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遥か彼方  作者: 犬人
2/6

秋空

ユウが告白した翌日、二人が付き合い始めたことは、瞬く間にクラス中に知れ渡った。


「ユウ!良かったじゃんか!」


ヨシキが満面の笑みでユウのもとへと歩を進める。


「サンキュー!色々ありがとうなヨシキ。」



ユウはハルについて、ヨシキに色々と相談をしていた。



ある日、どうやって告白するかについて相談すると、ヨシキは少し考えた素振りを見せた後、こう言った。



「そういう時はな、相手の目を見て、目玉焼きみたいで旨そうだなーなんて考えるんだよ。」



「なんだそれ!?ったく、真剣な顔で何を言うかと思ったら…」



「これでバッチグー」



「どこがバッチグーなん!?ちゃんとしたアドバイスをくれよ!」



「例えば、ユウの目を見て美味しそうだなーって。」



「それはもういいっての!」



全然アドバイスになってないが、ユウはヨシキと話していると、


いつの間にか告白の不安や焦りは薄れ、リラックスすることができた。


ユウにとってヨシキは、かけがえのない存在だった。




「ユウ!告ったんだって!?」


「あーあ俺も気になってたんだけどなー」


「お前じゃ無理やって!」



いつの間にか、ユウの周りは、話を聞いた同級生達が集まってきて、賑わいを見せていた。そんな中、ふとハルのことが気になって、窓際に視線を移すと、


ハルはユウと同じように大勢の人に囲まれて、告白した時のように頬を赤らめ、幸せそうに微笑んでいた。



それを見たユウは、心が満たされていくのがわかった。


ハルが嬉しそうにしているのを見ると、つい頬が緩んでしまう。



「なーに、にやけてんだよ!」



再び周囲が騒がしくなる。ヨシキ達にこづかれながら、ユウもまた、幸せを噛み締めていた。





それから数日後、学校も終わり二人は駅へと続く道を歩いていた。


付き合ってから、毎日二人は一緒に帰っている。



いつものように駅前の繁華街を通っていると、ユウの目にファーストフード店の看板が飛び込んできた。



「まだ時間あるし、ちょっと寄らない?」



するとハルは足を止め、ユウの顔をしげしげと見る。



「…もしかして…デートのお誘いかな?」



予想だにしなかった言葉に、何故かユウは恥ずかしくなった。



「いや違っ…」


「え、違うの?」



気まずい間が流れる。



「…うん、そうだよ。」


それに耐えかねて、ユウはやっとの思いで口を開いた。



「それじゃあ断ったら失礼だね。うんいいよ、行こう!」



途端にハルは元気になると、ユウを急かすように店の方へと向かって行った。


店に入ると、中は学校帰りの学生達で賑わっていた。


二人は適当に食べ物を注文して、奥にあるテーブルの椅子に、向かい合うようにして座った。



「そういえば来月誕生日なんだよね。」



早速フライドポテトに手を伸ばしつつ、ハルはユウに尋ねた。



「ん…あれ、言ったっけ?」



ユウは今までのハルとの会話や、やり取りしたメールを思い浮かべる。

だがやはり、言った記憶はない。



「ううん、ユウ自己紹介の時にさ、誕生日言ったよね?確か…11月3日。」



「…あぁ、あの時か!」



あれは4月、入学式の翌日のことだった。


新入生お決まりの自己紹介の時、ユウは何を言おうか迷っていた。



そして決まらないまま、ついに自分の番が回ってきてしまい、


仕方なしに、名前と何故か誕生日を言ったのだった。




よく憶えていたもんだと、ユウは嬉しいような感心したような気持ちになった。



「よくそんなこと憶えていたな…」



「いや、うん、まぁ…ね。」



言葉を濁すハルに疑問を抱きながらも、あえてユウは突っ込まないことにした。



ハルの美味しそうにポテトを頬張る姿を見ると、そんなことはどうでもよく思えた。



「美味い?」



「え?」



「ポテト」



「うん!ユウも食べる?」



そう言うと、フライドポテトの詰まった紙の容器をユウに向ける。



ユウはその中の一つを取り出すと、口の中に放り込んだ。



ホクホクしたじゃがいもの甘みと、塩のしょっぱさが口いっぱいに広がる。



「美味しい?」



今度はアイスティーに手を伸ばしつつ、ユウに尋ねる。



「うん、美味い。」



するとハルは、嬉しそうに笑った。


しばらくして店を出ると、再び駅に向けて歩き出した。



すでに日は落ちかけており、少し肌寒いのに身を震わせた。



それがより一層、二人に冬の到来を予感させる。



そんな中ハルと繋いだ手は、素敵に温かかった。



どんな時でもユウの隣には、いつもハルの笑顔が咲いていた。

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