始まり
少し埃っぽい教室の中、少年は窓の外を眺めていた。
「ユウいい加減告っちゃえよ。お前ら仲いいじゃん。絶対大丈夫だって!」
いや正確には、少年は窓際で談笑している少女達に目を向けていた。
段々と教室は、登校してきた同級生達で賑わってくる。
そんな中、ユウは決心した。
「よし…わかった。今日言うよ。」
目の前に座っている少年…ヨシキの喜んでいる声を聞きながら、その少女に再び視線を戻すと、
少女はその大きな目を細めて、楽しそうに笑っていた。
放課後。
少女に『話があるから、屋上に来て』とメールを送る。
いよいよだ…
緊張が高まっていく。
抑えようとすればするほど、ユウの心臓は高鳴り、音が体内に響き渡る。
(落ち着け…落ち着け…)
焦りながらも、時間は確実に過ぎていく。
そして少女は…来た。
「ごめん、遅れて。えっと…話って…なに?」
少しの間をおいて、ユウは途切れながらも言葉を紡いでゆく。
「えっと、話って…いうのは…」
あと一歩、たった一歩が中々踏み出すことができない。
少女はユウを見ながら、何も言わずに黙って待っている。
(もう…どうにでもなれ!)
「俺、ハルのことが好きです!付き合ってください!」
空にユウの声が反響し、やがて吸い込まれていった。
そして一瞬、時間が止まったように屋上を静けさが襲う。
「私も……私もユウが好き。」
だが次にユウが耳にしたのは、少し赤面したハルの至福の言葉だった。
「こちらこそ、よろしくお願いします!」
そしてハルは、嬉しそうに笑った。
その日、二人は初めて一緒に帰った。
繋いだ手のひらは、
笑顔の二人を固く結んでいた。