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転生者が変える人類の近未来史  作者: 黄昏人
第4章 変貌した地球世界
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4-12 2040年の世界、日本の交通事情と日向家

読んで頂いてありがとうございます。

誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

 2040年、世界は様変わりをしていた。

 日本の場合の大きな変化は、スカイカーの劇的増加である。それに伴い、どうしても邪魔になる街の電柱と電線が地中に潜り、街並みがすっきりしてきた。また、どこの街も駐機場が数多く作られてそこに着地、離陸しようとするスカイカーがあちこちで見られている。


 スカイカーの発達により、人々の生活スタイルが変わってきている。人は基本的には緑豊かな環境で暮らしたいと思う人が多い。しかし、反面そういう場所は便利が悪いので、暮らすのも職を得るにも難しい。しかし、職についてはインターネットの発達で、住所地は以前ほど意味はなくなりつつあった。


 そこに、スカイカーであれば100㎞圏内は片道1時間かからないということになった。そして、都会の中でなければ宅地内に駐機場を作ることは難しくない。このため、首都圏ですら100㎞圏から通勤で通う人が劇的に増えている。とは言え、以前でも鉄道沿いでは、遠距離通勤は珍しくなかった。


 しかし、スカイカーは交通インフラに依存しない。流石に人の全く住んでいない所は、電気、上水道、生活道路のなどの開発が必要なので無理だ。だが、過疎化しつつある町や村はそれらが一応整っている。そして、日本には多くの空き家があるので、それらを改装して人が住みつくようになってきた。


 特に実家が不便である為に、やむを得ず職場に近くに家を借りるなどしていた人は、積極的に実家に帰るようになった。そのような人々が増え、近所付き合いが復活するなどで、地方は活気を取りもどす。買い物は、拠点都市の大型マーケットで買う場合が多い。スカイカーを使えばすぐだ。


 一方で、重力エンジンによる小型ドローンによる配達も増えている。こうして賑わいを取り戻した光景は、山村のみならず海辺の村や島でも見られている。ただ、このように不便な土地のデメリットは、買い物もあるが医療も大きな一つである。


 しかし、その点はまずサプリメントあるアクティの効果で、高齢者の医療漬けの人々は大幅に減っている。さらに、診療機器とAIの発達で、診断が早く確実になり、投薬などについても早く決定されるようになった。その結果として、高齢者が病院の近くに住む必要がなくなった。


 そのため、東京・大阪・横浜などの巨大都市の便利さが、住環境の悪さに負けるようになった。このことから、大都市、地方中核都市の人口がはっきり減りつつあり、田園風景の残る都市の人口が増えている。そして、そうした都市においても従来は不便で、過疎化しつつあった地域の空き家が売れ、または新築がされている。


 一方で、EVについても依然として広く使われている。現状では、概ね20%程度の家でスカイカーを1台以上持っており、残りの家の主たる交通手段はEVである。また、スカイカーを1台持っていても2台3台目はEVである場合が多い。


 スカイカーはやはりEVに比べると価格は2倍以上であるし、台数はそこまで必要はないので2台以上持っている家はむしろレアケースである。だから、街中や郊外の道路交通は、全てがEVになった乗用車にトラックやその他の大型車であるが、道路の様子は昔と変わらない。ただ、騒音や排気ガスはない。


 このような、街並みに余り影響のない交通事情としては、まず重力エンジによって航空機による交通が落ち着くところに落ち着いた。つまり、全ての航空機は重力エンジン駆動になり、2,000㎞以上の路線の全ての航空機はハイパーライナーになった。


 このため、遠距離に関しては大幅に飛行時間が短縮したために、スーパーライナーの移動距離は平均で従来機の4.5倍になっている。つまり、1機が従来機の4.5倍働くということになる。また、乗務員も4.5倍の効率で働くことになる。


 そして、時差の大きい場所への出張は、現地での仕事は十分準備をした上で、1日で終わらせるというカミカゼ出張が主流になった。この場合には1日間は多少辛いが、時差ぼけは起きない。時差ぼけを嫌って、先進国にとって時差のない場所というのはひと際高い評価になる。


 日本にとっては、シベリア共和国や、パプアニューギニア(PNG)またオーストラリアは、そのような場所になる。また、近隣で朝鮮共和国も、日本からの中小企業の進出が著しいが、国民の素朴な人柄がいいということで、人気の国になりつつある。


 乗客機については、この現象はすでに5年前ははっきり表れていた。ただ、乗客を運ぶ航空機は時速800㎞ほどで飛ぶので、地球の裏側でも20時間強で移動できた。だが、比較的遅れていた海を航行する船舶からスカイキャリーへの転換はすでに殆ど終わっているが、この効果は劇的な変化をもたらしている。


 これは海上では、船舶の航行速度はたかだか50㎞/時であったものが、重力エンジンのスカイキャリーは800㎞/時で飛ぶのだ。しかも、発着地が海辺である必要がなく、なおかつ滑走路は要らないので、100×50mほどの平らなスペースがあれば離着陸できる。


 また、その速度で飛ぶスカイキャリーは、容量1万、2万、3万の3種類のものがあって、従来の航空機とは輸送量が比べものにならない。このことで、国際的な運賃は劇的に下がった。とりわけ、内陸国の生産品が世界中に出回るようになってきた。


 たとえば、内陸国のウズベキスタンでは、スイカ・メロンが豊富に取れるが、単価は段違いであり日本とは文字通り一桁違う。とりわけメロンは長さ50㎝、短径は20㎝ほどもあり濃厚な味で旨い。だが、運ぶ方法がなかった。そこで、今はスカイキャリーで運んだそれは日本ですでにブームになっている。


 ところで、日向家の家もこのような交通事情の変化によったものである。一家への危険性が下がったのを機に、親戚が持っていた山を買ってその一部の斜面に家を新築した。セキュリティ面からから、2mの塀の上に1.5mのフェンスがあり防犯カメラも完備した家で、どこぞの親分の家のようである。


 宅地は2,000㎡、家は地下1階、地上2階の延べ500㎡で2世代所帯であり、それほど豪邸ではない。当然発着場があり、スカイカーは3機駐機できるが、EVも3台が駐められる。家には、隼人・綾子の夫婦と涼と美恵の夫婦に彼らの長女の美登里に長男の一志が住んでいる。


 娘の彩香は理化学研究所に就職して、そこで知り合った遠藤清太郎と結婚して筑波に住んでいる。月に1回ほどは、娘の真帆を連れて帰って来る。涼の嫁の美恵は、前は社長の母の秘書をしていたが、今のところは4歳の麗奈と2歳の一志の子育てに追われている専業主婦である。


 しかし、家の中で手が回らないので、涼と美恵夫婦は、近所からの通いのお手伝いを2人雇っている。綾子も、自分の側の家でずっと1人雇っている。彼らは、地元出身の隼人・綾子夫婦の近所の人で人柄も判っているので信用できる。


 美恵は、若い自分がお手伝いに人を雇うのは流石に横着ではないかと躊躇った。だが、綾子からこのように言われたし、涼からも同じように言われて踏み切った。


「いいのよ。経済的には余裕があるのだから、精神的に余裕ができるために使えばいいの」

「雇いなよ。美恵は、書類仕事なんかは見事だけど、家事なんかはちょっと不器用だろう?子供育てるって大変らしいじゃないか。雇って時間に余裕を作って、子供に愛情を持って接すればいいのさ」

 しかし、後者の涼の言葉は、妻の膨れた顔に迎えられ、彼は慌てて謝ることになった。


 ところで、最近影が薄い父隼人であるが、やはり防衛省転じて保安省所属の公務員である。本当は憲法改正と日米安保条約の解消によって、自衛隊は防衛軍に転じる予定であった。だが、世界平和軍(GPF)の成立で、近い将来世界の国家から軍が無くなることになった。


 GP8の構成国である日本は、先陣を切って2036年に自衛隊を無くし保安隊を形成した。保安隊は『国の生命・財産を守る』ということで、警察では手に余るようなテロなどの騒乱に対処し、災害において人々の生命財産の保全にあたる。そのため、防衛省の名は保安省となった。


 GPFの役割は、国際紛争を解決することである。そして少なくとも現時点では圧倒的戦力を持ち、世界全体が即応範囲に入っている。だから、他国への侵略を行った場合には、圧倒的戦力で叩き潰されるし、双方でドンパチを始めた場合には、強制的に双方が分けられる。


 そのため、国は基本的には外からの軍事的脅威に備える必要はない。しかし、中での騒乱はなかなか外からは難しいし、規模の大きい災害時の救援活動などは原則として活動の範囲外である。だから、各国に保安隊的な組織は残るが、陸の戦車などの重火器や戦闘機や軍艦などのいわゆる正面装備は不要である。


 日本の場合にはGPFの1翼である1万人の即応隊を国内で構成する必要がある。加えてGPF本部の緊急出動部隊2万のうち現在では3千人を受け持ち、ギャラクシー、ビー部隊、メテオ部隊の乗員を提供している。このようなことで、本部基地に4千名弱の要員を派遣している。


 このために、日本はGPFへの要員として最精鋭の2万5千人を抱えて、日々厳しい訓練を行っている。これは本部基地に派遣している人員と、国内基地から1万人の即応隊を出せることに加え、本部への要員を派遣するために育成・予備要員を含めている。


 また保安隊は、10万人体制として各地で訓練と、主として災害時の出動に励んでいる。この中から成績優秀者がGPFの要員に選ばれることになっている。ちなみに、この改変前の自衛隊の実際の要員は22万人程度であったので、概ね半数になったわけだ。


 この保安隊への改変に伴う自衛隊基地の改装と、GPFの要員のための基地造営について、隼人は保安省職員として担当して、3年程は忙しい日々を過ごした。このことで、建設事業の管理の能力を見込まれた隼人は、外務省に移って世界中で様々な建設の管理を手がけるようになってきた。

 これは、資源探査の結果によって日本政府が得た利権に伴う建設であるから、涼の仕事に絡む。


 これら海外の仕事も、現地にいくことは年間の1/5程度であり、スーパーライナーが普通に使えるこの頃であれば、時差を除けば国内旅行と異ならない。そういうことで、隼人は年間の4/5は家から通っている。


 綾子は、53歳の今も㈱日向クリエイティブの社長であるが、会社は大いに発展を遂げている。隼人も涼も綾子からの社長の打診をずっと断っており、引き算で綾子が続けているが、どうも隼人が押し付けられそうな雰囲気になってきている。


 涼は、日向クリエイティブの今では常務取締役として勤務しているが、資源探査は常務として担当はしていても桐山を部長にして任せている。彼が現在、主として手掛けているのは、惑星世界へ進出に必要な推進機材などのGPFへの供給である。これはGPFの任務に、外宇宙からの地球防衛が任務に加わったのだ。


 GPFすでに世界のテロ組織はほぼ一掃してしまい、国同士の諍いもGPFの存在そのものが抑止力になっている。つまり、その存在は必要であるが、要するに暇なのだ。それに、GPFが昨年送り出した深宇宙探査機が、土星軌道で他文明によるものらしい球を見つけている。


 探査機は、持って帰る機能はないので、写真と電磁的は探査を行ったのみであるが、地球のものではないと判断できた。従って、それを友好的な相手のものとは判断しないのが、安全保障の考え方である。俄然、GPFの任務に他文明からの脅威に備えるという項目が上がった。


 そのようなことが短時間に決まったのは、一つにはGP8のGPFへの負担の軽さがある。GP8の正面装備は、すでに完成して支払い済であるために大幅に減っている。それに、GPFはいくつもの紛争処理を行っているが、現状では負傷者はいても死者は生じておらず国民からの評価は高い。

 そこに、『他文明への備え』というスローガンは抵抗なく受け入れられた。


 現状では、GPFは月までは行っているが、惑星には行く予定はなかった。そのため、当面惑星間航行の手法を確立する必要がある。重力エンジンはそこにある重力を利用するものであるから、自分では生み出せない。いや、生み出せるのではあるが、とんでもない動力が必要なのだ。


 ということで、涼が係わることになった。以前は資料・ノウハウの提供のみを行っていたが、社会人になった今は、涼が自分で主体的にやるということになった。そこで、企画・設計を行う航空宇宙部門を日向クリエイティブに立ち上げて、頑張ってやっているところだ。


 涼はその10数年の活動で、様々な国の機関や民間会社に伝手が出来ている。涼に必要な人材は、それらの組織から『また、そのような開発ができる』ということで情熱に燃えて誘いに応じる気まんまんである。しかし、引き抜くわけにはいかないので、短期での出向を受けることにしている。


 また、試作・製造はそれらの母体の会社が最優先でやってくれる。そのようなことで、GPFは短期間で惑星間航行に必要は推進機関・その他に必要な機器を製造し活用手法を確立した。その業務をまとめた日向クリエイティブは、出向者も含めた社員は380人、売上150億、計常利益50億の会社になっている。


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― 新着の感想 ―
[気になる点]  重力エンジン機が実用化されれば小説内のように通勤圏が拡大し、また過疎地の生活に不便な場所でも手軽に都市部へ買い物に出たり病院にかかったりできるようになるので、過疎地と呼ばれるような所…
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