4-4 GPF初出動、現地での活動
読んで頂いてありがとうございます。
誤字脱字のご指摘ありがとうございます。
なにか、今回の話は腰砕けのグダグダになってしまいました。
GPFは時差の関係から、本部のアースプロテクション基地から2時間の時差のカロンビアには翌日10時に出発して現地に9時に着く。また、時差が9時間のガンバブエとゼンビアには翌早朝3時に出発して13時半に着く。なお、アースプロテクション基地から国連本部まで2時間の時差がある。
マーシャル総裁から、すでに世界に向けてGPFの初出動の宣言が出されていた。それに伴って、まずカロンビアに対しての警告がなされている。ニューヨークの国連本部とカロンビアでは時差はない。
「まず、私はカロンビアの国民の皆さんにお話をしたい。
私はさきほど、わが世界平和軍GPFにカロンビアに乗り込むように命じました。かれらの任務はカロンビア解放軍なる組織を解体、あるいは破壊し罰することです。その中にはその解放軍に同調している麻薬組織の構成員も含みます。
罰する罪は、嘗ての正当なる選挙で選ばれた政府を武力により転覆させたこと、多数の政府関係者を違法に処刑し、かつ市民に発砲したこと、また麻薬組織のギャング共が違法政府に抗議した市民を虐殺したことであります。
GPFの構成は、全て重力エンジン装備の戦闘機、攻撃機、大型戦闘艦のほか輸送艦であり、これらには勿論多数の戦闘員が乗っています。これらの戦闘機や艦は宇宙を通って移動しますので、本部のアースプロテクション基地からあなた方の国まで1時間あれば行くことができます。
市民の皆さんはもう少し待って下さい。我々のGPFは、これら軍と称するごろつき、さらに麻薬組織のギャングが全く及ばない圧倒的な戦力によって彼らを制圧します。明日9時の我々到着以降は、家の外に出ないで安全な場所にいて下さい。その後、GPFの名によって呼びかけるまで隠れていてほしいのです。
我々は数日で片を付ける予定ではありますが、そのようにならない可能性もあります。従って、ラジオまたはインターネットで呼びかけるGPFの指示に従って下さい。
さて、カロンビア解放軍なる組織と付随する麻薬組織の者に告ぐ。
私は、カロンビアの大統領と称するネグラス・カロン氏と話をした。我々国連及び国際社会は彼と彼の政府と称するものを認めておらん。しかし、正式な大統領である、ココラ・レクサイ氏が拘束され連絡がつかないこと、またカロン氏がこの犯罪組織の長であるので彼に警告したものである。
我々のGPFは明朝そちらに着いて、カロンビア解放軍なる組織と付随する麻薬組織の一掃作戦を開始する。警告するが、抵抗した場合には武力を持って容赦なく排除する。我々のGPFの武力は、これまでのものと一線を画しており、一切の抵抗は無駄であり死につながるか、罪が重くなるのみである。
我々の認識では、カロンビア解放軍なる組織は、麻薬組織の下請けの史上最も恥ずべき代物である。そこに全く斟酌する余地はないので、武器を持って抵抗する者は容赦なく殺戮する。我々のGPFは明朝10時に出発して、君らのカロンビアには9時に着く。我々の到着は皆がすぐに知ることが出来るであろう」
次にマーシャル総長は、時差7時間のガンバブエとゼンビアに向けて宣言した。15時からの放送は朝8時の現地で受信された。
「ガンバブエとゼンビアの皆さん。そして、その指導者と国民の諸君及び両国の国境で軍務についている将兵の諸君。現在両国は新たに発見されたタングステンの鉱床を巡って紛争状態にあります。我々の知る限り、この紛争によってすでに双方合わせて800人の死傷者が出ています。
そして、こうした紛争は往々にして全面戦争に繋がります。その結果は多くの死傷者の発生と、混乱、貧困そして互いへの深い憎しみです。世界の平和を守ることを責務としている我が国連はこれを看過することはできません。
とは言いながら、従来我々はこうした状況に対し、力を使った介入はしてきませんでした。その結果が多数の犠牲の上で泥沼状態になってからの調停ですが、あまりすっきりした解決にはなっていません。この反省に立って、国連は今回のような紛争には力を使った介入を積極的にやっていきます。
紛争のみではありません。人権上の問題である、誘拐、略奪、奴隷労働や強制労働、人々に害をなす種々の違法行為などについて、国の主権に捉われず積極的に関与していきます。
そのために、今や我が国連には、世界における紛争を止めるために、GPFという実力組織があります。GPFはアメリカ中部にアースプロテクションという本部基地があります。ここにおいてある軍は、宇宙を通って移動できます。従って、あなた方の国まで、1.5時間で行くことができます。
国連の総会の決議と理事会の承認のもとに、私は先ほどGPFに、あなた方の2国の紛争を止めるために出動するように命じました。彼等は、今日の13時半に現地に着くでしょう。それは、全て重力エンジン装備の戦闘機、攻撃機、大型戦闘艦のほか輸送艦からなっています。
現地にいる両国の軍の将兵に告げます。貴君らの大統領、ガンバブエのシンバイ・マキョロル氏及びゼンビアのアミン・オベト氏には先ほど連絡しました。その結果両大統領とも停戦に同意しましたので、その心算でGPFを迎えて下さい。決して発砲しないようにお願いします。
到着したGPFは両軍がいる現地に会見場を設け、我が国連の調整官と両国の代表とが議論して停戦の調印をお願いしようと思っています」
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麻薬カルテルのトップで麻薬王と言われるマラス・マルコスは、マーシャル総長のテレビ放送を見て怒り狂っていた。彼は46歳、鍛えた体の浅黒い肌色の長身の男であり、人を威圧する威厳がある。彼の屋敷は、首都ポコタに近い100haの広大な彼所有の土地の中心にある。
屋敷そのものは300m四方の頑丈なフェンスに囲まれ、本邸の建物は500㎡ほどの要塞のような地下1階地上2階のものであった。フェンスの中には、トーチカのような重機関銃を備えた8つの小屋があって本邸を囲んでいる。つまり、本邸は生活空間であり、防護は周りの小屋にいる合計60人の男たちによる。
さらには、フェンスの中には戦闘ヘリのアパッチが3機駐機しており、移動と防護に使われる。フェンスの周辺は、3重の有刺鉄線の防護柵に囲まれて、敵性のものが近づくのを拒んでいる。
マルコスのことを調べた、国連のGPI局長マイケル・コナーは皮肉っぽく言ったものだ。
「資産が200億ドルあるとか言うが、このような所に住まなくてはならんとは、なかなか犯罪組織のトップも大変だな。まあしかし、上がスカスカだものな。このような防備は意味がない」
「くそ!馬鹿にしやがって。数日で片付けると!おい、ペドロ!空から来るというが、空からの防御はどうなっている?」
マルコスの言葉に参謀役のペドロ・ミーゲルは顔を顰めながら応じる。
「はっきり言って、空からは弱いですよ。ヘリ位ならどうにでもなるが、GPFのビーとやらはシベリアでロシアの戦闘機や爆撃機を簡単に落としたというしな。それに、高空から岩を落とされたらどうにもならん。あの防御陣地やこの本邸位は簡単に潰れるぞ」
それから、数舜間をおいて正面からマルコスを見て言う。
「逃げた方がいい。ここでは、重力エンジンで空からそれも自由に着陸できる相手だと、好きなようにやられるし逆に逃げられん。正面からやるには相手が違い過ぎる。軍も手も足も出ないだろうよ」
「ふーむ。それほどの相手か?」
「ああ、ボスだってアメリカ軍相手にやろうとは思わんだろう?GPFというのはそれ以上だ」
「無論だ。あの軍相手にやれるもんか……。そうかそれほどの相手か」
「結局、俺たちは、見逃されて来たんだ。アメリカ軍がその気になれば、ここなどミサイルを撃ち込んで終わりさ。それが、俺たちがカロンビアという独立国に居るし、それを支配している連中の金玉を握ってきた。それに、アメリカでもかなり金を使ってきたので見逃されてきたんだ」
「うーん。前に出過ぎたか。お前の言う通りだったな」
「ああ。俺たちは前に出たんじゃだめだ。暗闇に潜むべき存在だ」
そこに、古くからの番頭役のアリゲラが、慌てて言う。
「おい、ペドロいまさら何を言ってる!俺たちは、国を乗っ取ると言って全振りしている。そのために構成員は全国に散ってるぞ。それに大統領のカロンに何て言うんだ?」
「アリゲラの兄貴。何事も命あってのことだぜ。構成員もやり過ぎた。逆らう奴をだいぶ殺したし、女も子供もやったろ?あいつらはどうせ助からん。それにカロンの馬鹿などほうって置けば良い。大統領とか言って舞い上がっている馬鹿だ。あいつも政敵を殺しすぎた。助からんよ」
ペドロはそのように反論し、再度マルコスの目を見て言う。
「わざわざ相手は明日の朝まで待ってくれるというのですよ。ヘリだったら、パナマのヤピサまで600㎞、2.5時間だ。ヤピサから車で1号線を走って運河に出て客船に乗れば良い」
マルコスは少し頭を下げて考えていたが、やがて決然という。
「よし、逃げよう。なーに、金はある。ペドロとアリゲラも行くか」
その言葉を聞いて諦めたようにフーと息を吐いたアリゲラであったが、それでも言う。
「アナベルたちはどうします?」
アナベラはマルコスのお気に入りの女であるが、他に彼の女は2人いる。ペドロとアリゲラもそれぞれ女がいるが、アリゲラの言葉には彼女らのことも入っている。
「そうだな。一緒には連れてはいけない。目立ちすぎる。しかし、ここは危ないな。よし、ヘリは3機あるから、カリにアナベラと俺の女2人を行かせよう。それから、メテジンにマリーとテラを行かせよう。目くらましになるだろう」
マリーはアリゲラの女でテラはペドロの女だ。
その指示を、アリゲラがテキパキと実行する。
「なによ、アリゲラ、何でメテジンに行くのよ?」
アリゲラの女であるマリーが、慌ただしく急かす相手に聞く。
「ああ、聞いただろう?GPFという軍が来る。ここは標的になってヤバイ。お前らは俺たちと一緒にいてはやばい。だからだ」
「う、うん。そうか。でもまだ時間があるじゃん。帰って来るのは難しそうだから、もっと荷物を持っていくよ。それに、旅費にお金を頂戴よ」
このように、マリーは別れにあたっても結構さばさばしている。
かくして麻薬カルテルはトップ3人が逃げ出し、そのことは中間層には早々に伝わった。そうなると、彼等も皆逃げ出したので、結局強固に見えた麻薬カルテルに残るは情報が入らない下っ端ばかりになった。弱い者には強いが、強い者には弱い連中の集まりはこのようなものだ。
ただ、マルコスの行動は国連のGPIにとっては予想の範疇であり、あらかじめ手は打っていた。マルコスの屋敷に近い軍のレーダー基地の探知データをGPIのエージェントが傍受しており、マルコスの行方は掴まれていた。
GPIから要請されたパナマ政府は、国道1号線に検問を張り、GPI職員と共に銃撃戦の末に3台の車に乗ってきた麻薬王他2名を逮捕し、6人を射殺した。
カロンビア解放軍も、トップは麻薬組織と似たようなものであった。マーシャル総裁の宣言を聞いた軍のトップは、大部分が逃げ出したが、組織が崩壊するまでは至らず、軍の体裁は保っていた。多くは市民から憎まれていることを知っていたので、逃げられなかったというのが正解ではあった。
しかし、翌朝陸軍本部の上空1000mにほぼ同サイズのギャラクシーと輸送艦サンライズが遊弋し、その周りをビー30機、メテオ10機が飛び回っているのを見て、かつ降伏せよという通信を聞いて彼らの士気は崩壊した。しかし、やけになった士官が、部下を指揮して2基あった地対空ミサイルを撃った。
しかし、それらはすぐさま、ビーのAIによってコントロールされた電磁砲で破壊され、衝撃で爆発した。その報復として、1機のビーが本部に急降下して、無人のグラウンドの中心に電磁砲を放った。秒速7㎞で、径25㎜×長さ40㎜×1.5㎏の砲弾が地面に撃ち込まれたらどうなるか?
それは、ドスンと言う衝撃と共に地面にめり込んで、土との大きな摩擦のために高熱を発して砲弾も土も融けた。さらに地下水が水蒸気爆発を起こして、ドーンという音響と共に熱い泥を10mほど吹あげ撒き散らした。そこにいた300人ほどの将兵は驚いて飛びあがり、1/3ほどは恐怖の余りうずくまった。
その後、武器を置けと言う上空からの命令に背くものはいなかった。サンライズが教練場におりて、GPFの2千の兵が展開し、将兵が置いた武器をまとめて捕虜とした兵を整列させた。こうして陸軍本部を武装解除した後、捕虜を使って全ての基地の武装解除し終わったのは3日後であった。
その後、現地のGPFが市民に安全になったと呼びかけると、人々は歓声を上げて街に繰り出した。その状態では、逃げ出した麻薬組織の者はこそこそ隠れていたので、争い事は起きなかった。しかし、彼らについては、現地の警察組織を使ってあぶり出し、有罪判定機GJMによって逮捕していった。
GPFの2千人の連隊はその後1ヶ月現地に残り、派遣された300人の国連職員と共に、無罪で拘束されていた人物の解放、有罪の者の逮捕を行って秩序を完全に取り戻した。麻薬組織の者は国外に逃げた者はいるが、大部分が逮捕され、トップ3人の他212名が多数の殺人の罪で死刑になっている。
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ガンバブエとゼンビアの国境においては、現場上空にギャラクシーとサンライズが遊弋し、その周りをビー30機、メテオ10機が飛び回った。それを見て両軍は驚き、とても敵わないとの賢明な判断の下に、すぐさま攻撃はしないとの通信を発した。
そこで、2㎞ほど離れた両軍の陣の真ん中に、GPFが仮設事務所を建設して、両軍の代表者を呼び、停戦する旨を改めて表明させた。1日後には両国の代表者が現地にやってきて、和平条約を締結した。結局国連が両国の立ち合いの下で厳密に国境線を出し、その両側で各々採掘を始めることになる。
2つの出動の結果を聞いて、マーシャル総裁は一人言った。
「うーん、どっちも損害なしに終わったが、拍子抜けもいい所だったな。特にカロンビアではドンパチは避けられないと思っていた。拍子抜けするほど、判りがよいやつばかりだったな。結局断固とした組織と態度があれば、大抵の物事は解決するということか?」




