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1.

 魔法のある世界。


 世界は魔法を使えるもの――魔女と、何か特別力があるわけでもない、人間との世界に分かれていた。

 人間は魔法を使う魔女を恐れ、後世に継ぐにつれ魔女の悪評は大きくなっていた。

 

 これはそんな人間の世界に住む少女と、人間と仲良くなりたいと考える魔女の話である。




***


「シルお姉さま少し部屋を掃除させてもらってもよろしいでしょうか」

「何もできない無能のくせに気安く話しかけないでくださる?」


 そう毒舌を浴びせてきたのは私――リリア・ダリアンの実の姉――シル・ダリアンである。

 

「申し訳ございません。お姉さま」

「あなたを私の部屋に入れるわけないでしょう? それにあなたにお姉さまだなんて言われたくないわ」


 そう告げると、シルお姉さまは自室へ戻っていった。


 昔はこんな関係じゃなかったのに……


 昔は仲のいい姉妹だった、だがいつしか姉は急激に変わった。

 私への態度が。

 変わったのは姉だけではない、母様も父様も、私に関わっていたものすべてが変わってしまった。


 どのように変わったのかというと、実の娘の私をメイドとして扱うようになったのだ。

 服も城に仕える他のメイドと同じになった。

 家族には名前だって呼ばれなくなってしまった。


「リリア様。シル様の自室はいいので庭園の手入れでもしてきて下さい」


 そう話しかけてきたのはメイド長のシリア・パウナ


「はい。わかりました」


 他のメイドでさえも私をいいようには思っていないのだろう。

 誰からも好かれない、むしろ嫌われてしまう。

 なぜこうなってしまったのだろうか……。




***


 メイド長に言われた通り、私は庭の手入れをしていた。


「あら、こんなところに居ましたの? あなた」

「エウラお姉さま……」


 私の二人目の姉、エウラお姉さまだ。


 私たちは、母のセリア・ダリアン、父のガディオ・ダリアン、長女のシル・ダリアン、次女のエウラ・ダリアン、そして私三女のリリア・ダリアンという家族構成だ。


 今、話をかけてきたのは次女のエウラお姉さまだ。


「私はここで紅茶を飲もうと思っていたの。持ってきて下さる?」

「はい……」


 エウラお姉さまは東屋で腕組しながら、私が紅茶を持ってくるのを待った。




***


 紅茶を持ってくると、私は一言「お待たせしました」と紅茶をエウラお姉さまの前に差し出した。

 エウラお姉さま無言でその紅茶を取ると、コクッと一口。


「けほっ……けほっ……」


 咳き込んでしまった。


「あ、あなた紅茶もまともにいられないの?」

「申し訳ございません……」


 エウラお姉さまは立ち上がると持っていた紅茶を私にかけた。


「……っ! あ、熱い……」

「あら、ごめんあそばせあまりにも美味しくないものだからつい」


 そう言い捨てエウラお姉さまは城の中へ戻って行った。

 

 熱々の紅茶をかけられ濡れた私の肌は赤くなっていた。

 少しのやけどのようだ。

 持っていたハンカチで体をふいた。


 実の姉から躊躇なく紅茶をかけられるなんて……

 もうここに私を大切に思ってくれる人なんていないんだ。




***


 夜。


 メイドとして扱われる私にも自室はあった。

 内装は他のお姉さま方とは違いベッドと机のみだ。

 何も買ってもらえないから。


「はあ、今日も疲れた」

 

 私はベッドのボフッと飛び込んだ。


 私にとって夜は一番楽にになれる時間だ。

 部屋にはお姉さま方も他のメイドも入ってきたりしないから。


「どうして私はみんなから嫌われてしまうんだろう……特別悪いこともしたことないのに……」


 私は今まで特別悪い子だったわけではない。

 むしろいい子だったと自分自身でも思うほど、しっかりしていた。

 だが私は嫌われる。

 多分ずっとこのままなのだろう。明日も明後日もその次も、ずっと……



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