〜 残り48日 : 妹の家(俺の家)に泊めてもらうことになりました。 〜
「カワイイ妹に追い返されて住むところないから、また天界に帰ってきた...ってところやな?」
「その通りでございます。えんまさん。」
「せやけど、そら難しい話やでぇ。」
「だよなぁー。」
「お前の妹からしたら突然家に変質者入っとるんやで?しかもそいつがお兄ちゃんとか。そら簡単にはいかんわい。」
「だけど俺が妹を愛する気持ちは変わらないっ!! 絶対に、絶対に、俺がお兄ちゃんだってこと、わからせてやる!」
残り48日。昨日は突然家に入ると追い返された。当たり前だが。何か別の作戦を考える必要がある...。
「そうだ!妹を24時間監視して困っているところを助けてやったらいいんじゃないか!?」
完全にストーカー。俺はもう犯罪者の思考だった。だがえんまが俺を天国に入れた以上、俺はもう下界でやりたい放題なんだっ!! えへへっ...さぁ、学校へ向かうぞ☆
「さて、雪ちゃーん、どこにいーるのかなー? …あれ、なんだ? 揉め事か?」
俺は浮遊して雪の通う中学校を徘徊していたわけだが、どうやら体育館の倉庫裏で複数人が何か揉め事をしているようだった。
「おい!お前、文化祭やる気あんのか!? ないんだったら妹役降りろ! お前以外にもやりたいって人はいっぱいいるんだぞ!」
「!?」
なんと、そこには雪がいた。雪を取り巻いて揉めているのだ。
「...ご、ごめんなさい。わ、わたし、まんまり上手じゃないよね...。...わかった、妹役やりたい人にやってもらうよ。」
「最初からそうしろってんの。お前みたいにハキハキ喋れないやつに、キャストは無理なんだ!」
「そうそう、まずは喋れるようになってから、文化祭に参加するんだな!」
俺は完全にキレた。今すぐこいつらをぶん殴りたかった。俺は知っている。雪が文化祭を楽しみにしていて、俺が死ぬ前、雪はとびっきりの演技を俺に見せてくれた。心から楽しそうだった。俺の気持ちも和んだんだ。きっと俺が死んだショックで雪は人前で話すことが苦手になってしまったんだ。心が痛い。
そうだ、シスコン兄貴よ、冷静になれ。ここで雪をかっこよく助けることが出来れば、雪に俺はお兄ちゃんだって分かってもらえるかもしれないんじゃ...? とりあえずこんな感じでと。
「おい!お前ら!女の子に何してんだ!」
「あ、あなたは昨日の幽霊さん。」
「お前誰だよ。」
「そんなことはいい、俺は雪が文化祭を楽しみにしていて、妹役に強い気持ちを持っていることを知ってるんだ!」
「そんなもん知らねーよ。できないんだったら降りろって言ってんの。」
「今出来なくたっていいじゃないか!練習して、本番、出来るようになったら十分じゃないか!」
「は? もういい、やっちまえ!」
ここで俺がこいつらを返り討ちにして、雪に俺がお兄ちゃんだってことをわからせてやるんだ。ふふふ、良い考えだ。
よし、いざ決行だ!
「おい!お前ら!女の子に何してんだ!」
「あ、あなたは昨日の変質者。」
「お前誰だよ。」
「そんなことはいい、俺は雪が文化祭を楽しみにしていて、妹役に強い気持ちを持っていることを知ってるんだ!」
「そんなもん知らねーよ。できないんだったら降りろって言ってんの。」
「今出来なくたっていいじゃないか!練習して、本番、出来るようになったら十分じゃないか!」
「は? もういい、やっちまえ!」
「ガハッ!ぼふっ、うぇ!いやァァァア!」
「ちっ、行こうぜ。」
俺は見事にこっ酷くやられた。やってしまった。雪を助けるどころか、雪にボコボコにされているところを見られてしまった。
「.....変質者さん、大丈夫ですか? あの2人、空手の全国大会の優勝・準優勝者で、世界大会まで出場してるんです。」
「そんな設定知らんわっ!! てか、変質者やめろ!」
「でも、ありがとう...ございます。」
「雪...。」
「...なぜ、わたしが文化祭を楽しみにしている事、知っているのですか?」
「あぁ、俺が死ぬ前に、雪が俺に見せてくれたんだよ。心からの演技をな。...と言っても分かんねーよな。雪の顔見てたら分かる...じゃダメか?」
「そ、そうですか...。ダメですよね、わたし。人前で喋る事が苦手で...。向いてないってわかるんです。」
「俺が死ぬ前の雪は、もっと俺にも人前でも明るかったんだ...。お前が変わってしまったのは俺のせいなんだ。兄貴である俺が死んでしまったから...。」
「なんで全部自分のせいにするんですか? わたしが自分を出せないから、自分を出すのが怖いからなんですよ...。変質者さんは悪くありません。私の問題なのです...。」
「...そっか、じゃあ練習しようよ!俺たち2人で。」
「えっ?」
「俺が、雪に自分を出すことの面白さを教えてあげるよ! な、いいだろ!?」
「...わかりました。頑張ってみます。」
「よし、じゃあ頑張ろうなっ!」
ひとまず、雪と練習をする約束を交わすことができた。これから兄と妹の仲が深まっていけばいい。
「じゃ、俺帰るわ。雪、...頭上に気を付けて帰れよ。」
「変質者さん...帰るところ、あるんですか?」
「下界には無いから天界に行くんだよ。」
「そんな、下界には無いって悲しいじゃないですか...。」
「うーん、だって死んでるんだし仕方ないよ。」
「あの...わたしのうちで良ければ...その...泊まりますか?」
「えっ、いいのか?」
思わぬ収穫であった。雪と練習をする約束を交わせただけでも大きいのに、家に泊めてもらうことまでできるとは。ま、もともと俺の家なんだが。
残り48日、魂になって2日目、俺は少し雪との距離を縮めることができた気がする。




