〜 残り44日 : 妹の洋服を買いに行ってたらデートになりました。 〜
「明日、修学旅行があります。」
「……。」
「はぁぁぁぁあっ!!?」
「ゆ、雪、お前突然だな!」
「すいません、昨日の格ゲーが楽しくてつい。」
「確かに楽しかったけど、それ、忘れる?」
「雪の中では 格ゲー > 修学旅行 なんだな…。」
「す、すいません……。」
「あ、あの…お兄さん………。」
「どうしたんだ?」
「そ、その…。」
「お、お洋服を買うのに一緒に来てもらえませんか…?」
「いいぜ、行こう ☆ 」
シスコン兄貴、イケボで即答。逆に迷う兄貴なんているのだろうか。洋服を選んでる妹の姿、絶対かわいい。この目に焼き付けてやらぁ!
「雪、どこで買いたいとかあるのか?」
「そうですね、やはり女子中学生といえばイヨンモールですかね。」
へー、やっぱ知ってるんだな。ちょっと意外。
「そういえば、文化祭の前に修学旅行あるんだな。」
「はい、今年は例年に比べて変則的らしいのです。」
「そっか。修学旅行、楽しめるといいな。」
「……。」
ん? 雪の元気がなくなった? そうか、以前文化祭の妹役について男子と揉めていたんだっけ。雪、クラスでうまくやってるのかな…
イヨンモールに到着。とりあえず、雪についていく。
「いらっしゃいませ〜」
「あら!あなたとても可愛らしいですね!」
「こちらは彼氏様ですか?」
「俺はお兄ちゃんだっ!!」
「あ…そ、そうでございましたか!」
「ご、ごゆっくりどうぞ〜! あはは〜」
「( 妹さんそんな風に見えないけど、こいつは絶対やばい。)」
女の子が好きそうなオシャレなお店に入った。かわいい洋服や、バッグ、アクセサリーまでも品揃えされていた。俺が1人で入ると警備員が出てくる場所である。今は妹がいるから大丈夫なのだが。
「(こ、これ! かわいい…。でもこれは高いです…。)」
「なんだ? それ、欲しいのか?」
「ひゃっ!?」
「えっ?」
「そ、そ、そういうわけではありません!」
「そうか?」
「タグ見てたから、値段が気になったのかなって思ったんだけど?」
「こ、これはその……」
「せ、生産国を見ていたのですっ!」
「え…?」
「あは…は…。」
「なんだよ、気を使うなよ。」
「欲しかったら欲しいって言っていいんだぞ?」
「お兄さん……」
「値段なんて気にすんなよ。雪らしくねぇぞ?」
「俺は雪の喜ぶ顔を見れるんだったら、いくらでも払うからさ。」
「……本当に 」
「本当にいいんですか?」
「ああ。見せてみなよ。」
「……なっ!!?」
「( 2万だと...!?)」
「( そんな大したことないと思ってたら諭吉2人前かっ!? 現代のJCこえーよっ!!)」
「お、お兄さん、やっぱり… 」
「すっーー、ふうぅーー。」
「レジ、行こうぜ ☆ 」
無理してイケボをかますシスコン兄貴。でも、よく考えたら雪が物を欲しいとねだるのって初めてだ。初めてにしちゃ割に合わない値段だが。なんだか今日はデートに行ったみたいだった。そう、兄妹デートっ!
「ふふん ♪ 」
「お兄さん! ありがとう!」
「あ、あれ? ……ございます。じゃないのか!?」
「ふふ ♪ 」
もしかすると雪も感じていたのかもしれない。
デートのように。
でも雪は俺を兄貴と捉えていたのだろうか?
それとも、まさか……
ま、いいか。なんだか俺も楽しかったし!
俺たちは家に帰宅後、すぐに雪の修学旅行の荷造りを始めた。前日に1からやり始める生徒は雪以外にいるのだろうか…
「…歯ブラシ、歯磨き粉、くし、ゴム……。」
「………」
「家ごと持ってっちゃえ!」
「できるかっ!」
「すんげーこと言うな雪!」
「まぁ、何か忘れても大丈夫でしょう。」
「…友達に…借りれば…。」
「ゆ、雪!?」
「な、なんですか? お兄さん、友達…いちゃ悪いですか?」
「はは、ちげーよ。」
「修学旅行、楽しんで来いよ!」
「はい!」
「…お兄さんも寂しかったら、来てもいいんですよ?」
「行かないよ。」
「な、なんで?」
「修学旅行ぐらい、友達と楽しく笑って、遊んで来い。」
「ふふ。」
「…バーカ。」
「何か言ったか?」
「何にもないですよ。」
「ほら、早く寝ましょう。」
「そうだな。」
こうして雪は明日の朝から修学旅行に行ってくる。雪と1日合えないのは俺にとっては想像も絶する苦痛だろう。
でも、雪が成長してくれるなら俺は嬉しい。笑顔で見送ってやりたい。
はぁ、1日えんまの野郎とお泊まりか…。仕方ねぇや。