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コーヒーメーカーとの邂逅

作者: 有未
掲載日:2026/10/10

 私が初めて正社員で勤めた時、会社にコーヒーメーカーが置かれていた。いつも朝にコーヒーが出来て行く様子を見ながら、私は自分の紅茶を淹れていた。当時、コーヒーメーカーという名称も知らず、不思議な機械だと思っていた。やがて私は退職し、長い時間が流れた。私は自宅でコーヒーも飲むようになった。


 私は、ふとした折に、あの会社に置かれていたコーヒーメーカーを思い出しながら過ごし、また長い時間が流れた。先日、電器店でコーヒーメーカーを見掛けた。価格は三千円くらいだった。私の夢のかたまりが約三千円で販売されている。当時、不思議だと思っていた魔法のような機械。


 その時は購入しなかった。家が片付いていないし、どこに置いたら良いかも分からない。でも、私の中の過去と呼べるむかしに知り、時に思い出しては憧れていたコーヒーメーカーがお店でぽつんと販売されていて、私は胸に込み上げるものがあった。


 不意に私だけ時間が巻き戻り、つらかったけれど懸命に正社員として働いていた若い頃の自分の姿や感情を思い出した。ちょっとだけ、泣きそうになった。あの頃、仕事も実家での生活も病状も色々あったけれど。


 私は、会社のコーヒーメーカーが毎朝必ずコーヒーを作っている様子を見るのが好きだったことを思い出した。変わらない姿に安心していたのかもしれないし、コーヒーメーカーが珍しくて面白かったのかもしれない。コーヒーの香りと共に、私は当時の様々な感情や心情を思い出した。


 部屋を片付けて、寛げる家作りが出来たら、コーヒーメーカーを迎えるのも良いかもしれない。コーヒーの良い香りと共に時間が緩やかになり、おいしいコーヒーが飲める生活を送れるかもしれない。そんな夢をみて、私は片付けを頑張ろうと思う。

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