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供述と沈黙

1


被害者は生内 誠司、21歳、男性。職業は国立黒曜大学法学部3年生。自身が所属するゼミの研究室で死亡していた。死因は後頭部強打による殴殺。通報者は、被疑者でもある生内 草太郎、22歳、男性。職業は清掃業。被害者とは兄弟関係にあるが、義理であって血の繋がりはない。加害者は特別養子縁組で生内家に引き取られた孤児で、両親は不明。養育施設の庭先に捨てられていたところを拾われたとのことで、草太郎というの名前も草の上に寝かされていたところから名付けられたという。

被疑者によると、自身が引き取られて物心つかないうちに養母が誠司を授かり、そのために蔑ろにされた、成人後、自身は独立したが、何の偶然からか勤め先の大学で巡り会ってしまい、かつての鬱憤が爆発したことのよる犯行である、と供述している。

鑑識調査の結果、逮捕時に所持していた金属製の鈍器も凶器であることが判明している。入室について曖昧な点はあるが、被害者は研究室の教授に気に入られており、ゼミ生でありながらも鍵の所有を認められていたため、何らかの話があるとして迎え入れたものと考えられている。

ただ一つだけ、両者の幼友達であるという女学生、萩原瑞希が被疑者の犯行を否定している。犯行時間帯直前まで、彼女は被疑者と電話で会話していたというのである。確認したところ、確かに通話記録はあるのだが、両者の通話地点は確定に至らなかった。これでは現場不在証明アリバイとはならない。それでも、萩原瑞希はしつこく食い下がっていた。

「二人の仲が悪かったことは、私も認めます。けれど、それは誠司くんが一方的に草太郎くんを憎んでいたからです。養子の草太郎くんに対して、『あいつはよその子なのにうちへ入り込んできて嫌になる』と、子供の頃から毛嫌いしていました。草太郎くんは事あるごとにその話をされて、段々塞ぎ込むようになってしまったんです。でも……それでも、彼が誠司くんを殺すなんて、そんなことをするような人ではありません。何かの間違いです。」

同じ法学部の学生とは思えない、感情論による意見であった。現場の刑事も、これには取り合わなかった。そもそも、被疑者は犯行を通報した上で自供している。もし、自身の仕業でないのなら、誰か他に加害者がいるのだが、その該当者がいない。最もそれを思しき萩原瑞希も死亡推定時刻の前後半日以上、実家で家族と共に過ごしており、犯行の機会が無い。

結局、生内草太郎は殺人容疑で東京地方裁判所へ送検された。

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