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転生世界の母親
> 母親は、やはり父親の影に隠れている。
だが神原の目には、その沈黙の中の不安が見えた。
(ああ……俺の母さんもこんなふうに黙ってた。言い返す力がなかっただけなんだ)
「……お母さんも、ありがとうね。俺の話、ちょっと聞いてくれて」
小さく笑いかけると、母親は一瞬だけ顔を上げて、目を潤ませた。
食卓で母親が沈黙のまま皿を並べている。
父の機嫌を損ねないように、気配を消すように立ち回る姿は昔の母と重なった。
神原はふと、あの時の母の老いた姿を思い出す。
小さな市営住宅の窓際、ひなたの中でうたた寝する母の白髪が風に揺れていた。
(もしこの人も、何十年後にあんなふうになったら……)
「……あのさ、今日、俺が洗い物するよ」
母が驚いたように顔をあげた。
神原は笑ってごまかした。
「なんか、気が向いただけ。たまには恩返し?」




