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転生者が変える人類の近未来史  作者: 黄昏人
第4章 変貌した地球世界
45/54

4-5 涼の資源探査1

読んで頂いてありがとうございます。

誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

 涼は大学院の修士を終えて、現在では㈱日向クリエイティブに入社している。会社では資源探査部を開き、その長として勤め始めて最初の年である。これは、修士を終える際の母との話である。


「母さん、俺、日向クリエイティブに入るよ。ドクターコースに行っても、どうせ余り授業には出席できないし、授業の内容が出席しても仕方がないという思いがあるしね」

「まあ、そうね。元々宙ぶらりんの気持ちだったしね。いいんじゃない?ついでに、社長をやんなさいよ。会計は私がやってあげるから。まあ、私が経理担当常務ね」


「ええ!いやだよ。だって今は正社員が25人いるだろう?そんなの面倒は見切れないよ」

「うーん、まあ残念だけどそうだね。涼はいろいろ忙しいしね。今現在確かに正社員が25人いて、年商が87億、経費22億、経常利益65億というとんでもない会社よ。経費は、ほとんど人材派遣業に名を変えた青少年更生事業だけどね。それで、何をやるのさ?」


「うん、資源探査をやろうかと思って」

「資源探査?最近アフリカでタングステンの鉱床が見つかってドンパチやったけど。あんな感じ?」


「ああ、あれなんか、地下20m位で見つかっているんだ。たまたま、表面に露出していなかったために、これまで見つからなかったわけだ。現在価格で、50兆円位の鉱床があると言われている。

 考えている資源探査は、スカイカーを飛ばして地中に電磁波を撃ち込む感じだ。どうもスカイカーを探査に飛ばすのが国内では許可とかが難しいみたいだ。だから、取りあえずパプアニューギニアでやって、実績を付けて。希望する国をやる感じだ。その次は太陽系の惑星と衛星をやる」


「おーおー。なかなか気宇壮大だね。まあ、今やエネルギーはO.K.、だから次は資源って言われているからね。とは言え、見つける装置というかそういうものはあるの?」

「うん、彩香が作ったR情報のリストにあったものをアレンジした。ある波長の電磁波を当てれば地中100m位まで探査できるし、その結果を解析すれば何の鉱物かが判る。大体1,000m位の上空を飛んで探査すれば、そこに何かの鉱物があるなら見つかるよ」


「それは、手間仕事だね。無人でやったらどうなの」

「いや、反応が出たら再度帰って確認した方がいいので人がいた方がいい。それに無人じゃ日本では許可がでないみたい。海外はいけるかな。でも最初はいずれにせよ有人がいいと思っている。当面は、5機くらいスカイカーの改造型を揃えてやってみる」


「だったら、10~20人位は雇うことになるね。事務所とか倉庫とか修理工場とか要るだろうし。海外だと手間も人もかかるだろうし。いいぞ、金が出ていく」

「人を雇って、会社の金を使うのを喜ぶ社長は母さん位だな」


「だって、毎年役人に嫌味を言われるんだよ。収入の割に事業の規模が小さすぎるってね。それに結局税金を払うために、会社をやっているようなもんだからね。これは、しょうがないわよ。ところで、日本はダメっていう理由は何よ?」


「うん。まず経産省に当たったのよ。まあ日本では電磁波を放射しての調査となると、無許可と言う訳にはいかんらしいし、くまなく飛ぶのは難しいそうだ。それで経産省は自分でやりたいってさ。だから、探査機を売れって」


「ふーん。で売るの?」

「うん、春日製作所に作ってもらっているからね。売るよ」

「それで、PNGパプアニューギニアというのはどういうことよ?」


「うん、この資源探査の件は真柄教授にも話をしているのよ。そしたら、先生のところに資源探査の専門の人が来て、資源探査機ってないかと言ってきた人がいたらしい。それで、ちょうど僕がその話をしていたものだから、そういうものが出来ると言ったら、是非PNGで、ってさ」


「その人って、何人?」

「日本人だよ」

「何で、日本人のその人がPNGなのよ?」

「ああ、嫁さんがその国らしい。ラバウルってあるじゃん?旧日本軍の基地のあった」

「うーん、聞いたことはあるね」


「それで、PNGには絶対銅か金、あるいはコバルトの世界的大鉱床があるはずだと言ってる訳よ。それにPNGだったら探査の許可は簡単だって言うし」

「まあ、時差が1時間か、楽だし、いいんじゃない?」

 スマホで地図を見ながら綾子が言う。


 そういうことで、2035年10月、涼は埼玉県幸手市の外れにある日向クリエイティブ幸手事務所に立っている。ここは1haの土地に、延べ200㎡で2階建ての事務所を建て、用地内を均して砂利を敷いたものだ。そこに、スカイキャリーGE-C10とハヤブサⅡ型機が着地している。

 その脇に、涼と母の綾子にその秘書の成瀬美恵の他に、現地調査班の10人の男女が立っている。


 スカイキャリーはチャーター便であり、貨物室が1万㎥の容量を持つ機である。これは、運輸会社である日本高速運輸の社員8人によって運用されている。彼らが機体の操縦の他、載せている荷を固定等の管理を行う訳だ。


 ハヤブサⅡ型機は長さ8m幅2.5mの宇宙を飛べるプライベート重力エンジン機で、定員は8名である。今回のトリップは、涼の操縦によるハヤブサⅡ型機に精密機器と共に調査班の5人が乗り、スカイキャリーの客席に残り5人が乗る。スカイキャリーには20席のリクライニングの客席がある。


 探査スカイカー01から05の5機は、すでにスカイキャリーに積み込んでおり、そのほかにボーリングマシン一式、トラック3台、ニュータイプEV5台、ユニットハウスなどが積まれている。探査で有力だったら掘ってみるということである。中々気合が入っている。


 母綾子は社長として、自社の新事業の発足に立ち合おうというものであり、成瀬美恵は社長の綾子の秘書として立ち会っている。彼女は、涼の公然たる恋人であり、大学卒業後日向クリエイティブに入社している。大学の特待生だけあって、彼女は大変優秀であり綾子も喜んでいる。


 ちなみに、PNGの治安の悪さは世界有数である。首都のポートモレスビーでは、男でも犯されるという噂があり、街を歩くのを推奨されない。まして、若い女性はもってのほかである。本土の山岳地域においては最近まで首狩り族がいたといい、部落同士で血の雨が降るような争いをする。


 だから、日本全体の2倍以上の面積の大島であるニューギニア島本土では、村落に入る時には機関銃を持った護衛が必要になる。どうも、人としての考えが日本人などとは根本的に異なるようだ。だから、成瀬美恵もPNGに行きたかったが、調査班のリーダーでPNGに住んでいる桐山に止められた。


 とは言え、今回行く場所は最初はラバウル周辺であり、本土の東のラバウルのあるニューブリテン島の治安は本土よりずっと良い。本土に行く時は、昼間は基本的に地上に降りず、夜は軍の基地に泊まる予定になっている。つまりそれほど物騒なのだ。


 調査班の男8人、女2人の10人は、日向クリエイティブの社員として雇われており、殆どが鉱山、地質の専門家であり、リーダーはパプアニューギニア在住の桐山慎吾38歳である。これらの土地の購入、事務所の建設、機材の購入や人件費で、第1回の調査のみで32億かかったと言って綾子が喜んでいる。


「だけど、母さん。当たれば、下手すると1,000億円になるよ」

 涼が桐山から聞いた話をすると、綾子は顔色を悪くして叫ぶ。

「悪い冗談を言わないでよ!もしそうなったら、涼が社長よ!」

 その会話を聞いて、あきれた表情をする最近雇われた社員の一同であった。


 パプアニューギニア行きは、スカイキャリーとハヤブサⅡ型機が新ラバウル空港に降りる。ただ、宇宙を飛ぶハヤブサⅡ型機は1時間10分で着くが、大気中を飛行するスカイキャリーは12時間弱を要する。


 新ラバウル空港というのは、日本軍の航空基地であったラバウル空港が、1994年の火山の爆発で埋もれてしまい、その代わりに40㎞ほど離れたトクアに作った国際空港である。その爆発でラバウルの街は2/3が、厚さ4mの火山灰に埋もれた。


 スカイキャリーとハヤブサⅡ型機は、どこにでも降りることができるが、通関はしないとまずい。なので、その機能のある空港に降りるのだ。ハヤブサⅡ型機は1.2時間のフライトだから、その日の内に到着した。それに乗った涼達一行が桐山の案内で通関すると、濃褐色の顔色の大柄なメガネの男性が寄って来た。


 彼は、涼に握手を求め英語で話しかけてくる。

「ハロー、Mr.ヒュウガ。わたしはジョン・ネンゴ、この国の鉱業大臣だ」

「おお、聞いています。涼日向です、リョウと呼んでください。お出迎え頂きありがとうございます」


 握手する2人に、桐山が手を上げて互いにハグし、話しかける。

「やあ、ネンゴ大臣。わざわざここまですまないね」

「いやいや、大変期待しているんだ。奇跡の数々を生み出した当人が来た訳だからね。私も鉱業大臣として、我が国の鉱物のキャパシティに賭けている。だから、調査中の様々な手配は任せてくれ。手始めは、持って来た機材の通関だな。彼がその辺りをやってくれる。ナイサイ・ラナタだ」


 大臣が紹介するのは、40年配の明るい色の服を来た、やはり濃褐色の逞しい男だ。そのラナタが、桐山、涼それから調査班のメンバーと握手する。その日はそのまま空港を去り、涼と桐山一行は空港とラバウルの中間にあるココポのホテルに泊まった。

 そして、近くのレストランでネンゴ大臣と東ニューブリテン州知事らの歓待を受けた。


 ちなみに、R情報関係の技術は現在では概ね世界に向けて公開された。これが世界的に認識されたこと、さらに諜報機関の判断で、概ね日向家の者達は安全になったとして、日向家の警護状態は大幅に下げられた。


 だから、涼も様々なセキュリティ関係の機器は持たされているが、概ね自由に行動できるようになっている。ただ、PNGの日本大使館は、涼のエマージェンシーコールを受けるようになっており、涼の位置はGPSで把握されている。


 翌朝、空港に一緒にやって来たネンゴ大臣は、空港のエプロンでハッチの開いたスカイキャリーの巨体の横腹の前に立って作業を見ている。50歳は過ぎているだろうに、細目であることもあって足取りは軽い。開いたハッチからマイティによって5機の探査スカイカー下ろされる。


「ふーむ。私もこれのハッチが開いている所に近寄ったのは初めてだが、近くで見ると大きいな。GE-C10ということは一番小さいタイプだのにね。ふーん。これが探査スカイカーか。これが5機とは。探査は随分捗るね」


 話かける大臣に桐山が応じる。

「ああ、大体有望な候補エリアは絞っているので、そうですな。1ヶ月もあれば回れます」

「うーん。楽しみだ。それで、探査の出発は何時になるかな?」


「他の機材も下ろし終わるのが1時間後、それから30分軽くチェックしてだから、1時間半後だな。その間ただ待つのも退屈でしょうから、ハヤブサⅡ型で上空からこの島を見たらどうかな?」

「おお、それは有難い。私もハイパーライナーには乗ったが、このタイプの小さい機には乗ったことがない。是非お願いしたい」


「解りました。では、大臣、行きましょうか」

 涼が乗機のハヤブサⅡ型を指し、導こうとするとネンゴ大臣が驚く。

「おお、Mr.ヒュウガが操縦するのか?」

「はは、この機の私のライセンスは民間人としては2人目ですよ」

「ほほう。それは素晴らしい。わたしもチャレンジしてみたいものだ」


 このような話をしながら、ハヤブサⅡ型に行き、大臣を横腹のハッチから入らせる。席に着きながら、ハッチを油圧で閉め、ロックを半自動で厳重に懸けるのを見て大臣は言う。

「流石に宇宙空間に出るとなると、扉のロックも厳重だな」


「まあ、たかだか1気圧対応ですから、海中に比べれば、たいしたことはありません」

「なるほど、確かにそうだ。おや、このシートベルトはスカイカーのものと変わらないな」

「ええ。この機も重力変化はありませんからね。5点シートベルトなどは不要です。乗り心地はスカイカーと殆ど同じでしょう。ただ、長く加速することのみが違います」


 機長席に座った涼が管制に呼び掛ける。

「ハロー管制、こちらハヤブサⅡJP112。只今より進発する。鉛直に1Gにて1000m上昇し、そのまま45度の角度で1Gの加速度で2時33分の方向に上昇する。高度1,000㎞で一旦停止し引き返す。現在は午前9時30分、帰還の予定時間は10時45分だ」


「こちら管制、ハヤブサⅡJP112へ。O.K.了解した、君の機のフライトは、他のフライトと干渉しないし、後45分は他の機の離着陸はない。だから離陸を許可する。良いトリップを!」

「こちらハヤブサⅡJP112、管制へ。サンキュウ!」


 ハヤブサは、高さ1000mまでを1Gで加速しつつ機体を水平に保って上昇する。1000mの高度で秒速130mになった状態から機体を45度に傾け、さらに1Gで加速する。15分で高度1000㎞に到達し秒速5㎞の速度に達する。その状態で加速をやめて慣性で暫く飛び、その後大きく旋回して帰還コースに入る。


 ネンゴ大臣は、夢中になってスクリーンに映し出される地上の様子を見ている。真下に見える地上はニューブリテン島から、ニューギニア島、インドネシアの島々、さらにマレー半島に差し掛り引き返す。再度飛行場に着陸したのは、1時間20分後であった。大臣は大満足で機から降りてきた。



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