3-9 国連改革と世界
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GP8が押し付けた国連の改革は、80数年の国連での痛い経験を踏まえて揉んだもので、理にかなったものであったが、やはりGP8の意向が色濃くでており、独善的と批判する者も多かった。
まず、国連の役割は大きく分けて、自然災害を含めた安全保障と貧困の撲滅であろう。安全保障については問題児であるロシアと中国の拒否権の問題もあって、殆ど何もできなかったが、GPFによって実際に担保できる見込みが立った。
後は貧困の撲滅、つまり世界の人々が、人間らしい生活ができるようにすることだ。この点では国連は様々な下部機関を作って活発に活動して、それなりに成果もあげてきた。その結果救われた人、また地域の農業などが盛んになって生活が改善された人も多い。
つまり、国連の存在価値は、むしろ貧困の撲滅や、紛争の後始末としての難民救済などが目立っており、今後も期待される点である。しかし、一方で先進国や中心国は国連の票が欲しいために人気取りとして、独自の援助を行っており、この調整がうまくいっているとは言えない。
だから、GP8は安全保障のみであれば国連を解体したところであるが、貧困の撲滅は今後も必要であり、積みあげてきたノウハウは貴重である。また重要な役割であった、紛争の後始末としても難民救済などについて、今後はGPFによって難民などは出さない心算であるので今後は殆ど不要であると考えている。
さらに、GP8は紛争を起こした場所である、南スーダン、ミャンマー、チベット、ウイグルなどについては武力を使ってでも積極的に関与する方針である。これは、国連で半数以上の賛成を得れば、GPFの運用の委員を出した国で行動を決めていいのだから、従来であれば無理なことも可能である。
GP8はGPFを使った安全保障において、基本のところで他に口出しさせるつもりはなかった。つまり、票決はするが過半数の評決を得た案件に対して、G8が再度票決を取って過半数または2/3の賛成で決めるということだ。そこに拒否権はないから、過半数を取るべく動けということになる。
ちなみに、2/3の票が必要なのは国の主権を押し切るケースが主たるものである。
だから、GP8は安全保障をGPFで担保するとして、今後の国連の主力を全世界の経済力上昇に置きたいと思っている。ところで、このための貧困の撲滅については、予算の問題や各国の国連の票が欲しいという思惑もあって国連の主導で行うケースはむしろ少なく、先進国の援助による場合が多い。
このためもあり、貧困対策の全体を統括するシステムがなく、実施した投資が発展には繋がらないケースも多く非効率の原因になっている。ちなみに、経済を発展させることは簡単である。有効な方向を決めて投資をして、その結果生まれた雇用や需要を軸にそれを膨らませていけばよいのだ。
日本の高度成長は、生産の増加による雇用、その結果の消費により経済がどんどん膨らんでいった。そのことは経済学的に理解されており、様々な開発への投資のための公的銀行が設立されている。これらの融資または無償援助が成長のきっかけになる投資である。
このように、投資機関として世界銀行やアジア開発銀行やアフリカや南アメリアの開発銀行があり、さらに先進国が持っている銀行の役割を果たす援助機関がある。これらは、長期的投資によって、主としてインフラ整備を通じて経済発展に貢献している。
しかし、先述のように、過去のこれらの投資は国の全体をみておらず、申し出のあった案件を取り上げたり地域エゴなどによって決められるなど、必ずしも効率的ではなかった。従って、国連が主導して、貧困国ごとの経済発展プログラムを作成して、そのメニューに沿って一本化した投資を実効していくのだ。
AIについては、重力エンジン制御の実用化するにあたって開発した技術が大いに発達した。この技術を使って、こうした貧困国の経済発展プログラムを策定する手法が日本の大学で開発されている。これを使って、すでに12カ国の合理的な経済発展のプログラムがすでに作成されている。
こうした仕組みを導入すること、またプログラムの採択に当たっては、国連で票決することになる。だが、全ての参加国が平等に1票などということは愚の骨頂である。利益を受ける側と費用を負担する側では自ずから立場は異なる。また国によって、貢献度や何かを成そうとする場合の実行力が違う。
ところで、ある層に対する援助や補助の方向や額などを決めるのは、一つの国の場合は議員である。現状では、国やその地方であれば、成人がその選択の投票の1票を等しく与えられる普通選挙が当たり前である。これは、同じ国民だから公平であるという感情からくる理屈で、概ね文句を言うものはいない。
だけど、選挙権を持つ個々の国民の国に対する貢献度(?)は大きく違う。貢献度をどう測るかは、難しい問題であるが簡単に計量できて測り易いのは納税額である。だから、昔の日本は一定の納税額以上の男子のみに選挙権が与えられた。そうした場合に考えられる弊害は簡単に思いつく。
つまり、女性が除かれている点は置いておいて、議員は有権者の利益のために働くことで議員が続けられるので、政策は富裕層がより豊かになるように立てられる。そうした場合には、貧富の差がさらに広がることで社会が不安定化する。つまり、多くの貧しいものが社会に不満を持つようになり、犯罪が増えて富裕層も安心して暮らせないようになる。
そういうことで、人々に社会に不満を持たせないようにする、福祉というものが考えられるようになった。これは江戸時代でもそのような政策は実施されている。施政者が、民の満足を得ることは必要と考えるのは東西を問わず真理である。
今の日本の社会は欧米の真似をしてきたのだが、安全な国と言われているし、海外経験が多い住民の一人としてそう思う。これは、国民が政府に深刻な不満を持っていないからであろうか?または、単に民が御し易く大人しいからであろうか?
一方で先進国ではあっても、アメリカは治安の良い国ではないし、ヨーロッパ諸国でも主として移民が不安定化の原因になっている。アメリカの場合には、結局貧富の差が大きすぎ、保険などのセーフティネットがお粗末なことが原因であると思う。
ヨーロッパは、植民地を保有しそこから搾取してきた歴史もあって移民が多いが、どうしても移民の収入は在来の人々に比べ劣る。そこで不満を持つのはやむを得ないが、またそれに加えメンタリティが違う。つまり、こうした移民は犯罪への心理的ハードルが低いように思う。
先進国が途上国に援助しているのは、国の中で税金として徴集した金を社会保障に使っているのと同じ考えに基づいていると思う。その根本の理由は、相手が気の毒とかの感情より、世界の不安定化を防ぎ、安全にして自分または国が危ない目に合わないためである。
先に挙げた例で、国内の貧富の差が犯罪の根元にあると述べたが、世界の国ごとの貧富の差はそんなものではない。ドルベースで年間一人当たり10万ドルを超える国もあれば、500ドル足らずの国があるので、その比は200倍である。ちなみに、身近な北朝鮮は年1,500ドル程度である。
不公平と言えば実に不公平であるが、そうなった原因には風土があり、人々の特性があり、歴史があって一概には言えない。しかし、ある国で幾つかの階層があって、その層の間において平均で10倍を超える収入の差があれば、確実に暴動や革命が起きるであろう。
しかし、国が違い、国境があり、貧しく武器を持てない人々は豊かな国から財を奪う術がない。大抵豊かな国は軍も強いが、これは自分に攻められる理由があり、守るべきものがあることを知っているからだ。だから、人々は他国であれば相手の貧しさなどの苦境に無関心であっても『安全』と思っている。
とは言いながら、単純に経済を考えた場合に、他国は豊な方が基本的には有益である。つまり、相手が自分の市場になって、生産物やサービスを買ってくれる対象になるからである。しかし、一方で豊かな相手は同時に競争相手にもなり得る。
日本と韓国の関係にように、そのようなケースは多く、却って不利益になることもある。
本当は相手が豊かで購買力があって、技術などが遅れているのが理想であるが、そのようにうまい相手は資源国に限られるだろう。ただ基本的には全体が豊かになることは、チャンスが広がる反面競争が激しくなるので進歩も早く、長い目で見ると有益であるとは言えよう。
GP8の改革案は、議会においては基本的に多数決である議決を採択するが、それがそのまま決になるのではない。その後、再度実行者・出資者の多数決で決めたものが実際の実行の決になる。つまり、GPFについては、現在の構成員であるG8が実行者としての2次議決の委員になる。
また、貧困撲滅プロジェクトについては、今後は国連に投資の管理を集中し、2次議決の委員は一定の割合で出資したものとしている。当面の委員はGP8プラス5か国程度になっている。この出資については、少なくともGP8は、今後軍事費が大幅に減る見込みなので、減った分の1/3程度を回す予定である。
GP8は、今後GPFの設立で今後世界の軍事費は劇的に減っていくと考えており、そこから1/3程度を貧困撲滅の資金に投じたいと考えている。そのことで、現在の3倍程度の投資になるので、貧困撲滅が大幅に早く進むと期待している。
この資金は貧困撲滅ファンドという名前で、世界銀行やアジア・アフリカ・南アメリカ開発銀行などで預かり運用することにしているが、出資先は国連が管理する。そして、世界銀行や各大陸開発銀行の資金も、国連で決められる貧困撲滅スケジュールに沿って支出されることになる。
また、無償資金協力については、貧困撲滅スケジュールに沿っている限りは、各援助国が直接実施しても良いことになっている。従来からの継続案件も多く、各国が自国企業に施工をさせたいという意向も強いためである。
これらのGPFの創設とその役割や貧困撲滅スケジュールに沿った投資などの国連改革が、公表されると識者に評価するものが多く、マスコミからも概ね高評価であった。特にGPFについては、GP8以外の国でもGPFの結成とその役割を熱狂的に称賛する人々も多い。
これは、GPFが先進国の集まりによって運用され、各国の軍を無くすことを目指していることから一定の信用がおけると判断している。さらに、賛成者は減った膨大な軍事費が国内・あるいは世界の貧困対策に使われることを喜んでいる。
そうした賛同者の多い国々では軍の廃止に動いているケースも多く、5年程度以内には半数以上の国々で軍が廃止される見込みになってきた。ただ、軍は大きな雇用先であるため、簡単にはその要員を馘首は出来ない。このために困っている国も多いが、その点では日本にしても同じことである。
ところで、貧困撲滅の手法は、基本的にインフラ整備による投資によって雇用が生まれ、その対象地域が便利になる結果その価値が上がる。雇用が生まれると、その収入によって消費が増えて、商業・工業が起きるまたは盛んになることで、経済が膨らむ。
インフラは、道路、鉄道、電力、上水道・下水道、灌漑などであるが、いずれも生活の利便性を上げると共に、人々の生活の糧を得るための工業、商業、農業などの産業が盛んにするための基礎になる。このように、インフラ建設が経済の循環を起こし、経済力を上げていくきっかけになる。
中でも電力は非常に重要である。世界中どこでも町と名のつくところは電力が供給されている。しかし、途上国では給電網は極めて貧弱であり、需要に比して発電能力が足りない場合が多い。このため、停電はしばしば起き、給電時間が限られる計画停電が行われていることも多い。
加えて途上国においては、電気料は収入に比べて高いので、料金を節約するための節電を行っている家庭も多い。だから、家電もその購入費用よりも高額な電気料金のために買えないということになる。料金を決めるのは電力供給会社であるが、多くは政府資本が入っている公社であるため値上げは容易でない。
そのため、電力供給会社は赤字であることが多い。
この場合、電力料が入るので投資はできるが、発電設備は極めて高価であり、かつ石油炊きの場合には運転費も高いので、結局料金が高くなって消費が落ちる。
この点で、日本が行っている電子抽出型発電システムの無償援助がある。これは、設備費が石油炊きの1/5レベルであるため実行出来ている面がある。だから被援助側の設備費はゼロである。しかも、運転管理費については、人件費が安い途上国においては、従来に比べてゼロに近い。
この結果、電力会社は電力供給網を大幅に拡大する投資を行っても、電気料は従来の1/3以下として十分利益が得られている。結果的に電力消費量は以前の3倍以上になって、住民はいわゆる文化的生活ができるようになった。このことで、これらの援助は消費者たる住民にも供給側にも極めて好評である。
こうした、貧困撲滅のプロジェクトにおいて、投資コストが低く、文化的生活への効果の高い、電子抽出型発電システムを用いた電力供給のパートは、何れの国で第1優先で積極的に行われた。




