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タルル平原

めちゃくちゃ久しぶりの更新になってしまいました・・・

樹液採取に時間を取られたものの、まだ日が昇り始め鳥がさえずり始めた頃だった。

目的地はフローの森を抜けた先の平原。あと十分も歩けば到着する辺りに差し掛かっていた。

もう足元を照らしていたライトヒールの光も必要無い。

彩羽(いろは)は今まで適度にかけ直していた詠唱を止める。


「さすがにまだ人は来ていないのかな??」

さくっさくっと歩みを進める足に触れる草が朝露に濡れたままなのを見て、そう言う。

このタルル平原は武器強化に必要な素材を持つモンスターしか出ない時間帯がある。

その為他のジョブ―――彩羽(いろは)の様に回復特化ではなく攻撃特化の魔導師や騎士、狩人

シーフ(とはいっても盗みは行わない…盗人の様に素早いという意味だ)様々な者がやって来るのだ。


モンスターと戦う為、今の彩羽(いろは)はジョブで言うとシーフになる。

三体から四体の群れで必ず現れる為、一人で倒しきれないという事はないが

正直他の人達と一緒に倒す方が効率的ではある。

しかし、人が集まる時間帯は逆に人が多すぎて手取り分が少なくなってしまうのだ。

適度な人数という時間帯が彩羽が動ける時間帯には見つけられず、また森近くにひっそり住むくらいなので人でガヤガヤした場所にはあまり出たくないと言うのもあって、多少時間はかかるものの

気を遣わずに済む早朝にこの場所に来ているのだ。


『グォォォォォォ』

ガーゴイルの群れが突如として現れる。無機質で硬いガーゴイルの欠片は武器強化に最適の素材。

薬草等の素材集めももちろん大切なのだが、弱い武器でモンスターと戦うのもなかなかしんどい。

この双剣も出来うる限りの強化は施してはいるものの、もう一段階強化を武器屋に頼むつもりだった。

その後の強化は自分でしなければならないので大量に素材が必要なのだ。

彩羽の瞳がやる気に満ちている。


シュッ

ガーゴイルの攻撃を受ける前に仕掛けていく。

しかし、強化が必要と思っている武器だ・・・一撃では沈められない。

ガーゴイルは四体出現している。一体につきニ撃ではかなり時間がかかってしまう。

普通にそうしているシーフも何度かみかけたけれど彩羽は普段使っている双剣とは別の双剣を取り出す。

刃がスペードの様な形になっている双剣だ。この武器特有の必殺技を打つと全体ダメージを与えられるというものだ。全体なので威力は落ちるものの八撃かかるところを五撃に減らす事は出来る。

ガーゴイル達の攻撃を少し食らいながらも必殺技の構えをとる。

『舞い散れ!!ジョーカーステップ!!』

手前で腕をクロスさせ、伸ばす勢いを風圧に変える。

「あ、この剣攻撃食らう前に使っていたら攻撃威力あがる効果あったんだった・・・」

その発動条件が無傷の状態である事、なので思い出したはいいものの今となっては遅かった。


シュパァァァァァッ

ガーゴイル達にそれぞれHP半分ほどのダメージを与えられた。

それにより、最初に攻撃をしていたガーゴイル一体倒れる。


「ま、いっか。回数は変わらないもんね」

力を失ったガーゴイルは欠片になり落ちるがまだ拾いに行けない。

一度放った必殺技は再び使えるまで多少時間が必要になる。

魔力ではないがその武器を使う為の特殊な力も使用しているので何度も使えない。

使えるまで回復を待っている間に普通の攻撃で倒しきってしまうくらいなので一度しか使えない、という認識だ。


さて、二体目を・・・と武器を持ち替えるのも面倒だし時間のロスなので

そのまま攻撃をしようと思ったらその攻撃は空を切った。

「え??」

気が付いたら隣に長い金髪を靡かせる者―――騎士がそこに居た。

そう、彩羽が攻撃をする前にその者が二体目のガーゴイルを倒したのだった。

そして彩羽が三体目に刃を向ける。また攻撃が被るかと思いきや手応えがあった。

騎士は彩羽のターゲットを見越して四体を仕留めていたのだった。

複数が戦闘を共にするとターゲットが同じになり攻撃が空振りになったりする事は多々ある。

シーフは素早いので同職も他職もあまり気にしない人も多いのか、今の様にターゲットを変更するという事は稀なのだ。

変更するとしても同じメンバーで戦って、倒す順番や繰り出す必殺技等その人の戦闘でのクセを見てから、という事がほとんどなので、初対面でこの行動に出くわすとは思わなかった彩羽は目をパチクリさせたままだった。


「えっと・・・いきなり参加してごめんね。ここでの私の取り分は一体分で構わないかな??」

金髪の騎士が呆然としていた彩羽に声をかける。

「あっ!!すみません、ぼーっとしちゃって・・・。いえ、助かりましたっ。どうぞ。」

彩羽はガーゴイルのカケラを拾い集め、騎士に一体分のカケラを手渡す。

「もう少し集めようと思うんだけど、ご一緒しても??」

受け取ったカケラを手作りの様な巾着にしまい、騎士が柔らかな声色で尋ねてきた。

初対面ではどうしても緊張してしまう彩羽なのだが、なぜかこの人には警戒心を持たなかった。

「ぜひ、お時間合うなら宜しくお願いしますっ」


そうして三十分程、二人で黙々とカケラを集めた。

知り合ってお喋りを楽しみながら採集をする人達もいるが

ほとんどはわたし達の様に最初の挨拶程度なのだ。


「ふぅ。ひとまず終わり、ですね。ありがとう。助かりました。

しかしあんなにレアモンスターも出てくれるとは!!

お疲れ様。また・・・があったらまた、ね。」

戦闘で出会ってもまた同じ様に出くわす事は、なかなか無いので騎士はこんな言い回しで

そう言って、タルル平原の端に設けられた各街への帰還の魔法陣に乗って去っていった。

王国が兵士を見張りに立たせ国民の為に設置した、無料で使用可能なとても便利な設備である。

彩羽は別れる前に、助けられたこの騎士にこっそり感謝の気持ちを込めて

一日一度贈れるボタンを届ける様に兵士にお願いしておいた。


いや、こっそりというのは別に知られたくないからではないが本人を目の前に贈るのは

気恥ずかしかったりするのだ。届けた時に誰からかは分かるのは問題ではない。


彩羽は、再びフローの森へ足を向ける。

「また、会えるといいな」

ポソリと無自覚に呟く。

綺麗な金色の髪だった。その瞳も同じ金色で猫の目の様にも見えた。

あの色は、きっとしばらく忘れられないだろう。

再会できたなら、それはきっと運命―――。

そんな乙女な思考回路を展開させているところに

ぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ

と豪快にお腹の音が響いた。


「さすがに、お腹空いた・・・」


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