段が上方まで続いていた。
それを、3人は登り始める。
今度は石を叩く硬質な足音が響く。誰も何も話さなかった。マルコを除き、レーイとタルシオンは、この先に待ち構える人物と事態を承知していた。ゆえにマルコは、自分が巻き込まれているこの状況について知りたいと思っていたが、それが憚られる雰囲気を感じ取って、何も訊けずにいた。
やがて3人は階段の切れ目、つまり塔の上層部に辿り着いた。そこには木の扉があった。マルコがまた鍵を開ける。向こう側は薄暗い。その中に数人の気配が感じられた。こんな場所に集まる連中とは、どんな奴らなのか。マルコは興味を抱いた。
「お前はここで待っておれ」
タルシオンの指示にマルコは不服を感じたが、相手はこの国の最高位の術士である、抗うという考えは無かった。
「お気を付けて」
マルコの声を背に、レーイとタルシオンは扉の向こうに姿を消し、マルコを残して扉は閉じた。
3本の蝋燭の明かりの中、レーイと同年代の数人の少年少女が、寝台に横たわる髭の長い老人に祈りを捧げるように跪いていた。
「レーイ……どうしてここに……」
唖然とした少年の呟きが聞こえ、同時に子供たちがざわめいた。
「儂が許可したのだ」
タルシオンが言うと、子供たちはみな、押し黙る。
「レーイよ、ここに来なさい」
タルシオンが子供たちのすぐ隣へレーイを呼び寄せる。レーイは素直に従ったが、子供たちはレーイを敬遠するように身をよじった。
子供たちは、明らかにレーイを警戒しており、明らかに歓迎されてはいなかった。
「何しに来たのよ」
敵意剥き出しの少女の声は、突き刺すような鋭利さを持っていた。
「わたしは呼ばれただけ」
レーイが答える。
「あんたなんかに、ここに来る資格があると思ってるの?」
「資格のことを言うなら、お前にもないはずだ、イエッタ」
イエッタと呼ばれた少女は「なっ……」と絶句した。
「君たち、争っている場合か? 先生の容態が良くないこんな時に」
少年の声がレーイとイエッタを宥める。
イエッタは「判ったわよ」とそっぽを向き、レーイは無言のまま頷いた。