第28話 花吹雪と流星と
28話です。一挙投稿ラストです。よろしくお願いします。
真昼の生徒会の誘い(未然)を承諾したロキは、その後、来る夕方への作戦会議を開いた。無論、昼休みは有限かつ、長々と話す暇はなかったので手短に。
まず、ロキの参戦を確定事項とした上での会議。その中で最初に立候補したのは、他でもない――先程虐められていた本人であるヴァレオだった。毛並みを逆立てているのか、初対面時よりも面積が増しているように見えた。
彼の真剣な眼差しは、決して獣人種とは言わせない――まさに、獣の双眸であった。
「この騒動の発端はぼくなんだ。一件を収拾するために戦いたいよ」
「そうか……、でも、大丈夫なのか? さっきは、防戦一方だったが」
心配ないよ、とヴァレオが首を横に振る。口調は穏やかだ。しかし、込められた想いが滲み出ているような言葉だった。
「言ったよね。――ぼくにはまだ秘策が残っているって。まあ、秘策と言ってもぼくの通常攻撃の手段なんだけど」
「……あまり焦らすのも俺としては良くないが」
「何はともあれ、今はヴァレオ君に賭けてみるべきなんじゃないかな、ロキ君」
介入してくるシグルーン。ロキは、慎重な判断を下そうと、気を静める。
――いや、沈着する必要は皆無だったのかもしれない。
「ふふふ、ヴァレオさんの眼は嘘を吐いていないようですわ」
「眼……、嘘を吐いていない……? どういうこと、クレオネラさん?」
麗しい微笑みの後、マリアの問いかけに彼女は答えた。
「目は口ほどに物を言う、とはよく言うものですわよ?」
確かに、とロキが呟く。
所詮ことわざだが、ヴァレオの表情に迷いはない。
それに、好奇心程度で、彼の秘策に目を奪われている一面もあった。
「よし、決めた。ヴァレオ――よろしく頼む」
「うん。尽力するよ」
固い握手を交わし、契約成立。
残りは1人。と、そこで立候補したのは、2人である。
マリアとクレオネラだ。
だが、この選択は比較的容易だった。
「マリア、今回は裏方頼む」
「何と即答!?」
驚きを隠せず、飛び上がるマリア。一同の動きが怯んだところで、ロキを指差し。
「わたしの方が仕事できるって! お兄ちゃん、兄妹の仲でしょ!?」
「何だその、『わたし達、友達でしょ?』なノリは。友達だからってやって良いこと悪いことあろのと同じで、兄妹の仲でも善悪の判断は大事なんだ」
「え……うん、すいません。――って、なんでわたしが説教されているの!?」
遅すぎる気付きに、ロキは頭を抱える。
この妹、お先真っ暗だよ……。
まわりの苦笑も相乗され、『マリアちゃんって残念な子』な痛々しい視線も飛び交っている。
当の妹分もそのことに察したのか、ロキの横で頭を抱えた。「いいよどうせわたしはわるいこだからいたいこだからおにいちゃんだいすきっこだからまいだーりんおにいちゃんさいこううふふふふふ……」なんてぶつぶつと呟いている。病んでいる。末期症状か。
「ともかく、俺が言いたいのはな、クレオネラが手伝ってくれるなら、それに従うのも手だな、ってことだ。そして、今一度言うぞ愚妹。お前にも裏方の――というか責任重大な大仕事を任せるから」
「……本当?」
ああ、と返す。
彼女は上目遣いだが、何故だろう、ここ数年で耐性がついてきた。
これが兄妹たるもの本来の『妹を女としてみない』精神なのだろうか。
兄歴13年で悟りを開けるわけもなく。
だが、マリアについては、『兄妹関係? なにそれ美味しいの? 義理だからなんでもありでしょ!?』という豪快な心構えだ。
故に、今も急に機嫌を直しては、ロキの腕に絡み付いてくる。無い胸を押し付けようが、腕の血管が圧迫されるだけなんですよねいい加減気が付けよ。
「まあ、こんなグダグダな感じで終わったけど。最終的な結論で、クレオネラに出てもらうことにするよ」
「ええ、わかりました。――粉骨砕身させて頂きますわ」
新緑の垂れ目に、一瞬、燃え滾るような焔を幻視する。
見た目からのギャップにロキは――いや、一同が息を呑む。
「やってやりますわ! 打倒、サイシスですわ!」
声を張り上げる威勢の良いクレオネラは、外見の印象に反していながら、途轍もないインパクトを放っているのだった。
第28話 花吹雪と流星と
そして、来る放課後。
聖術学院中央棟前、校舎へと続く幅広い煉瓦道にて、決闘の火蓋は落とされようとしていた。
春先の温暖な気候により、路端に植えられた木々の花々が満開を迎えている。そして、暖かな風によって花弁が散りゆく――その光景は、風情あるものだ。
だが――彼らの存在は異質なものだろう。
熱気が滲み出る『戦場』と化した煉瓦道にはいつしか、好奇の人だかりが出来上がっていた。
さすが、生徒数が伊達じゃないのに、情報伝達の速さときたら光をも凌駕するのではないだろうか。
「さて、最初の勝負と行こうかー、と思ったけど、君かい、子犬クン?」
「うん。ぼくが相手だ」
「クッ、ハハ! 全く、ロキも人選ミスが過ぎるなぁ……興醒めだよ」
あからさまなサイシスの挑発に、グギギ、と奥歯を噛み締めるヴァレオの姿がそこにあった。
そこまで卑下されたら、誰でも悔しいだろう。許せないだろう。
唯一、ロキに関しては達観したような面持ちで、はたまた過剰な挑発を行うサイシスを憐れむ視線で眺めていた。
――食堂での作戦会議の後、個人的にヴァレオとの会話を実践したロキだったが、そのときに彼の秘策について簡単な説明を受けていたのだ。
それを耳にした途端、ヴァレオに対する不安の種は刈られたのである。
「ヴァレオ。挑発を気にしすぎだ。感情昂らせて理性まで失うなよ」
「……ごめん、ロキくん。あともう少しでぼくが大量殺戮兵器になるところだったよ」
「やはりお前は奇っ怪だな、ヴァレオ。発言が物騒極まりないぞ」
「それほどでも」「褒めてないぞ」
いつしか、阿吽の呼吸な会話が成立している男2人。
緊張がほぐれたのだろう、ヴァレオは爽やかに笑ってみせる。
子犬の愛嬌は、性別関係なしで見るものを癒やしてくれる。
ロキ陣営の緊張は彼の笑みでほぼ完全にほぐれた。
――まあ、この後に繰り出される『秘策』とのギャップが激しすぎるがな。
内心の苦笑だ。
だが、ロキは感情を表に出さず、振り返るヴァレオに親指を真上に突き上げたグーサインを出す。
行ってこい、の合図だ。
「頑張ってこいよ、ヴァレオ――一撃で終わらせてこい」
「うん、力の限りを尽くすよ――その一瞬にね」
2人、声を合わせて健闘を祈る。
そんな光景を嘲笑混じりで俯瞰するのが、サイシス率いる貴族3人衆だ。
「ハハハハッッ! 全く、男同士の友情ってのは汗臭いものだねぇ、ロキ」
「黙っておけよ、下衆貴族。早くそっちもオーダーを出せよ」
まあ、そう焦るなよ。笑いが収まらぬまま、サイシスは、目線とともに「ペレノール、行け」と伝える。
のろまな動きで、ヴァレオの前に現れたのは、大型犬獣人種。
ペレノールと呼ばれた少年は、右目に深い切り傷を負っているのが印象的な黒の犬種だ。
ヴァレオを見下すように睨みつけて、侮蔑の一言を吐き出す。
「弱虫坊ちゃん、このペレノール・アスタミュースに降参するなら今のうちだぜ」
「――ごめん。アスタミュース家については知らないからリアクションはとらないでおくよ。……じゃあ、改めてこちらも自己紹介かな」
口調そのまま、彼の発言に青筋を立てたペレノールを見上げ睨みつける。
侮蔑に対し、怒気を放った目線だ。
一歩だけ、ペレノールは後退りする。
――たかが、目線で狼狽えるあたり、たいして強くはないな。敵の機微な動きに目を付けたヴァレオはニヤリと頬を緩めたいところを自制し、彼は、我が名を名乗る。
「改めまして。ぼくは、ヴァレオ・ディリス。――言っておくが、手加減はなしだよ?」
「アハハッ! 誰がこんな生意気ドチビに手加減なんてするか……え」
酔いしれたペレノールの表情に突然、ヒビが入る。
何があったのか、ロキには知る由もないことだった。
ただ、1つ言えることは――あれ程まで勝ち気だったペレノールの表情が一瞬にして、青ざめたことだ。
「……良かった、手加減はしないんだね。嬉しいよ」
「ま、待て! まさか、ディリス家って!? あのディリス家か!?」
「『あの』って『どの』ディリス家かな。語彙力が足りないよ。朝の一件もあって、ぼくは我慢ができないんだ」
「ひぃ!!? すまないすまない! まさか、お前――『巨獣化』開発の名家、ディリス家の末裔だって言うのか……!」
そうだけど、何か。劈くような氷結の視線にペレノールの身体が完全に硬直する。
「さて、時間が押しているので――一撃で終わらせてしまおうか」
「!? 待ってくれ、俺が悪かった許してくれ!?」
「もう遅いよ、鈍感君。自らの軽薄な行為を盛大に悔やんでね」
言葉と同時に交わされるヴァレオの笑顔は、ペレノールの巫山戯た心を滅多刺しにするには、これ以上とない刃物の役割を担った。
怯える大型犬に向かって――純白の小型犬は、紡ぐ。
「ヴァレオ・ディリス。――巨獣化、発動」
刹那。
大地が、震撼する。
何の前触れもなく、その獣は、ユグドラシルの地面を蹂躙する。
白の毛並みの巨大獣がロキの眼前に屹立していた。
そこには、かつての子犬の面影はない。
本能のまま生きる獣の雄叫びが、空気を震撼させる。
突如吹き荒れる暴風は、獣の目の前で竦んでいたペレノールの足場を奪って転倒させる。
そして、不良少年は今更な後悔を実感する――。
だが、後悔の叫びが木霊する直前に、獣の両脚がペレノールを蹴飛ばす。
風を切り裂き、少年は煉瓦道を転がり続けた。
吹き荒れる鼻血が虚空を舞って、陽光に照らされ異様な煌めきを放っていた。
意識の有無は無論、勝敗の結果も目に見えている。
人だかりから一層の歓声が沸き上がる。
そう、これがヴァレオの秘策なる『巨獣化』。
制限時間1分の間のみ、自分の体を人型から完全な獣へと変貌させる術。ディリス家に伝わるとのことだが、ロキについても詳しいことは知らされていなかった。
ともあれ、最初の決闘は、ヴァレオに軍配が上がった。順調な滑り出しである。
ヴァレオの術の効果が切れると同時に、ロキは彼の元へと駆け寄った。若干、覚束無い足取りだったため、肩を貸す。
「よくやった、ヴァレオ」「とりあえず、ぼくの役目は済んだようだね」
肩越しに荒い息でありながら、爽快に笑ってみせるヴァレオ。
それにしても。
「戦闘の時の、お前――、容赦なかったよな」
「仕方ないよ。ぼくだって好き勝手されたんだ。あちらの自業自得だよ」
「……ま、そうだな」
一同のところへ戻ると、ヴァレオはひとりでに歩みを止める。
もう大丈夫だよ、その声を聞き、ロキは、支えていた肩から手腕を離した。
「さて……、次はクレオネラか」
「ええ。出来る限り、穏便にことを済ませられれば、と思っていますわ」
そして、前に立つ清楚系少女、クレオネラ。緑の髪が、夕陽に染められて、幻想的な色合いを生み出している。
「えぇと、次がお嬢様、かぁ。さっきのは、想定外だったけど、今回は――もらったね」
取らぬ狸の皮算用とはよく言ったものである。
安い挑発。無論、クレオネラはそんなものに突っかかる性ではなかったようだ。
「ただのお嬢様だと思われると、困りますこと。さあ、次はいかがなさいます?」
「そうだなぁ。ここで、ボクが出るとするよ」
前に出たのは、サイシスだった。
これについては、ロキサイド――ロキ以外が騒然となる。
相手側の頭角が2戦目で出てくるあたり――ほとんどの人数が策略について読めていない状況下にあった。
そんな中、冷静さを欠かないロキ。
手掛かりがないのは誰しもいなじ条件なのだが、心当たりになる事柄がいくつか思い当たる。
「クレオネラ。早い内に攻撃を仕掛けておいてくれ。負けることを怖がるなよ」
「……まさか、わたくしは捨て試合要員ですこと?」
「そうじゃない。できるならここで勝って終わらせたいところだが、あちらの思惑がよく分からないんだ。長期戦ってのも考えとしてはいいと思うのだが、もしも後の方で切り札でも使われたら身がもたないだろ?」
「それも、そうですわね」
一考して、彼女は頷いた。
「ロキの指示に従いましょう」
「ありがとな」
そして、クレオネラは前方へと振り返る。金髪の少年は下品に笑い続けている。見るのも堪えないその顔に彼女は不快感さえ覚えていた。
「さあ、手短に始めましょう」「ハハッ! そうだねぇ」
突如、逡巡無く彼女は飛び出す。地面を蹴り、利き腕である右手を前方に突き出す。
「緑扇弾――装填」
発射――――!! 掛け声と同時に、右手から緑の弾丸が滑るように放たれる。
綺麗な直線を描いて、サイシスに命中。
白煙が立ち込める。
彼女は立て続けに、2発、3発、4発を間髪入れず撃ち込む。
爆撃音と煙幕が立て続けに打ち上がり、視界を眩ませる。
「これで……いいでしょうか」
10発目を撃ち終え、前に掲げた右手を降ろす。
今の術が聖術の放出性術式だ。祭祀契約式(精霊や式神と契約を結ぶ)とは違うもう1つの聖術だ。体内に吸収した空気中の聖因子を様々な形状に変化させて、体外に放出するというものだ。
今、クレオネラは10発の放出性術式――緑扇弾を放った。
緑の名の通り、自然系統のエネルギーを吸収し、弾丸として放出する。
自然のエネルギーは大量に存在するため、枯渇などまず無い。
さらに高出力で術を発動することができるのだ。
今しがたの弾丸は、彼女の最大出力である。
下手したら、人の体の1つくらいは貫通するだろう。
だが。――白煙の向こうで。
「――――下僕政治」
そんな声とともに、煙が裂かれる。
彼女の眼前には、金髪の少年が依然として薄気味悪い笑みを浮かべている。
無傷、さらに言えば、右の瞳を紅に染めて。
「何があって――!!?」
彼女は気が付いてしまった。
周囲の視線が、自分のみに向いていることに。
ああ、これは催眠術だ。
下僕政治――眼球に聖術が埋め込まれていて、能力が発動すると第三者を巻き込み、敵への加勢とする術。
そんな外道な術が彼女の目の前で発動された。
観衆と呼ばれる第三者が多数存在している中で、起こりうることは――。
「さあ、お遊びはここまでだよぉ!」
狂気で眼を染めて、サイシスは両手を前に伸ばし、掌を最大まで開く。
途端、人だかりが一斉にクレオネラ目掛けて猛突進してくる。
体が動かない。自分の意志に反して、地面に張り付いている。
――どうすればいいんですの!?
焦燥が額から汗となって噴き出す。
助けて。その声も声帯が操られたかのように機能しない。
――――――――誰か!!!!
襲い来る軍勢に大粒の涙を零す少女がそこにいた。
人混みが彼女を喰らう。
喰らった。
はずだった。
だが。
「はあぁぁぁぁ!」
「ぐるおおおおおおおおおおおお!」
凛とした少女と猛る獣の叫びを前にして、言葉を失う。
――シグルーン様に、ヴァレオ様。
凛とした少女は、一蹴で軍勢を蹴飛ばす。
巨大化した白の獣は、地を蹂躙する。
「予測していた事態が起きたな」
「――とどのつまり、そういうことだったんだね、お兄ちゃん」
――そして、軍勢を前にして無防備のロキとマリア。
彼らは、別段慌てているわけではない。
むしろ安心しきっているようにも思えた。
だが、再び多くの学生――操られた下僕が一斉にロキとマリア目掛けて飛びかかる。
危ない!! その声は届かない。
しかし、代わりにこんな言葉を耳にする。
「やれ、マリア」
「うん――《清明の降臨》!」
その可愛らしい声とともに――光が、爆散した
白の輝きは金銀財宝に勝るものだ。
群衆を焼きつくす。
光は1秒も満たぬ間に、消失。残ったのは、群衆もとい先程の人だかり。しかし、起き上がるものはサイシスのみで、それ以外は、地に伏して起き上がらない。意識を無くしているようだ。
「ハハ、ハハ? どうして、ボクの催眠術を知っていた……?」
「行動があからさま過ぎんだよ。とうの昔から知っていたんだよ」
つまりは。
「俺らの勝ちは確定している。だが、降参は許さない」
お前には払うべき恐怖があるからな。静かに告げて荒れ果てた地面をロキは歩き出す。
サイシス目掛けて、1歩ずつ。
「ち、近づくなぁ! ボクは王族だぞ!」
「王族被れ、の間違いだろうが」
「違う! ボクは王の血を受け継いでいるんだ! 逆らうな、下人ども!」
「ったく」無性に腹が立つ。だから。
ロキは、既にサイシスの目と鼻の先に位置していた。
嫌悪の睨みが自称王族の少年を突き刺す。
「王というのは、傲慢が過ぎると暗殺される役職だ。覚えておけ、サイシス・キリングドール。お前の敗因は、俺らと戦ったことにある。刻みつけておけ、似非王族。自分の過ちを――悔み、正せ」
そして、怒りの限りの術を放出する。
「聖天空よ、崩れよ、堕ちよ――流星流弾!!」
直後――50連撃の流星群がサイシスを貫くのだった。
悲鳴は掻き消され、ただ残るのは下衆の懺悔のみ。
ざまあみろ、ロキはそんなことを口先から吐き出した。
「大丈夫か、クレオネラ?」
「ううぅ、あうぅ……、ありがと、う、ござ、いま、す」
消え入りそうな謝罪とともに彼女は、ロキの胸に飛び込んだ。
それを真横でジト目になりながら見つめる少女2人。
「うぅぅぅ、他の女の子には優しくしているのに何で、わたしだけ……」
マリアの怨嗟を込めた視線が痛い。前世の分で充分に事足りているだろうにまだ欲するのか……時と場をわきまえなさい精神年齢推定30歳のお姉さま。仮にも兄妹の繋がりなのだから。
「ロキ君って、すごい女誑しだよ。軽い男だよ……」
ぐぬぬ、と気迫が強いシグルーン。凛とした白金の髪が逆立っているように見えたのは気のせいだろうか。気のせいであって欲しい。
何とか、戦いは終わったのだがすぐこんな感じだ。シリアスなパートでも日常系入れたくなるあたり癒し要素が足りないのかしらん。
「男同士の戦いが終わったのに、今度は女同士の戦いに巻きこまれるなんてね。ロキくんも災難だろうね」
「同情の前に、助けてくれよヴァレオ。もうそろそろ目線の火花で火傷するぞ、俺」
「持てる男はつらいよね!」
「あの……君も吹っ飛ばされたいのか、ヴァレオ」
たははと笑って誤魔化す白犬少年に、納得いかないようで顔をしかめる。
俺らの騒動は、一段落ついた。家帰ったら、ベッドまっしぐらだな。3人の少女に囲まれ、白犬に茶々を入れられながら、トホホと息つくロキであった。
書き上げました。次からは不定期更新となります。できるだけ早い更新を目指すので今後もよろしくお願いします。