命の時計が果てる時
チクタク、と小さな音がどこからか聴こえてくる。
それが自分の心臓の鼓動だと気がつくには、しばらくかかった。
「鈍いな、僕は」
自嘲の笑みを浮かべながら、僕はゆっくりと首を巡らせる。朝が近いのだろう、カーテンの向こうはほんのりと明るい。
息が苦しいということはなく。
胸が痛いということもない。
枕元の計器類はブルーの数字を示し、ただ正常値のレンジにあるという事だけが分かる。
そう、生きているというだけなら正常だ。
呼吸と心拍を繰り返し、意識があるというだけなら正常だ。
だけど、もう後どれくらい、僕はこうしているのだろう。
ベッドという白い砂漠に横たわり、仕方ないとため息をつく。そんな毎日の繰り返しは、生きていると言えるのか。
チクタクという音は、僕の心臓の鼓動だ。
自分で止めてもいいのかな、とふと思い、その考えを噛み締める。
「まだ早いんじゃないか」
それが可能だとしても。
「それでもオプションとして」
心のどこかに留めておこうか。
そう、時計の秒針を止める権利くらいは、きっと僕もまだ持っているだろうから。