第121話:いたちごっこ
「すみません、仕事が長引いてしまい遅れてしまいました。お待ちしましたか?」
「べっ、べつに全然待ってねーよ! っていうか、今来たとこだし! 全然だし!」
――なーんて、デートによくあるベタ会話。
それをしているのは、城のメイドさんと一流デザイナー(らしい)双子の兄。
わたし? わたしはその3メートル後ろから見守っているのよ。アンからこの話を聞いた瞬間、これは行くしかないと思ったからね。
「ディーのことだもん、絶対なにかへまするわ。友達として、見守らなきゃ」
「違うでしょ、出番が惜しいんだよね」
「そうそう、出番が……いやいや違うし」
「いいんだよ、正直に言って。これ以上出番をとられたくないんだよね。大丈夫、わかってるよ」
「いやいや違うから! そんなんじゃねーし! いい加減にしてよダム! ……って、ダムゥゥゥゥ!?」
わたしは振り返り、なぜかいる彼の姿に目を見張った。なんでここに!?
そんなわたしの考えを読み取り、ダムはディーとアンを見つめながら答える。
「昨日、やけにディーそわそわしてたからこれは絶対なにかあるなと思ってね」
で、つけてみたら案の定ってことか。
「でもダム、お兄ちゃんのデートを盗み見るのは悪趣味だと思うよ」
「君がそれ言う?」
「……わたしはアレ、その、アレだから」
純粋なる心配からだから。好奇心とか弱味握ってやろうとかそういうのじゃないから。
ましてやまたわたし無しで話が進むのが気に食わないとかでもないし。
いや、別にダムが好奇心云々とかで動いてるとは思ってないけど。
そう言うと、ダムは笑顔になりわたしを見る。
「アリス」
「な、なに?」
「前に僕を尾行してたの誰だっけ」
「よーし、2人で若い彼らを仲良く見守ろうぜ!」
「アリスうるさい」
「スミマセン」
肩を組んだら一刀両断された。酷い。
――それにしても、つくづく似た者同士だだなぁ。さすが双子とでも言うべき?
前はディーがダムのデートを追いかけて、今回はダムがディーのデートを、でしょ?
まさか片方が出掛ける度にこんなことしてるんじゃ……。
「そんなわけないでしょ」
「あ、やっぱり?」
「いくらなんでもそこまで干渉しないよ」
呆れた面持ちでため息をつくダム。ですよねー。
ん、でもじゃあなんで今回はこんなことしてるわけ?
「もしかしてダムもアンのこと好きとか!?」
「アリスうるさい」
「スミマセン」
……ダム怖い。
涙目になりつつも、わたしは未だに待ち合わせ場所から動かない2人に視線を向けた。
耳をすませば、辛うじて彼らの声が聞こえる。
「っていうかお前、そのかしこまった口調やめろよ。一応俺より年上なんだし……」
「そんな、年上と言えども私のような身分の者が失礼な態度をとるわけにはいきません」
「っ、でも」
「しかし、ディー君が不快だと思うなら精一杯努力します」
「不快じゃねーよ! た、ただ俺はもっとお前と……」
「え……?」
おおっ、早速甘い雰囲気到来か!?
しかし、わたしはディーの次の言葉を聞いた瞬間ずっこけた。
「お前と仲良くなりたいなんてこれっぽっちも思ってねーけどな!!」
バカだ。バカだこいつ。
アンは素直に受け止めるんだから、そんなこと言っちゃまずいって。
実際に、アン落ち込んでディー焦ってるし。
「こんなんじゃ前途多難だなぁ。ね、ダム」
「アリスうるさい」
「スミマセン」
……彼らのデートを見届けるより早く、わたしのライフがゼロになりそうなんだけど。