表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
BioGraphyOnline  作者: ツリー
BGO外伝 変態国王と戦う歌姫 雪解けナスのペペロンチーノ添え
170/171

外伝の3 パンが無ければパンツを食べれば良いのである

 2度ある事は3度ある、わしじゃよ冒険者諸君


 我の名前はグラフ三世

 元素にして最強の賢者の血を受け継ぐ名誉あるグラフ王国の国王にして、孤独に愛された悲劇の国王でもある


 そんな我であるが、現在は牢獄に監禁されておる

 恐らく我の頭脳を恐れた者の謀略であろう、でなければ犯罪報告件数が他国より圧倒的に少ない我が国の牢獄に入る事などありはしない


 最初は入る事に抵抗があったが、もとより暗くて狭い所が好きだった我にとってはむしろ快適だという事に気が付き、今ではバカンス気分で過ごしている


 そうであった!ここには我以外にももう一人仲間がおる


 我は同じ牢の中でずっと天井を見ている仲間に視線を向ける


 このクソ暑い時期に分厚い防寒具、サングラスという不釣り合いな恰好

 おまけに冒険者の国で使われているマスクなる物を装備しておる


 彼の名前はヘンシー・ツシヤ、かつてこの国で変質行為をしようとした不届き者じゃが

 話を聞くと今は自分から牢屋に入っているらしい、なんでも半裸の巨漢から逃げてるとかなんとか


 天才の我に変態の思考等わかる筈もない為、訳のわからない事このうえないが・・・

 何故だか妙に親近感が湧くのである


「ヘンシーよ、折角じゃからアズたんの話でもせんか?」

『こっちくんな変態!』


 今ではこのように軽口を叩けるくらいには打ち解けているのである

 若干強く言われてる気がしないでもないが、きっとしゃべるのに慣れてないのであるな


 そんなヘンシーは我が近づいてこないとわかると、暗い表情でポツリと呟く


『それにしても・・・腹減ったなぁ・・・』

「そういえば今日もまだ食事が運ばれてこないであるな」


 そう、かれこれ三日程食事が運ばれてこないのだ


「このまま餓死なんて・・・いやだなぁ・・・」


 何やらヘンシーがウジウジしだした

 ここは最強の頭脳を持ちし我の出番であるな


「ヘンシーよ、知っておるか?冒険者の国にはこういうことわざがある」

『ことわざ・・・?』

「うむ、パンがなければパンツを食べれば良いじゃないか・・・とな」


 うろ覚えであるが、パンの変わりに食べる物等パンツしかあるまい


 ヘンシーが青い顔をしながら我から距離を取る

 今更我の威光に慄いてどうするのであるか


「まぁ今ここにはパンツすらないのであるがな!HAHAHA!」


 我のジョークを聞いてヘンシーがずるずるとへたり込んでしまった

 少し高貴過ぎたであるかな?


「しかし本当に食事が来ぬな・・・」

「それは国が大変な事になっているからデース」


 我の言葉に返事をするかのように、赤い貴族服の男が階段を降りてくる


「マーク!貴様!よくも我の前に顔を出せたな!」


 マークは我の怒気に一切怯む事無く近づいてくる


「誤解デース陛下、いち早く異変に気がついた私が陛下を安全な場所に送りこんだのデース」

「む?そうであったか!ならば許す」

「・・・牢屋に入ってる陛下は傑作デース!とか思ってないデース」


 最後の方は聞き取れなかったが、恐らく我の事を案じているのであろう


「それで上では何が起きておるのだ?」

「七つの大罪の封印が解かれマーシタ」

「なんじゃと!?」


 七つの大罪といえば、小食、勤勉、無心、無欲、等々、かつてこの世界を滅びに導こうとした大罪人ではないか!?そんな者の封印が解かれたじゃと!?

 という事は、マークのやつ我が無事か確認しに来たという所であるか、見上げた忠臣である


「マークよ、大義である」

「勿体なきお言葉デース、ご理解して頂けたのであれば少し奥に詰めてくだサーイ」


 そう言いながらマークが牢屋の中に入って来る


「なぜ牢屋に入るのであるか?」

「そんなのここの方が安全だからに決まってマース、今上では小食の罪に憑りつかれた少女が大暴れしているのデース」


 なるほど、ここの牢屋は暗くてジメジメしてはいるが、オリハルゴンで出来ているのであった

 それに小食は食べ物が多い所に出没する、牢屋に来る事などないであるか


 納得したように頷いていると、空気になりつつあったヘンシーが慌てだす


『お、おい!小食を退治しにいかなくて良いのか!?』

「わざわざ死地に赴く程等愚の骨頂である」

「流石陛下デース」

『あんたら本当にこの国の重鎮なのか!?』


 おっと、我とマークの機転で、さっきまであんなに暗かったヘンシーがこんなに元気になったである


「しかしそうなるともうしばらくは牢暮らしであるな、マークよ、何か暇を潰す方法は無いであるか?」

「でしたら昔話をしてはいかがでショー?」


 なるほど、面白い提案である

 ここは我の偉大さを再確認する為にも、我の昔話をするべきであろう


「コホン、それでは話は我が産まれた時に遡るのである」


 ・・・


 狭く、しかし綺麗な部屋の中を、何人もの女が慌ただしく走り回る

 それもその筈、今日は我という国の宝が産まれたのである


『奥様!無事お生まれになられました!元気な男の・・・子?』

『まぁ!可愛い私の息・・・子?』


 今しがた産まれたグラフの王子事我

 産まれたばかりだというのに見事なちょび髭とギャランドゥを携え、その形容はさながら・・・


『『『『誰だこのおっさん!?』』』』


 母上含め、そこにいた給仕や乳母が皆一様に我の姿に見惚れてしまったそうである


 ・・・


『いやそれ絶対見惚れたわけじゃねぇだろ!?』

「何を言っておるのだ?これだから変態は・・・」


 ヘンシーが頭を抱えておるが、我は続きを話したいので無視するのである


「しかしそんな我にも問題があったのである」

『・・・すでに問題があったよな?』

「その問題とは・・・」


 ・・・


『奥様!大変です!この赤子?泣きませぬ!』

『何ですって!?』


 そう、産まれたばかりの赤子は泣く事によって酸素を補給するのであるが、我は泣こうともしなかったのである


 故に給仕や乳母から滅茶苦茶叩かれたらしいであるが、これも愛故であるな

 殴られながらしばらくすると、我は口をパクパクしだしたそうである


「お・・・・お・・・」

『『『おお!?』』』


 遂に泣くのか!?と、若干涙目になっていた皆の者が期待の眼差しを向ける中、我は威風堂々とこの世の心理を口にしたのである


「おっぱいである」


 ・・・


『ふざっけんなぁ!!!』

「ふざけてなどおらぬである、そしてそのあまりの高貴さと知性溢れるセリフにより我は城の奥に隔離され、様々な検査を受けたのである」


 天才の身体を調べるのは道理であるな


『いや、それ気持ち悪いから隔離されて本当に王様の子供が検査されてたんじゃ』

「はっはっは!ヘンシーは冗談が上手いであるな!」


 何やらヘンシーがブツブツ言っておるが、我は話の続きをしたいのである


「まぁそういう事もあり我は一人でいる事が多くてな、そんな我を不憫に思ったのか父上がこのマークを傍仕えとして置いてくれたのである」


 マークのやつが得意げにフフンと髪を搔き上げておる


『あんた・・・よくあんなのの傍仕えとか受けたな』

「ミーもまだ小さい頃の話デース、それに傍仕えと言っても怪しい行動をしたら即殺すように言われてマーシタ」

『それ見張りじゃね!?』


 今日は本当にヘンシージョークが神がかっているである

 我は親指を中指と薬指の間に入れ、冒険者風にグッジョブサインを送っておく


『というか現在進行形で酷い惨状だし、なんで殺さないんだ?』

「陛下は悪運と知恵は働きますからね、ことごとく失敗しマーシタ」

『あんた本当に家臣なんだよな!?』


 ヘンシーが頭を抱えながら我とマークを見比べだす


「ええい!いつまで二人でこそこそ話しておる!我の話の続きにいくであるぞ!」


 ただでさえ天才故に疎ましく思われる事もあった我

 しかしそれでも王族の子、ただ平和的に生活をしていれば誰も文句をいう事は無い


「であるが・・・我は弾けた」


 我が動く事を良く思わない者が多い事は重々承知していたであるが、探究心のほうが勝ったのである

 我は度々心理の探究の為に更衣室を覗いたり色々な事をしては、食事抜きでお仕置き部屋に連行されたである


 お仕置き部屋と言ってもムチで殴られたりするわけではないである、ただ何も無い倉庫らしき場所に三日ほど閉じ込められだけである


 いつものように研究を行い閉じ込められ、空腹で過ごしていたある日、青い髪の少女が我の前に現れたのである

 その時我は初めて冒険者と、パンがなければパンツを食べれば良いということわざと知る事になったのである


「あの時少女に貰った・・・何を貰ったかは覚えていないであるが、確かパンツであったな、兎に角美味しかった」

『ぜってぇちげぇよ!?』

「そしてその時少女の髪の毛を手に入れてな、今でも肌身離さず持っておる」

『聞けよ!というかただただ気持ち悪いんだが!?』


 今にして思えばあれが初恋だったのであるな

 そういえばあの時の少女はアズたんに似ていた気がするが・・・アズたんは冒険者だから有り得ないであるな


「しかしふむ、アズたん・・・パンツ・・・?っは!」


 我は電撃が走ったかのように立ち上がる


「オーウ!?どうされました陛下?」

「我はまだアズたんのパンツを食べておらん!」

『え?は?』


 我は戸惑うヘンシーと、悟った目をするマークを無視して牢屋の構成を把握、分解していく


「陛下、上には今少食の罪が・・・」

「マークよ・・・少食の前でパンツを食ったらどうなると思う?」

「・・・想像もつきまセーン」


 であろうな、マークも賢くはあるが凡才に変わりない


「アズたんよ、今行くである!」




 その後、しばらくの間グラフ王国でグラフ王が指名手配される事になったが、それはまた別の話

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ