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真夜中のプリン

 

知らないマンションのベランダ。

ライトアップされた東京タワーを眺めていると、二機のUFOが飛んできた。

赤い光と青い光が夜空に長い尾を引き、東京タワーをグルグル回る。

赤い光と青い光はいつの間にか消え、憲明の意識はヴァイスシティにいた。

やはり国家権力にケンカを売るにはそれなりに準備がいる。

どっかから防弾チョッキ取ってきて銃砲店でマシンガンと弾を買って、警官から奪ったトンファー装備して、盗んだバスを横倒しにしてバリケードを作る。パトカーはイザと言う時には爆発させたいので、侵入経路は残しておく。なるべくなら体力回復のために病院の近くが良い。

ああでも。

この方法は以前試したが、手配度が4までしかたまらなかった。どうやったら手配度MAXまでいくのだろう。

どうせなら警察署に突入するのも良いかもしれない。


「…………」


どうでも良い思考を切り離し、憲明は布団から身を起こした。

暗くて寒い。

枕元で充電中だったケイタイを取ると、時刻は午前三時を少し回ったところ。

確か布団に入ったのは午前一時ごろだったので、二時間近くも眠れずウダウダやっていた事になる。

体の節々が季節外れの寒さのせいで痛むが、気持ちは昂ぶっていない。

むしろ穏やかなくらいだ。

眠れない夜は久し振りだ。

本当に久し振りの眠れぬ夜。

何となく体が水分を要求している気がしたので、憲明は布団を離れ、冷蔵庫を開けた。

アパートの台所を、オレンジの光が照らす。

冷蔵庫を開けっ放しのままパックの麦茶を飲むと、上の段にプリンを見つけた。

先日、有紀子と一緒に行ったスーパーで買ったものだ。

特売セールで3パック入りプリン98円。

3パックの内、一つしか残っていないのはその日の内に二人で食べたせいだが、ラスト一つはどちらも食す権利を主張したため、宙ぶらりんのまま冷蔵庫に残っていたのだ。


「…………」


良いか。

食べちゃえ。

有紀子には何か言われるだろうが、プリンくらいまた買いに行けば良い。

憲明は流し台からスプーンを探し出すと、一分もかからずにプリンを食べた。

と、


「……ん」


部屋で有紀子が起きた気配がした。

恐らく冷蔵庫から漏れた光で目を醒ましたのだろう。

布団に入ったまま寝ぼけ眼の有紀子はこっちを見る。


「……どうしたんですか憲明さん」


「いや、眠れなくて」


「私的にはすやすやのぐーぐーですよ」


「そいつはうらやましい」


空き容器をシンクに置くと、憲明も部屋に戻る。

やっぱり寒い。

カーテンの隙間を見れば、雪が降っていた。


「どうしてだろう。眠れないんだ。睡眠導入のために有紀子さんのお尻を触ってもいいかな」


「……ダメですよ。明日は久し振りの二人揃ってのお休みだから朝マックしよう、って言ったの憲明さんです」


冗談のつもりだったが、断られるとけっこうこたえる。

仕方なく憲明は自分の布団に戻ろうとし、


「……あーでも」


動きを止めた。


「一緒に寝るくらいなら私的には超オッケーって感じです」


そのまま憲明は有紀子の布団に移る。

傍に誰かがいる事がとても暖かい。

向かいあった有紀子は目をつむり、呼吸はすでに眠りのそれだ。


「……寒い日に一緒の布団で寝るのって私的には何か超幸せって感じ……が……」


寝息をたて始めた有紀子の寝顔を見ながら、憲明は明日の事を考えた。

呼吸を重ねていると、有紀子の眠気が憲明にうつったようだ。

眠い。

あんなに眠れなかったのに。

今は……

明日はどうしよう。

……いや、日付は変わっているから今日の事か。

起きたら着替えて朝マックして。

そうだ。プリンを買いに行かなきゃ。




                 ……【GOODNIGHT】

読んでいただきありがとうございます。

もう何年前に書いたのやら分からない昔の作品です。

多分、作中に『グランド・セフトオート』の事を考えているので、『ヴァイスシティ』が発売された年に書いたのではないか、と。


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