プレゼント
携帯電話から見やすいように、改行多めとなっておりますが、
ご了承ください。
時は進み、12月も半分過ぎたある日の休日、
ユウは自宅から二つ駅を乗り継いで、とあるデパートを訪れていた。
店内に一歩入ると、華やかに飾られたツリーやリースが所々に置いてあり、クリスマスの再来を実感させる。
ユウはそれを目にしつつ、上の階を目指してエスカレーターに乗った。
ちなみに行き先は3階のランジェリーショップ。
そう、今日はハルへのクリスマスプレゼントを買いに来たのだ。
エスカレーターに運ばれて、無事に目的地に着いたが、お客さんは女性やカップルがほとんどで、男は1、2人程度しかいない。
(みんなプレゼントを買いに来たのかな)
なんてことを考えながら、飾られてある装飾品を順番にチェックしていく。
どれがハルに似合うかなぁと悩んでいると、他より一際大きなガラスケースがユウの目についた。
(うわぁ、すげえ……)
そのガラスケースからは美しい光が飛び交い、放たれる神々しい輝きは、他の宝石を圧倒していた。
その中で、良さげなネックレスを1つ見つけて、値段の書いてあるタグに目を向ける。
(……こっちもすげえ)
いくらか貯えはあったのだが、到底ユウには手が届かない代物だった。
「いらっしゃいませ。プレゼントをお探しですか?」
戸惑っているユウを見かねたのか、一人の店員が声をかけてきた。
「あ、はい。彼女になんですけど…」
「予算はおいくらでしょうか?」
「えっと…大体1万位です」
幾つか質問に答えると、店員は左隅にあるスペースへ案内した。
そこには、さっきのガラスケース程の輝きは無かったが、女の子が好むような可愛いらしいアクセサリーが並んでいた。
「これなんかはオシャレで、女の子に人気ですねー」
などと、店員に様々なネックレスや指輪を勧められ、少し助言をもらい、悩んだ挙句…
ペアネックレスを買うことにした。
普段はイルカを模したネックレスだが、
「これを二つくっつけると……」
二匹のイルカは見事に合わさって、ハートの形へ姿を変えた。
「これにします。」
それを見た瞬間、ユウは即決した。
代金を払い、クリスマス用にラッピングされた箱を受けとりながら、ユウはわくわくしていた。
ハルは喜んでくれるだろうか。
喜んでくれたら、いいな。
同時刻。
ユウがネックレスを買ったちょうどその頃―
ハルは親友であり、幼なじみでもある由美と一緒に、駅前に新しく出来た雑貨店にやってきた。
もちろん、ユウへのクリスマスプレゼントを買うために。
棚の中で所狭しに並んでいるアクセサリーを一つ一つ眺めていると、由美がポンポンとハルの肩を叩いた。
何だろうと後ろを見ると、
「これ何かどう??ユウ君のイメージにピッタリじゃない!?」
そう言いながら、ハルにクマのぬいぐるみを見せびらかす。
手に握られたぬいぐるみは、どうだ、とでも言いたげな誇らしい表情をしていた。
「うーん…ユウには可愛すぎない?」
「そうかなぁ??似合うと思うけどな…」
渋りながらも、由美はぬいぐるみを棚に戻す。
その後も由美と一緒に店内を回ったが、中々これだと思えるような代物に出会えずにいた。
「ユウ君はどんなのが好きなの??クリスマスプレゼントっていっても、範囲が広すぎて決まんないよ。」
「ユウの好きなもの…」
何があったっけ…
ユウの表情や言葉が浮かんでは消え、浮かんでは消え、を繰り返す。
『一緒に帰ろ』
『この前の誕生日ありがとうな』
『へぇ……ハルって甘いもの好きなんだ』
『おはよ。すっかり寒くなったね』
……そうだ!
「由美」
「え、何?」
気に入ったのか、さっきのクマを夢中でいじくっていた由美は、突然呼ばれたことに少し驚いた。
「私…マフラー編んでみようかな」
「へ?ハル編み物やったことあるの??」
「ううん。ない」
「はぁ!?クリスマスまでもう10日も残って無いよ??」
わかってる。でも…
「大丈夫、頑張って間に合わせる」
それを聞いた由美は、ただ苦笑するばかりだった。
その後由美と別れたハルは、編み物の道具一式を購入して、帰路についた。
そしてその日から、毛糸との格闘が始まる。
毎日夜鍋をして、絡まる毛糸に苦虫を噛む思いをしながらも、着々とそれを完成に近づけていった。