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転生者が変える人類の近未来史  作者: 黄昏人
第2章 争いの顕在化と変化する世界
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2-1 ロシアの宣言とその対応

読んで頂いてありがとうございます。

誤字脱字の指摘をありがとうございます。


一瞬でしたが、SF空想科学で1位になりました。本当に久しぶりで嬉しかったです。

またよろしくお願いします。

 ロシアのボロゾフ大統領は、2030年4月12日、世界に向けて宣言を発した。ボロゾフは2028年10月に大統領選挙で85%の得票で当選し、正式に大統領になった。彼は、すでに軍と治安当局を握っているので、投票場に監視員を配置するなどして選挙を行っている。


 これは、得票率90%を得たプチャーキンの最後の茶番選挙と一緒である。ただ、あの時は実際支持したものが6割は居たと言われるが、CIAの分析ではボロゾフの実際の支持率は50%に満たない、だが、これは彼の極端な政策というより、むしろ国際的孤立により不便にかつ貧しくなっていく現状への不満である。


 勿論、政策を危険視するものも多く、厳しい規制の中でもロシアの軍人や若者は過去5年のうちに30万人が、国外に逃れている。反体制の行動は投獄され殺されるロシアでは、公然たる運動はできない。だから密かに逃れるしかないのだが、大切な人がいる場合はそれも出来ない。


「うーん、やっぱりボロドフか。どうしようもないね、ロシアは。滅びの道だ」

 家での団欒で、ボロドフの大統領選出のニュースを、テレビを見ての涼の言葉に彩香が反論する。

「でも、ロシアの皆がああいう人ではないでしょう?反対している人だっているよ」


「それはいるさ。でもそれが世論にならないのがロシアだよね。未だに、国外に逃げて声を出している人達を暗殺している。国内はもっとひどいはずさ。結果、世界のものが中国以外から殆ど入らなくなっていて、どんどん貧しく不便になっていく。

 また、ロシアも天然ガス・石油は今のところ売れているけど、例の発電やら新しい自動車が世界に出回ったら収入も無くなるよ。


 その原因は、ウクライナを破壊した挙句に核で脅してそのまま逃げたよね。しかも、占領して破壊した東部は未だに殆ど手つかずだ。今の状態は、それらの行動への世界の答えだよ。少なくとも、ウクライナに関して悪かったというロシアの世論は聞こえてこない、


 また、今のように茶番の選挙をやって、政権に反対の声を出せなくなっているのは、結局そういう社会を作って来た多数派のロシア人のせいだよ。それに、ボロドフの本当の支持者は4割しかいないというけど、本当に不満なのは生活の不便さ貧しさだな。そのボロドフの、世界を敵にして攻め込みかねない政治姿勢の対しての不満ではないよ」


「うーん。そんなことを言っても、私達と同年代やもっと若い人には責任はないよ」

「うん、まあそうだね。責任はないし、親世代には間違っているとは言えないだろうけど、本当にボロドフへ反対のその年代がどの程度いるかな?その年代は、周りに影響されやすいからね」


 その言葉に、父隼人が口を挟む。

「うん、涼のいうことも正しいと思う。しかし、日本自体が戦前においてそういう状態だったな。それが、戦争に負けることで日本が全然強くないことを悟って、強制的に変って行ったんだ。お前はロシアをそのように強制的に変えようとしている訳だろう?」


「うん、そうだね。考えたら戦前の日本ってロシアと大差はないな。まあ、とは言え、白人国に囲まれて虐められていたという条件はあるけどね。でも、ロシアは情報が制限されていると言っても、この情報社会であの程度の意識ではまずいよ。まあ、とは言っても僕らのやることは変わらないけどね」


 核無効化装置の製造と配備は着々と進んでいた。2030年春の段階ではミサイルに装着する1型については、すでにNATO軍のミサイル1500基に装備されている。また、日本は500基、アメリカが3000基を装備して、世界各地の基地と、潜水艦を含む艦艇にそのミサイルを配備している。


 また地上配備型の2型については、ヨーロッパの主要部85ヵ所、アメリカで21か所に設置した。アメリカの場合にはロシア以上の大陸間弾道弾を持つ。このことから、攻撃を受ける可能性は少ないとの見方が主流であったために配備個所が絞られた。


 一方で、飛行機に積むタイプの3型は、NATO軍200基、アメリカ軍500基となった。1型と3型については、同盟国に限らず対象国が要望すれば、NATO軍、アメリカ軍、日本の自衛隊で対処することになっている。1型は無論、飛んでくるミサイルに向けて装置を装備した対ミサイルで無効化する。

 この対処は、その国の領土に軍用機を飛ばすか、またはミサイルを飛ばす必要があるために、その国の同意なしには実施できない。


 以上が機密保持のため個所を限定してでの配備であったが、ヨーロッパとアメリカの体制が充分整ったとの判断からその他同盟国への配備をすでに始めている。ただ、これは早期に配備可能な、1型と3型であったが、ホットスポット足り得るテルアビブと、ソウルに限っては地上設置型の2型も供与した。


 これら1型と3型を供与した国は、NATO加盟国以外のロシア友好国を除く東欧、イスラエル、インド、オーストラリアに韓国である。他の国は1型と3型によって米軍、NATOで守ることになっている。

 韓国は日本で対処するという話もあったが、反日の韓国では上空を航空機を飛ばすこと、またミサイルを飛ばすことも不可能ということで米軍が担うことになった。



 そのような準備を進める中で、周辺国が核無効化装置の配備を進めているという情報は、意外にロシアでは洩れて問題にならなかった。しかし、情報は2029年の春の段階では断続的にロシアに入っていたらしい。しかし、トップを始め幹部が情報がフェイクであると決めつけ、何ら対処を行うことはなかったらしい。


 結局ボロゾフ大統領が、気が狂っているとしか思えないその宣言をしたのは、関係国が核無効化装置と称するものを本格的に配備しているのは事実と納得してからである。その宣言は、ロシアのモスクワ時間午前10時に出され以下のようなものだった。


「我々は、現在アメリカを始め、NATO加盟諸国、また日本が、我が国への核を含む攻撃を企図しているという情報を掴んだ。これは我が国への全面的な攻撃であり、彼らが人類を滅ぼす全面核戦争を狙っているものである。彼らは、それを核無効化装置などという噴飯ものの偽りを述べているが、事実は核ミサイルでの攻撃である。


 これは我が国を全方位から狙ったもので、すでにそのためのミサイルは配備しているとの情報である。我が国は主権国家としてこれを到底看過しえない。従って、24時間以内に配備した設備を廃棄するという宣言をアメリカ、NATO軍、日本に求める。


 もしその通知がない場合には、取りあえず米軍基地を含むドイツ、フランス、イギリスおよび日本と敵対的なイスラエルに極超音速ミサイルを撃ち込む。誰も生き残れない全面核戦争を防ぐ最後のチャンスだぞ。指導者の賢明な判断を望むものである」


 この声明を受けて、日本政府はロシアの宣言の1時間後の日本時間の17時に閣議を開いた。すでに、ロシアが近々この種の声明を出すことは予想されており、閣僚には待機命令が出ていた。だから全閣僚は招集がかかって1時間以内に集まった。

 無論、全マスコミから政府に問い合わせが入っているが、政府は閣議中でも必要なら会見に応じると回答している。


「これは概ね予想通りです。まあ秘密保持に関しては長く保った方でしょう。我が国は、1型による迎撃も含めて守りは先ず問題ないレベルまで固めています。米軍とNATOはこの種の声明があった後、出来るだけ早く『処置』にかかる宣言を発し、すぐにでもその種のミサイルを発射することになっています。


 これは、ロシア軍の練度から言って、ボロドフの宣言の直後ではほとんど何もできないので、早い方が迎撃するのが難しくなるという読みです。予兆があったことから、米軍とNATOの対処は相当に早いと考えられます。

 いずれにせよ、アメリカの大統領とNATO軍司令官からの宣言の後になります。あ、言っている内に両者の声明の放送が始まりました」


 閣議の最初に山根官房長官がこのように話している内に、アメリカ大統領ドナルド・ラッセルとNOTO司令官アダムズ・ジョーンズの顔が同時に映り、どちらも英語で話し始める。日本時間17時20分、アメリカ東部午前3時20分、ブリュッセル午前8時20分のことであり、明らかにあらかじめロシアの声明の時間を掴んでいた行動である、


 内容的には殆ど一緒であり、以下のようなものである。

『ロシアに対して、核無効化の措置を行う準備をしてきたことは事実であるが、それは核弾頭を無効化するもので、爆発するようなものではない。ただ、その運搬手段によってある程度の被害が出ることはあるかもしれない。それについては、それなりの補償はしたい。

 なお、これは度々核による近隣諸国への恫喝を繰り返してきた北朝鮮も含まれる。この声明後、ロシアと北朝鮮の核無効化の措置は直ちに始めることを宣言する』


 岸辺首相はそれを見て、顔をパシリと叩いてサッと立ち上がる。

「うん、記者会見はすぐやるよ。多分最中にミサイルが飛び交うことになるけど、まあ仕方がないね。国民をパニックにしないためには必要だ。皆いいですね?」


 首相は閣僚にそう言って皆が頷くのを確認して、すぐに隣の部屋の会見室に入った。待ち構えていたNHKのアナウンサーは、岸辺が秘書に先導され一礼して部屋に入って来るのを見て、表情を改める。

 さらに、首相がマイクの方に歩み寄るのを見て口を開く。様々な情報を流していた画面が、会見室のカメラに切り替わる。


「只今、岸辺総理が来られました。では総理、ロシアのボロゾフ大統領の声明と、たった今ラッセル大統領とNATO司令官のジョーンズ司令官の声明があったようですが、それとの関係、そして、現状と今後について国民の皆さんにご説明下さい」


「はい。国民の皆さん、こんにちわ、いやこんばんわですね。現在は17時42分ですから。ええと、まず我が国及びアメリカ、EUとNATO諸国は核兵器を無効化するシステムを構築してきました。そしてそれは完成しております。その詳しいことは、まだ今日只今の段階では秘密保持の点から説明できません。


 先ほど申し上げた、核兵器を無効化するシステムというのは、我が国で開発された核無効化装置と呼ぶものを使った、核兵器に対する防衛網および、現在ある核兵器を無効化するシステムです。


 その結果、わが国は現在すでに核兵器からは完全に守られています。この効果でロシアから核兵器が発射されて我が国土に落下しても、核弾頭が爆発することはありません。この点はご安心ください。ただ、ミサイルそのものを撃ち落すべく自衛隊は十全の努力はしますが、100%とはいきません。

 だから、爆発はしませんが、ミサイル落下による被害はある可能性もあります。


 繰り返します。我が国は核爆発からは完全に守られています。しかし、無効化された核弾頭を積んだミサイルは落下の可能性があります。この予想落下地点はすぐさまお知らせし、避難の誘導しますのでそれに従って適切な行動を取って下さい。


 このように、わが国は守られていることを前提に話をさせて頂きます。まだ、報道はされていないでしょうが、わずか20分前にアメリカのラッセル大統領と、NATO軍司令官のジョーンズ司令官の声明が出されました。ええと、映像と音声出ますか?」


 首相の言葉に、放送局の技術者が手をあげて丸を作り、映像を切り替えてモニターに画面を半割したラッセル大統領とジョーンズ司令官の声明の映像を映す。この時点では、ボロゾフ大統領の声明はすでに放映されており、日本国民のほとんどの人はそれを知っていた。


 そして、それを受けて日本政府の閣議があること、首相の記者会見があることも公表されて、ほとんどの職場や学校は作業や授業を中止して、テレビ画面またはスマホの画面を見入っている。暴動等がの騒ぎ起こる気配はなかったが、夜中のアメリカ、早朝の欧州も同じであった。


「ええと、皆さんご覧になったように、この御両人はロシアの核無効化の準備をしていることを認め、それは断固としてボロゾフ大統領が言うような核爆発を伴うものではなく、爆発を伴って多大な被害をもたらすものではないと言っております。

 そして、ボロゾフ大統領の核を使うという暴言を非難して、直ちに準備していた行動、すなわちロシアの核兵器を無効化する作業に入ると宣言しています。ですから、今この瞬間にもその行動が始まっているかもしれません」


 一旦言葉を切った首相の言葉を、その時点で7千万人以上とされる日本の視聴者が呆然と聞いていた。会場の様子から、そのことを感じ取った首相は、ややどや顔で続ける。彼のその長い政治経験からも、これほど注目を集めかつ、いい意味でその度肝を抜いたことはなかったし、今後もないだろう。


「実のところ、この核無効化装置というのは我が国で作られ供与されたものです。これは、すでに皆さんもご存じの、新たな原理に基づく発電システム、新EV車の登場などと同じ流れで生じたものです。これらはまさに世の中を良い方向に変えようとしています。


 今、アメリカとNATOで準備されて使われようとしている核無効化システムは、破壊を伴うものではありませんが、相手の領土に一種の攻撃をかけるものです。ですから、わが国は憲法の制約から参加はできませんでした。


 世界で唯一核爆弾を落とされ、多くの犠牲者を出した我が国にとって核兵器はまさに悪魔の兵器でした。しかし、世界の相当な数の国が、総計すれば人類を何度も絶滅できるほどの量のこの兵器を所持して使えるようになった状態になりました。


 その一部の国は、それを使うという恫喝に使っており、その国際情勢において、我が国はアメリカの核の傘なるものに頼らざるを得ませんでした。それは、防ぐというより、滅ぼされるなら相手も滅ぼすという相互破壊補償として互いを恐怖で縛るという、考え様によっては愚かなものでした。


 しかし、今日我々はその核の恐怖から解放されるのです。今日は、ロシア・北朝鮮ですが、その結果から世界は核兵器が無効化されたことを悟るでしょう。事実、わが国のようにすでに核兵器が使えなくなった国もある訳ですから、多大な費用をかけてそうした兵器を作って配備する意味がないのです。


 今日、ロシアと北朝鮮の核兵器は無効化されるでしょう。その結果を受けて、我々は核兵器を実際に持っている国である、中国、インド、パキスタン、イラン、イスラエルには核廃棄を求めます。また、それに先立って、アメリカ、イギリス、フランスは放棄を宣言します。


 多分、それには数年は要するでしょうが、いずれにせよ地球上から核兵器は無くなります。今日は歴史に残るその最初の日となります。皆さんには、その歴史の証人になって頂きたいと思います。本日は急なことではありますが、出来れば職場、学校等については休みとして、皆さんにそれをお願いしたいと思います」


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― 新着の感想 ―
[気になる点]  ロシアからの全面核攻撃宣言を受けている状況なのに、まったく緊迫感が感じられない。もちろん核無効化装置が既に配備完了しているからということを閣僚たちや読者が知っているということが原因な…
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