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第2話 お前は関わるな~小さな世界の知らない世界~

「残念ながら…」

「残念ながら?」

「俺は…」

「俺は?」

「死にました!」


〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇


どこかで見たことのある光景だな。一番にそう思った。

誰が死んだのだろうか。そのことで頭がいっぱいになっている。

考えていても何も分からないので考えないことにした。

気が付くとどんな夢を見ていたのか忘れた。


「あ、おはよう」

寝室を出ると彼女が仕事に行く支度をしていた。

「ご飯、テーブルの上にあるから」

「分かった。ありがとう」

俺は椅子に座り、テレビをつけ、テーブルの上にあるご飯を眺めた。

「見てるだけじゃ、おなかに入らないでしょ」

「いや、そうじゃないんだ」

「じゃあ、どうしたの?」

「別に…」

俺は彼女を無意識に見つめていた。黒髪のショートヘアで、色白で少し背は小さい。

「何、わたしに見とれてるのよ」

「別に…」

「またまたー」

彼女は視線を逸らした俺に絡んでくる。無邪気っぽい部分が可愛らしい。

「じゃあ、行ってくるねー」

「ああ、行ってらっしゃい」

テレビでは新人アナウンサーの紹介をしていた。


朝食も終わり、片づけも済ませたころ、テレビではトレンド紹介コーナーに入っている。

花粉対策グッズの紹介だった。コンパクトサイズの空気清浄器に効果を期待してもよいのだろうか。大きいマスクをつける女の子は口裂け女をイメージしてしまうな。

俺はなんとなくテレビを見て、なんとなく文句らしき言葉を心の中でつぶやいていた。

気持ち悪いな。

体調がじゃない。何故か気持ちが落ち着かない。

俺は無意識に携帯を操作してつぶったーの画面を開いた。

なんで?と思っているときにはもうつぶやいている。


仕事休みナウ


意味が分からない。俺はなんとなく友人のアカウントページに繋いだ。

が、繋がらなかった。正確にはアカウントページが削除されていた。

心の中で舌打ちをして、またつぶやいた。


友人のアカウントが削除されてるナウ


もう一度、アカウントページに繋ぐが、「todoroki_1さんのページは存在しません」と表示されるだけだった。

気が付くとテレビではスポーツコーナーに変わっていた。


そのまま、朝も昼もボーっと過ごしていたら夕方になっていた。

いつの間に夕方になったのだろうか。そんなことを思いながら夕食の準備を始める。

当然テレビでは夕方のニュースをやっている。キャスターは昔人気のあった香織アナである。今も人気なのだろうか。

『先ほど入りました情報によりますと…』

香織アナが険しい表情で原稿を読んでいる。と想像できる口調だなと思い、無意識に耳を傾けていた。

『路上で倒れているところを、通行人に発見され…』

俺はなんとなく、ただなんとなくテレビの方を向いただけだった。

『搬送先の病院で死亡が確認されました』

「え…」俺は手を止め、テレビにかじりついた。もう一度確認すると、やはりニュースになっていたのは、友人だった。

どこかで見たことある光景だな。一番にそう思った。

いつどこで見たのか。そのことで頭がいっぱいになっている。

轟沢(とどろきさわ)一郎さん。二十七歳。無職』

この紹介で確信した。死んだのは昔からの友人だ。この名前に同い年。無職かどうかは知らないが、写真の顔にも見覚えがあった。

「ん?」

俺は何かしらの違和感を感じた。が何かは分からなかったから、そのままにした。


彼女が帰宅して、一緒に夕食をとっているときにニュースの話をしてみた。

「昔からの友人がさっき死んだんだ」

「え」

彼女の顔が少し青くなっているように見えた。見えただけかもしれない。

彼女はハンバーグを頬張りながら答えた。

「誰が死んじゃったの?」

「轟沢」

「あれ?どっかで聞いたことあるような…」

彼女が過去の記憶から何かを引っ張ろうとしているのが見て分かる。俺はいたずら半分に、何かを引っ張っている彼女を邪魔するように言った。

「あー、あるよ」

「えー、いつよ」

「秘密」

「あ、ほんとは分からないんでしょ」

「そんなことはない」

本当は分からない。というより、覚えていない。

「またまたー」

彼女のにやけた顔が可愛らしかった。

結局、この後も友人の死とは関係のない話で盛り上がり、夕食後、就寝前のベッドの中でも盛り上がり、そのときすでに友人の死に対する違和感を忘れていた。


〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇


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