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画の中の未来



放課後、教室の黒板には「文化祭実行委員会」の文字。

ポスター制作の打ち合わせで、数人の生徒が集まり、机の上には絵の具とスケッチブックが散乱していた。


その中心にいたのが瑞希だった。

彼女が描いた絵には、鮮やかな色彩と、明るく力強い構図が息づいていた。

「……すごい……うまいな…」


思わず神原は声を漏らした。

キャラデザいいな…

これはきっとマンガ好きだろうな…

アニメもかな… 

三次元より二次元か…

などと勝手な妄想に励む神原(笑)

実は神原も前の世界では二次元大好きなオジサンだった。

キモいとか言われようが、全然気にしなかった。

自分の好きを自分で否定するようなことはしたくなかった。だから人にもそれを勧めてた。

好きを人に委ねるな。




他の生徒も褒めていた。神原だけは、その絵の“完成度”だけではなくそこに込められている瑞希の熱いオタク度?に気づいていた。

この絵には「描き慣れた感」があった。ただの器用さではない。積み重ねた時間が宿っていた。


少し離れたところにいた瑞希が、友達に話してる声が聞こえた。

「瑞希〜同人とかやってるよね〜きっと」


「……へ、バレたか〜できるなら漫画家になりたいよ〜(笑)できるならね…」


神原は、驚いた顔で瑞希を見た。

しかしすぐに、表情が綻ぶ。


「……いい夢だ。素敵だよ」


本心だった。

それは、心から湧き上がる肯定だった。

今までたくさんの夢を見た人間を見てきた。

社会の中で折られた夢も、実現した夢も、その途中で消えた夢も見てきた。


その上で、神原は思う。

「なりたい」と言えることが、どれだけ尊いかを。

「なりたい」を応援することがどんなに尊いかを


「父さんも、応援してくれてるし…」


「お〜それ、すごいんじゃない!」


「瑞希のおとうさん、神〜(笑)」


クラスメイト達のはしゃぐ姿の真ん中にいて微笑む瑞希の顔に、神原は――ふと重ねてしまった。

あの子を…


(そうか……)


瑞希は、亡き妻ではなかった。

似ていたのは――娘の方だったのだ。

小さな頃、絵を描く娘の姿を思い出す。

夢中になって画用紙に向かう姿。

笑いながら見せてきた一枚一枚。


(俺は……あの夢に何をしてやれたんだ?なにもしてやれなかった…)


「……応援してる。絶対、なれる。頑張れよ…」


そう神原は一人でつぶやいていた…言った瞬間、声が震えた。

自分でも気づかぬうちに、目が熱くなっていた。


「どうしたの?感動?」

天宮が驚いた顔で言った。


「いや、……なんか、ね……嬉しくてさ。こんな真剣な夢、聞かせてもらえるなんて」


「そんな、大げさ……(笑)」


瑞希はそんな二人の様子をさっきからみていたことに神原は気がついていなかった。


神原は、思った。


(この世界は本物の神原浩一の世界だ。自分の事情だけでなにか行動するのには抵抗があった。本物の神原浩一なら瑞希をどうみたかなんてわからない。でも、瑞希がいるこの世界を――瑞希の未来を少しでもいい未来に変えられるなら、もう少し…)


瑞希の描く未来が、少しでも輝くように。


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