第㊙の7の6 チョコレート大戦争
「鬼策士様!ギフト隊によってお味方どんどん増えてきています!」
「よし!このまま一気に巻き返すぞ!」
俺は報告に来た秋の国の兵士に軽い指示を出して更に進軍
すると遥か上空から賢者さんの声が鳴り響く
『ぬぉぉ!?このクックドゥーが力負けしておるだとぅ!?』
頭上では巨大人形とチョコ魔神が掴み合って大変な事になっている
あっ!人形の腕がチョコ魔神目掛けて飛んでいった!何あれ!?ロケットパンチ!?
・・・片腕になったせいで更に劣勢になってるじゃないか
まぁ良い、タイミング的には狙ったかのようにバッチリだ
「グレイ、イタンが見えてきたがアレの準備は出来てるのか?」
「・・・出来てる、というかもうとっくにスタンバイしてるみたいだぞ?」
「そうか・・・まだ就業時間だったと思うんだけどなぁ」
俺は遠い目をしながら虹水晶改を地面に叩きつける
割れると同時に虹水晶改はもくもくとど派手な演出をかましだす
流石に派手すぎたのか、こちらに気づいたイタンが手を振りかぶる
するとチョコ魔神の体からトゲトゲが出現して俺達に向かって飛んでくる
しかしそのトゲトゲは俺達に届く事無くバターのように溶け、残った部分は続く刀によってフォークのように突き刺される
この虹水晶改、高いコストのかわりに特定の人物を確定で召喚する事が出来る代物なのだが・・・
出現と同時にトゲトゲ弾幕を平らげた捕食者は、それでは足りないとばかりに金色の残光残してチョコレート魔神の足でメルトダウン、浴びるようにチョコレートを捕食
流石のチョコ魔神も驚いたのか、体をよじらせるように捕食者に硬い板チョコ部を押し付けようとして・・・片手で止められている
そして捕食者が軽く力を込めると、ビキビキと音をたてて板チョコ装甲が破損、内部から噴水のようにチョコが溢れ出す
その様子を見た捕食者は歓喜に身を震わせながら流れるチョコを啜り、チョコを溶かして刀で突き刺す
その間に体勢を整えた人形が追撃のアッパー
チョコ魔神が盛大にチョコ飛沫をあげてよろめく
俺はそんな怪物戦争を見ながら、突き刺したチョコ魔神を捕食するルピーの姿に戦慄する
今回の俺の隠し玉の一つ、グラディエータールピー先生
「見る人が見たら一生分のトラウマだぞ・・・」
返りチョを浴びながらチョコ魔神を捕食するルピーさんはちょっと、いや、かなりホラーだ
先日のチョコレート平らげ事件の時に食べた量から、もしかしたらルピーさんなら全部食べてくれるんじゃね?と思ったのだが・・・
無限にも思えるチョコの塊を黙々と解体していくルピー大先生を見て吐き気を抑える
「いくら甘い物が好きな俺でも、あれを見たら流石に気分が・・・うっぷ・・・」
恐らく最初から彼女がいたらチョコ魔神による被害は少なかっただろう
そんな彼女が遅れた理由は単純、仕事だったはずだからだ
明らかに就業時刻よりはやい到着、今頃所長はかんかんに怒ってるだろうな
「というかすごいな、チョコ魔神の装甲を簡単に切り裂いてるぞ?」
「あれはヒートブレードってやつかしら?刀に熱がこもって見えるわ、板チョコも簡単に割れてる風に見えるけど、割れやすいように内部を一部溶かしてるみたいね?」
いつの間にか杖の後ろで俺にしがみつき、解説を入れるAKIHOを叩き落とす
この人は毎度どうやって俺の背後をとっているんだ
しかしクスクスと笑うAKIHOの目は珍しく俺を見ておらず、まるで獲物を見つけたようにイタンを見ている
「今日はアレを解体すれば良いのね?」
「あ、はい、やっちゃってください」
素直に頷いておく
イタンがチョコレートの源泉を封じてチョコレートの製造が困難になった翌日
俺が何気なく呟いた「前のイベントではカカオの実があったのになー」という発言を受け興味を抱いたAKIHOにスクショを見せた所、「あら?それならいっぱいあるじゃない?」とファンの群れに突撃、会場に血の雨をふらせた
ちなみにファンの血で作られたブラッドチョコレートは悪魔種に大人気だ
正直血の味を覚えた悪魔種がいつかやらかすんじゃないかと邪推している
そんな事を考えていると、AKIHOが陽炎を残しながらイタンに斬りかかる
イタンはダなんとかが使っていたシャドーなんちゃらで分裂、影と実体でAKIHOを力任せに吹き飛ばす
「何だあいつ?前回より強いぞ?」
正確に言うとキなんちゃらの強さが元に戻ってるのか?
しかしいくら最強冒険者の一角の力を出したところで・・・
「さて、暴徒は鎮圧傾向に加えチョコ魔神は実質無力化、どうするんだ?嫉妬の化身様よ?」
剣戟を繰り広げる二人から少し離れた所で挑発的な笑みを浮かべる
所詮は一人の力・・・俺・・・俺達皆の絆の力には勝てない!
俺の戦勝モードが伝わったのか、仲間達の空気が緩み、イタンが悔しそうに顔を歪める
「ところでアズ、俺が知る限りほとんどの女冒険者がギフト隊にいるが誰が作ってるんだ?」
俺は険しい顔でグレイを見る
・・・気づかれたか、どうでも良い所で勘が良いなコイツは
「作ってるのは円卓の騎士メンバー筆頭の洗脳されていない男性陣だ」
グレイが滅茶苦茶嫌そうな顔をしている
一部を覗き、女子がチョコをあげないと洗脳が解けないのだ、仕方ないだろう
全く、何も知らずに夢を見ていれば良いものを
「ふぅん!良い事を聞いたぞ!」
俺の発言を聞いたイタンがニヤリと笑みを浮かべる
「聞いたか雑魚共!そのチョコは男共の手作りだとよぉ!」
イタンが叫ぶと同時に黒いもやが噴出、洗脳が解けた男達の一部の目が虚ろに・・・
なんでグレイまで虚ろになってんだよ!
あ、でもその方がイタンが弱体化されるから良いのか?
俺が邪推していると、案の定イタンが大慌てでグレイに補足する
「そこのお前は好意を抱いている者から直接貰っただろう!?」
「っは!そうだ俺の場合はサトミさんの手作り・・・のはず、大丈夫・・・大丈夫の筈だ!」
ちっ!感づきやがった
「いや!騙されるなグレイ!サトミ姉は料理は作るがお菓子は作らん!」
「何を言う!嫉妬の化身として断言する!あれはあの者が作った手作り!我が嫉妬センサーがビンビンに反応しておるぞ!」
「あぁん?仮にサトミ姉が作ったとしてサトミ姉が恋愛感情を持って作ったとお前の嫉妬センサーは言ってんのぉ?」
「ぐぅ!?断言しよう!わわわ我が嫉妬せせせんさーにかけて」
「ほら嘘だ!目逸したよな?それとも嫉妬センサー(笑)って認めんの?」
「んだとぉこのクソガキィィィィ!!!!」
イタンがAKIHOを無視してツーハンドソードで斬りかかってくる
はん!怒りに任せた攻撃なんて簡単に捌けるぜ!
俺とイタンは武器を交えながら睨み合う
「お前らなんなの?なんで俺を押し付けあってんの?」
「「だってお前いると邪魔だし・・・」」
俺とイタンの声がハモりグレイが喚きだすが無視だ無視
寝返った裏切り者達のせいで自軍が大変なんだ、構ってあげる暇は無い
ヤバい・・・遠目で見た感じでも軍の8割方持ってかれてる!?どうすんだこれ!?
イタンは俺の焦った様子に笑みを濃くする
「フハハハハ!感情に惑わされる愚かな人間共に相応しい末路よ!」
冷静さを取り戻したイタンに軽く吹き飛ばされてHPが半分以上消し飛ぶ
「ぐぅ・・・だから前線には出たく・・・んん?あっ!?グレイ!退避!あ!おま!?何ですでに安全圏まで逃げてんだ!?」
「フハハ!有象無象の雑魚が!この我をここまでこけに・・・んん?」
イタンは大慌てで逃げる俺を追撃しようとしたが、背後を振り向いて硬直する
「皆ー!逃げろー!!!チョコ魔神が倒壊するぞー!!??」




