表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生者が変える人類の近未来史  作者: 黄昏人
第3章 変貌する世界
40/54

3-12 北朝鮮転じ朝鮮共和国の変貌

読んで頂いてありがとうございます。

誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

北朝鮮で一話になるとは思いませんでした。

 北朝鮮では、2030年4月12日にロシアと共に核兵器を無効化された。こちらはロシアと違って、爆撃機B2により、15,000mの高空を核爆弾や弾頭の保管場所として調べ上げている上空を飛んだ。この機には核無効化装置の3型が積んであり、これによって無効化された訳だ。


 護衛にF35戦闘機が8機ついていたが、通常独立国の上空を敵性の爆撃機が悠々と飛ぶなどあり得ない。しかし、これには前例があり、その時の北朝鮮は何もできなかった。北朝鮮という国は、ミサイルは各種持っており、中には迎撃の難しいロフテッド軌道に乗せられるものもある。


 しかし、防空ミサイル体系は極めて貧弱で、戦闘機や爆撃機を撃墜するだけの精度を発揮する性能はないと言われる。だから、ミサイルも地上を狙うなら兎も角、ジェット機を撃墜する能力はない。つまり、米軍が安上がりの爆撃機を飛ばしたのは、結局北朝鮮の防空能力の低さを侮ってのことである。


 そして、そのお陰で念入りの可能性のある場所は総なめに処理した結果、全ての弾頭及び濃縮ウランを無効化できたと後に確認できている。そして、核兵器を無効化された北朝鮮は、外からのミサイルなどの攻撃に極めて弱い存在であり、戦いにならない。


 核兵器の場合には落ちれば大被害が出るので、万が一を考えればそれを恐れてちょっかいは出せない。指導者の朴総書記は、核が無効化されたということをロシアの反応から承知したのだろう。家族を連れて中国に亡命しようとしたようだが、中国に断られて断念している。


 それは当然である。核無き今、以前に核をネタに様々な脅し文句を並べて放送し、世界の敵と化している朴を受け入れるメリットは全くない。北朝鮮が何かをするごとにマスコミに大きく報じられるのは、彼らが核をもっていて、それを実際に使いかねないと見られているからである。


 北朝鮮の指導部にとっては、国を開いて外国の援助の元に交易が始まって、2,600万の国民が豊かになることなど全く関心がない。今のように餓死する者がでるほど国民が貧しくとも、自分とその周りが豊かな生活が出来れば良いのだ。つまり、今の状態を永遠に続けたかった。


 しかし、その肝心のネタが壊れてしまった。そして、世界中に逃げる所はない。一時北朝鮮はカンボジアと仲がよく、首都には北朝鮮の『喜び組』の出演するレストランがある。だが、日本を始め西側の援助が入っているカンボジアが、朴を受け入れるとは考えられない。


 ただ、ずっとランクが下がったとは言え、北朝鮮の脅威は消えたわけではない。彼らは日本列島まで届く多くのミサイルを持っており、大型のそれが都市に落ちたら被害はしゃれにならない。今は『そら』と『しでん』があるものの、極超音速のミサイル相手では相手が撃った後に迎撃のため発進しても間に合わない。


 だから、宇宙に『そら』を常駐させる案があるが、今のところは実行されていない。これは、米軍、韓国軍ともに実質的に朴が権力を失ったと見ているからである。後継者が軍中心の集団指導体制であれば、日本や韓国に向けてミサイルは撃てない。何しろ北の守りは無いに等しいからである。


 2030年5月の下旬、北朝鮮の現在の指導者である7人が集まっている。トップは、軍の次席司令官の郭ヨンス大将である。総司令官は現在牢に入っている朴チョルであるから、郭は実質的な軍の最高指導者である。


「なるほど、朴は食べるのを拒んでいると?」

 郭の質問に答えたのは防諜組織のトップの李ソンミンである。

「ええ、水は飲んでいるのでまだ生きていますが、大分痩せこけていますよ」


「ハハハ、あのブタが痩せこけているとな。それは是非見ないとな」

 第2軍の司令官の崔ミルスが笑って言うが、皆嬉しそうだ。ここにいる者で、あの前独裁者に好意を持つ者はいない。多かれ少なかれ、無茶な命令を果たせず叱責されているし、体罰を受けた者も多い。


 郭ヨンス大将が言う。

「まあ、あれが死のうとどうでも良い、後で死の経緯を説明できれば良い。まあ自分で絶食しての餓死は処刑よりよい死に方だ。それより問題は今後どうするかだ。残念ながら、わが国の経済はすでに破綻している。どこかに救ってもらわないと、次の収穫までに食料が尽きる。しかし、軍で韓国を侵略して略奪するなどのことは夢物語だ」


「韓国に併合されるという案は無理だと思う。まず彼らが受け入れない。仮に受け入れたとすると、我が民は永遠に2等市民で暮らすことになる。我が国から逃げてあちらに行ったもの達の扱いを見れば判る。それに、彼等が自分達より劣ると考えている外国人への扱いもひどい。


 だから、やはりこの国の形は保っておく必要がある。我らは貧しい。しかし、人々に誇りは必要だ。正直に言って、私は命惜しさにあの独裁者にはいつくばって生きてきた。そして、人々の苦しみを見て見ぬふりをしてきた。しかし、いまそれは改めなくてはならん。


 朴は今度の核も無効化で、自分が力を失ったことを悟った。その意味では核に全てを賭けていたのが良く解る。我々はその金があったら食料をと思っていたが。まあ、それで我々は彼の懲罰部隊を処分することができ、彼とその一族を拘束することができた。


 もう、彼の影におびえる必要はないのだ。我が国は彼の祖父の無茶な農業指導で生産性を落としたが、これを改善すれば国民が食ってはいける。国民は勤勉であるし、あれほど無茶な統制に従ったほど素直である。だから、労働力を求めて海外からの投資があるはずだ。


 それに、電力の不足と、石油を買う外貨が問題になっていたが、日本では安い発電設備や、石油を使わない自動車が開発されている。それを導入すればそれほど輸入にお金を使う必要はないだろう。そして国を開けば国連や外国の援助があるはずで、我々の暮らしを良くする手助けをしてくれるはずだ。

 今までは朴が国を開くのを頑なに拒んできたが、あれは人々が外のことを知って自分が追い出されるのを防ぐためだ。今後は国を開いて大いには外の人と付き合い必要がある」

 このようにしゃべったのは、政治局常任委員の最長老の民リョクスである。


「はい、民長老。私も貴方の言われることに賛成です。しかし、わが国はいくつかのことで国際的に謝罪をし、償う必要があります。インターネットでの窃盗、他国の国民の誘拐などです。これらについては私が資料をまとめていますので、説明はつきます。

 また、わが国民の27,735人を強制労働所に入れて虐待しましたが、すでに多くが亡くなっており、現在は6,523人のみ存命です。これらは前政権の非道として発表すべきと思います。できれば隠したい所ですが、残念ながら国際的に広く知られており、隠しきれないでしょう」


 最も若い政治委員である、金ヨンサイが言う。これ等に対して郭ヨンス大将が穏やかに言った。

「うむ、民委員。私も韓国との併合はないと思う。我々は貧しくとも穏やかに暮らしていければ良いと思う。金委員の言う通り、我々は多くの人倫に悖る行為を国としてやってきた。こうしたことは無論もうやめだ。外の人々から軽蔑されるだけだ。そして、そうした不法な行為はあの独裁者に背負ってもらおう。


 とは言え、これは金委員の言うように公表せざるを得ないであろう。ここで隠せば我々も前政権と同様な信頼できないものと捉えられる。無論、我らも強制されたとは言え責任はあることは解っておる。

 ところで、拉致被害として日本がこだわっておるが、日本は重要な援助元になる。彼らはどうなった?」

 郭ヨンスが聞くのに、金委員が応える。


「ええ、日本政府が掴んでいない者を加えると全部で27人ですが、その内5人はすでに返しています。残り22人中亡くなったのが、12人であり10人が生きております。そして、彼らの子供と孫が14人います」

 郭ヨンスがさらに聞くのに金委員が応える。

「なるほど、死者が12人であるが、自然死だろうか?」


「はい、前代のミヨンの時処刑しろと命じられましたが、民委員の説得でそれはなくなりました。だから皆自然死です。そして、彼等は比較的恵まれた生活をしています」

「ふむ、では良いな。そして、いいかな?国連に連絡するぞ。われ等を普通に受けいれてもらい、最貧国として援助をお願いすることになる。残念なことだが」


 かくして、北朝鮮は国連の調査団を受け入れ、国を開き国際社会に復帰することになった。国連調査団は基本的にGP8のメンバーになったので、日本も加わっている。日本の関心は拉致問題であり、10人が生存ということで日本中が沸いた。


 一方、韓国からの拉致被害者の数は日本の比ではなく、約650人に及ぶ。しかし、その経緯は複雑な場合が多く、中には処刑された者もあったが、元から国民の関心は低く、あまり韓国は問題視しなかった。


 また、従来から北朝鮮最大の暗部と言われていた強制収容所については、事実であることをその記録と共に公表し、保護した生存者にも会見させた。そして、その実態を詰めかけた海外のジャーナリストの前に晒した。


 加えてインターネットを通じた不正な金の搾取、偽札作りの工場など国として行ってきた明らかな不正行為も晒した。このように、国の暗部も晒したことで、以前の指導者に率いられた国が如何にひどいものであったかを僅か数日で如実に示した。

 そして結果的に、改められた北朝鮮指導部は概ね公正なものとして国際的に好意を持って評価された。


 その後、新生朝鮮共和国は、2032年5月に国政・地方選挙を行った。その結果、120人の国会議員が誕生、開国の時に活躍した金ヨンサイが大統領に当選して就任した。その間、日本から5年計画で無償3千億円、有償2兆円の援助を得た。


 韓国の援助額は、円換算で無償2千億円、有償1兆円であるが、本来韓国が日本から受け取った植民地時代の精算金を払う必要がある。これは日韓基本条約において、韓国が植民地時代の精算金について南北分を合わせて受け取っているからである。それを日本から指摘され、しぶしぶ先の金額にしたものだ。


 さらに、朝鮮共和国は国連その他から、合計無償30億ドル(日本円3300億円)に有償300億ドル(3兆3千億円)を得た。そして、その中からまず8億ドルに及ぶ数々の不法行為の賠償金を払った。2030年に不足する食料については、無償援助等とは別に様々な国からの穀物の直接援助で乗り越えた。


 さらに、全国の発電設備を一新し、ニューEVタイプのトラックやバスを買って国民の最低限の交通手段を整えた。無論そのために必要な電子バッテリーの励起工場も建設している。その中で電力、上下水を整えた工業団地を、港に近い都市近郊にいくつも整備した。


 農業については肥料が必要であるが、日本から、化学合成の窒素肥料に加え、原子変換によるリンとカリウム肥料を輸入する体制を整え、化学肥料を使って農業生産高を2倍に高めた。また、水産業の振興のために、電子バッテリー駆動の漁船を大量に買っている。


 このことで、2032年には、朝鮮共和国は有り余る農業生産高を上げるようになり、畜産にも力を入れるようになって、さらに2年後には肉類も国民が不自由なく取れるようになった。その間、装備を一新した漁業の収穫も大きく上がって、人々は魚類を肉より先に不自由しなくなった。


 一方で、日本と韓国の繊維などの企業が、近く安い人件費と素直な国民性に目をつけて整備された工業団地に数多く進出した。これらの産業は、比較的付加価値が低く、人手が必要であるのだ。このように外国産業によって、国民の働き口が得られる。


 だが、こうした進出企業のみに頼っていては人手を使われるのみになる。そこで、共和国政府は、すでにあった日用品の製造工場の生産設備の更新・改良から始めた。さらに、国産の綿を使った繊維製品の国営工場からの輸出を目指し、自国資本の育成にかかっている。


 また、共和国は金などの貴金属、鉄、タングステン、モリブデン、銅、マンガンなど比較的豊富な金属資源があり、非金属資源もマグネサイトなどが豊富である。しかし、劣悪な採掘と輸送インフラにより生産高あがっていない。この点では、鉱業生産を上げるための資本投資については、外資を呼び込んで効率的に行うことにしている。


 このように、北朝鮮時代であれば莫大である資本を得て、朝鮮共和国の開発は急速進み、その姿が変貌していった。それは一つには、燃料が不要でかつ極めて簡易かつ安価な発電システム、さらに同様に燃料が不要で簡易な輸送システムが使えたことが大きい。


 また、大容量でコンパクトかつ安価な電子バッテリーは、朝鮮共和国のように電力配電網が貧弱な場合には各戸や工場、商店の電源として使える。日本の通常の家庭の月間の電力消費量は5㎾hレベルであるので、150㎾hのバッテリーで1ヶ月もつ。


 朝鮮共和国では電力消費量は精々その半分なので、電力線を張り巡らすより、バッテリーの集配システムを整える方が安い。そういうことで、共和国では励起工場が発電所としての機能を果たすことになった。なお、これは朝鮮共和国のみならず、途上国全般で見られたシステムである。


 2033年朝鮮共和国は、前年の推定GDPが3,200ドルで以前の朴政権時代の倍を超え、国民に飢えはなく、肉は少し高いが魚は普通に食べることができるようになった。進出企業は、中小企業が多いが日韓を中心に100社を超え、30万人の雇用を生み出している。


 また、従来は停電が多かったがそれが殆どなくなり、電灯とラジオしかなかった家に、LED電灯、テレビ、洗濯機、冷蔵庫などは普通にあるようになった。また、中学に通えない子供はいなくなり、その上の高校を目指す子も増えている。


 街に増えた外国人が人々に聞くと、会う人殆ど全てが「朴時代に比べものにならないほど良くなった」と言う。確かに、以前に比べ町に本物の笑顔が増えたことは事実である。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点]  国民の気質としては、韓国よりも北朝鮮の国民のほうが素直で組織で働くには向いているような気がしていましたから、小説の内容には納得します。  韓国の場合、なまじ豊かになった結果、国民から素直…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ