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第116話:コンチェルト



「お姉さん!」


新しいドレスに着替え、パーティー会場に戻ってきた刹那、体当たりされた。

もう少しロマンチックに言えば抱きしめられた。誰にって、わたしをこう呼ぶ人は1人しかいない。


「白うさぎくん」

「すみません、お姉さん。僕からパートナーを頼んだというのに、貴女をほったらかしにするにするなんて!」

「白うさぎくん……」

「本当に僕は最低です。 なんと詫びても、足りないくらい」


わたしの首にかじりつくようにして、何度も白うさぎは謝罪の言葉を重ねる。

かわいいんだからもう。っていうか、モフモフの耳が頬にあたってます。めっちゃモフモフします。


「できればもっとモフモフしたいです」

「は?」


おっと、つい声に出てしまった。

白うさぎくんが一旦離れて怪訝な目を向けてくる。しかし、そんな瞳も美しい。なんかもう、今なら瞳に関係したすごい気障なセリフも言えそう。


「お姉さん?」


何も言わないわたしを不思議に思ってか、白うさぎくんが首を傾ける。


「だあああかわいい!!」

「わっ」

「許す許す! 正直わたしを放ってマダムハーレムを楽しんでいたのは悲しかったけどその可愛さに免じて許します! 全部チャラ!」


今度はわたしが白うさぎくんに思い切り抱きついた。

ああ、あんな目に遭った後だから余計に癒やされる……。

そんなわたし達を見て、公爵夫人はくすくすと楽しそうに肩を揺らした。


「公爵夫人。すみません、貴女にも大変ご迷惑をお掛けしてしまい」


そう言って、白うさぎくんはわたしの身体をやんわりと押して離れる。ちっ。

公爵夫人は謝る彼に、困ったように笑って


「いいのよ。悪いのはあの子だわ」


――あの子。たぶん、いや絶対チェシャ猫のことだろう。

そういえば、チェシャ猫本当に寝たのかな? しばらく外出禁止とか言われてたけど、どうするんだろう。

――まあ、しばらく顔合わせないで済むならそれに越したことはない、かな。

だけど、公爵夫人には本当に申し訳ない。せっかくの誕生日に色々と迷惑をかけてしまった。

しかしそれを言うと、公爵夫人は首をふり


「いいのよ。それに、この年になって誕生日というのもちょっと恥ずかしいものもあるわ」


と、はにかんだ。


「そんな、まだまだお若いですよ」


これはお世辞ではなく、本当のことだ。彼女はわたしの言葉に、ありがとうと見目麗しく微笑む。

――うう、やっぱりドキッとしちゃう。

なんであんな美しくなれるんだ、と半ば真剣に考えていると、いつか見た執事が公爵夫人になにか耳打ちした。彼女はそれに微笑で応え、


「ごめんなさい、伯爵、お嬢さん。人に呼ばれてしまったので、ここで失礼するわ」


パーティー楽しんでね、と言って背を向ける。わたしは言い忘れてたことを思い出し、慌ててその背中に声をかけた。


「あの、お誕生日おめでとうございます」


公爵夫人は振り返り、ありがとう、と微笑んだ。

そして燕尾服に身を包んだ執事と共に、人混みに紛れていった。途中ケーキに手を伸ばし、執事に怒られていたが。




「……お姉さん」


しばらくして、名前を呼ばれると同時に手を握られた。わたしは不思議に思い、隣の少年を見つめる。


「大丈夫でしたか? なにかされませんでした?」


上目に尋ねてくるその瞳は、不安に揺れている。

なにかされたかされないかと言ったら、確実にされた。しかし、それを言ったら彼はまた謝り倒してくるだろう。


「大丈夫だよ」


そう笑顔で答えれば、白うさぎくんは何か言おうとしたがすぐに口を閉ざした。

変わりに、わたしの手を恭しく取る。


「お姉さんがそう言うなら、いいです。……せっかくですから、踊りましょう?」


わたしが頷く前に、彼はわたしの腕をひいて音楽に合わせて身体を揺らした。





ついでに、帽子屋になにかお礼を言おうとしたが、なんか女性に囲まれてたから止めた。このイケメンめ。





誕生日パーティー編、終了。

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