平等騒動
昔々、とある地方の農村に豊作神社という神社がありました
その神社はいつごろ創建されたのかは定かではないのですが、この神社を氏神とする村が8村あり、この神社を中心にして周りを囲んで協力し合い暮らしてきました
農村にある豊作神社・・・名前の通りの五穀豊穣を司るご祭神であるはずなのですが、実はご祭神がどなたなのかはこの8村の誰もが知りませんでした
本殿の奥にはけして開けてはならない、開かずの間があって、そこにご祭神が祀られていると言い伝えられています
農村特有の天候に左右される暮らしの安泰を願っていつしかこの神社は、8村の農民の心の拠り所となった事実だけが引き継がれています
毎年、秋には8村合同で収穫祭を行う風習がありました
今年も、収穫祭を執り行うにあたり、8村の代表者による打ち合わせが行われることになりました
社殿に集まった8村の代表者たち、しかし今年は神事の神輿の担ぎ手の話で揉めごとが起こりました
今までは神輿の担ぎ手は8村の代表者たちの抽選により決められてきました
抽選で当たりくじを引いた村が神社から神輿を担ぎ8村を練り歩き最後に神社に戻っていたのですが、最近くじ引きに不正はないはずなのですが、同じ村が続けて数年の間いつも当たりくじを引いているということが起こっていました
さすがに腹に据えかねた他の7村の代表者たち、今年はなんとか違う村で担ぎたいと考えていました
ある村の代表者が「そろそろ今年は違う村に神輿を担がせてやりたいとは思いませんか?」と口火を切りました
すると「くじ引きだから平等に機会はあるではないですか?偶然が続いただけですよ」最近ずっと神輿を担いでいる村の代表者が不満そうに言いました
他の村の代表者「でもねぇ、もうそろそろやり方を変えてもいいのでは?」
さらに他の村の代表者「私もそろそろそうすべきではと考えています」
ところが「くじ引きで決めるのは伝統であり守ってきたことだからそのままにすべきだ」との意見も出てきました
「くじ引きでその村が当たるのは氏神様のご意志なんじゃないですか?」
なんてことを言う村も出てきました
揉めに揉めて決まらないので、多数決を取ることになりました
神主が採決を取ります
「今まで通りくじを引く方に賛成の村4村、新しい方法に変えることに賛成の村4村」
・・・・・・あれまぁ・・・同数・・・・
揉め事は収まりませんでした
村同士の決め事なので神主には決められない・・・
くじ引きも平等、でもその方法に異議を唱えての多数決も平等・・・だけど・・・決まらない・・・なんたることか・・・
結局、ここ数年続けて当たりくじを引いて神輿を担いできた村がそれじゃあと不満を表明し、今年からこの祭りに参加しないことになりました・・・
長い歴史の中で仲違いが起きてしまいました
残った7村・・・やり方を変える方が優勢となりましたので、これからは毎年順繰りに、神輿を担いでいくことに決まりました
順番を決めるための抽選を今年は行い、その前後の順番はそのままで毎年順繰りにすることとし、これからは揉め事となり仲違いまで起こしてしまった「抽選」と言う方法は金輪際とらないことを7村で決めました
さて、祭りの時には恒例行事として各村対抗の綱引き大会も開催されました
今で言うトーナメント方式で勝負をするのですが、1村が抜けたため7村での勝負となってしまいました
対戦相手の決め方は神輿の担ぎ手の順番通りにトーナメント表に並べて行きます・・・これならばご法度の抽選をしなくてすみます
ところが・・・今までなら平等に3回勝たないと優勝できなかったのに、7村になったため2回勝ったら優勝できる村が1村出てくることになってしまいました
ここでまたある村から「これでは平等ではないじゃないですか」と意見がでました
「これは不公平ですね」
各村から不満が出てきました
偶数でも奇数でも平等であるということを求めたら不平等が出てきてしまいました
世の中はこれをそれぞれが吞み込んで腹に収めて続いてきたことも多いのでしょう
大人の事情はこうして形成されてきたのでしょうか・・・神のみぞ知ることなり




