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第51話 最終決戦

「…………は?」


 裕斗は目の前の出来事に脳が整理に追い着けず、呆然とした。


——私はクラウス・ロ-ゼン。そこにいる娘……、クラウディア・ロ-ゼンの父親だ


 そう、英二を乗っ取った謎の男は言ったのだ。


「なぜ……お父様がここに……!?」


 クラウディアは驚愕し、クラウスに投げかける。


「まだ気づかないか?私が転移者ども統率者だ」


「そ、そんな訳ありません!彼らは私たち獣人を意のままに操り、使い捨てていたのですよ!?」 


「ああ。知ってるさ。なにせ、獣人を魔獣に変え、その魂を魔導騎士に封じ込めたのはこの私なのだから」


「……え?」


「私はね、人間が大嫌いだったんだ。我々よりも力の弱い奴らが我々を蔑み、迫害することが許せなかった。……だが、愚かにもお前は人間に歩み寄り、手を取り合おうとした。だから私はその思いがなくなるよう、お前の身も心も魔獣にしたというのに……」


 蔑んだような瞳でクラウディアとユウトを見た。


「また、人間と手を取り合っているとは」


「お父様……!」


「……そちらの家庭環境は分かりませんが、あなたがクラウディアを娘として大事に思ってないことは分かりました」


 もう彼はここまでのことをやらかしたんだ。説得に応じることはないだろう。


 ユウトは大刀をクラウスに突きつけ、告げる。


「あなたは……ここで倒す!」


「ユウト……」


「ごめん、クラウディア。君の父親を殺すことになるけど、力を貸してくれる?」


 ユウトの言葉に、クラウディアは静かに目を閉じる。

 そして目を開き、覚悟を決め言った。


「ええ。お父様はアランを……大切なみんなを魔獣に変え、弄びました。娘である私は、お父様を断罪する義務があります!」


 それに対し、クラウスは「ハァ……」とため息をつく。


「愚かなことを。……では知るがいい!」


 周囲の暴走魔導騎士が浮かび、『ルシフェル』に集まっていった。


「な、なんだ!?暴走した魔導騎士たちが……集まっていく!?」


「私の魔法は死霊。意思なき死者の魂を自在に操る」


 暴走魔導騎士に宿る獣人の意識を支配『ルシフェル』の周りに吸い寄せられ、人型を形成していった。


「恐れよ、刮目せよ。貴様の目の前に映るそれは、獣人の怨念そのものだ」


 やがてできたそれは、巨大な異形の人型だった。


 よく目を凝らせば魔導騎士が密集しているのが分かる。もし自分が集団恐怖症だったらと思うと恐ろしい。


「クラウディア!もう一度魔獣の力を!」


「はいっ!」


 再び『ランスロット』の瞳が赤く染まる。


「魔獣の力を使うか……。だが!一騎当千の力も、それを超える万の力には叶うまい!」


 バキ……バキバキバキ!


 魔導騎士たちが圧縮され、ミサイルのような形状になる。


 ミサイルは『ランスロット』に吸い寄せられる発射された。


「数は多いけど、速さはそれほどでもない!」


 ユウトはミサイルに対し、回避運動を取る。


 しかし、ミサイルは近くに来ると内にある核が光り、爆発した。


「なに!?」


 ユウトはとっさに大刀でガードする。


 爆風は防げたものの、魔導騎士に宿っていたであろう獣人の魂が消滅したことを裕斗とクラウディアは肌で感じた。


「なんてことを……。みんなの命を……捨て駒みたいに……」


 クラウディアの言葉に、クラウスは笑う。


「なにを驚く。大義のために犠牲となったのだ。むしろ感謝して欲しいくらいだよ!」


 巨人の一部がちぎれるように魔導騎士が分離し、ミサイルを形作る。


 先ほどとは比べ物にならない量のミサイルが、こちらに向け発射された。


「『ヘル・インフェルノ』!」


 『ランスロット』から放たれる炎の熱線がミサイルを薙ぎ払う。しかし、それを上回るミサイルの量が迫ってくる。


「くっ……!」


 ユウトは旋回し、ミサイルを速度で振り切ろうと加速した。


 しかし——


 バゴン!


 小さな爆発とともに背部のスラスターが壊れ、煙が上がる。


 『オーバーロード』によって悲鳴を上げていたスラスターが、限界以上のスピードを出したことで壊れてしまったのだ。


「しまっ——!」


 急速にスピードを失った『ランスロット』に、ミサイルの大群が至近距離で爆発。


「ぐわああああああ!!!!!!」


 機体が揺れ、衝撃が裕斗の体を貫く。


 翼が砕け、鎧の所々が剝がれ落ちた『ランスロット』は糸が切れた操り人形のように落下した。


「チェックメイトです」


 巨人の腕が刃に変わり、両断しようと迫る。


 避けなければ。そう思うが、体が動いてはくれない。


 裕斗はかすむ目で操縦室に横たわりながら眺める事しかできなかった。


「――ウト!ユウト!」


 クラウディアが声をかけるが、答えられない。


——万事休すか


 裕斗は下唇を噛み、己の死を悟る。


 その時だった。


 カッ!


 突如、巨人の核となっていた『ルシフェル』の中から赤い宝石が飛び出した。


「なにっ!?」


 赤い宝石は『ランスロット』の中に入った。


 すると、『ランスロット』が光り輝き、巨人の刃を吹き飛ばした。


「……?なんだ……これは……」


 体が軽い。それに、飛行能力を失った『ランスロット』が浮かんでいる。


 まるで、重力を無視しているような……。


「間に合ったようですね」


 突然目の前に青年が現れる。


 青年はオオカミのような耳と尻尾を持っている、獣人だった。


「君は……」


 裕斗は誰なのか分からず、キョトンとする。


 いや、違う。自分は彼を知っている。


 彼はクラウディアの過去にいた獣人だ。


 たしか、彼の名は……。


「初めまして。私はアラン。かつてクラウディア様に仕えていた従者です」


 そう、アランは告げるのだった。


▲▽▲


「あなた……アラン……?」


 クラウディアはアランと名乗った青年をポカンと見ながら呟いた。


「お久しぶりです、クラウディア様」


「ええ!本当に……。あなたも、理性が戻ったのね!」


「はい。遅くはなりましたが、またあなた様に仕えさせていただきます」


 うれしげに挨拶するアランに、クラウスは憎々しげに言う。


「アラン……貴様裏切るのか……」


 アランはクラウスに振り向き答えた。


「私はクラウディア様に仕える身、協力するのは当然です」


「よく言う、先ほどまで憎しみのままに襲いかかっていたものを」


「……否定はしません。ですが……だからこそ、正気に戻った今、あなたを倒せねばならんのです」


「そうか。……ならば、愚かな娘とともに滅びるがいい!」


 再びミサイルが飛び立ち、こちらに迫ってきた。


「回避を!」


「必要ありません。私の魔法は重力……あちらが向かってくるのなら、落とすまで!」


 『ランスロット』の手の平がミサイルに向けられた。


 すると、ミサイルが地面に吸い寄せられるように落下する。


——すごい。『オーバーロード』を使ったとはいえ、僕たちはこんな魔法相手に戦っていたのか。


「グッ……。ならば、直接叩くまで!」


 巨人は触手を伸ばし、再び迫る。


 速度は速くはないものの、力任せに振るわれた触手たちは止まらない。


「クッ……!ダメだ!私の魔法では抑えられない!」


「任せてください!」


 ユウトは壊れた背面以外のスラスターを噴かし、迫る触手を回避した。


 機体が軽い。メインのスラスターが壊れたのに、いつもよりスピードが出る。これも彼の重力魔法の効果か。


 とはいえ避けてるばかりじゃ埒が明かない。


 それに…… 


――壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ!!!!!!!!!!


 頭が割れそうな怨嗟の声が頭蓋を叩く。

 もういつ意識を乗っ取られてもおかしくない。


 迫りくる無数の触手を避けながら、裕斗は攻略法を考えた。


——なにか……なにかないか……!!!


「ユウト、待たせたな!」


 その時、モニターにルイーゼとヴァネッサが映った。


「ッ!」


 振り返ると、ルイーゼの『トリスタン』、ヴァネッサの『スレイプニル』、さらに、『ヴァルキリー』を始めとした各国の魔導騎士たちがこちらに飛翔してきた。


「状況は隊長から聞いた!触手たちは私たちが止める!」


「『アローレイン』!」


「『グングニル』!」


 ルイーゼたちがそれぞれ魔力を放ち、触手をふき飛ばす。


 その他の魔導騎士たちも協力し、触手たちを抑えていった。


「手が空いた!今がチャンスだ!」


 『ランスロット』の手の平に炎が集まる。


「『ヘル・インフェルノ』!」


 炎の熱線が胸部を貫く。


「させるものか!」


 だが、周囲の魔導騎士を肉壁にすることで熱線を防御した。


「『ヘル・インフェルノ』でも無理だなんて!」


「なら、こっちを使う!……いきますよ、アランさん!」


「ええ!」


 『ランスロット』の手の平を上空に掲げた。


 そして、手の平に重力を集中させる。


 英二との戦いで見せたあの力……あれならば、魔導騎士の肉壁も突破できるはずだ!


「『重力特異点ブラックホール』!」


 『ランスロット』の手のひらで黒い球体……ブラックホールが出来上がる。


「い、けえええええ!!!!!」


 裕斗はブラックホールを投げつけた。


 黒い球体が装甲を飲み込み、『ルシフェル』を露出させる。


「今だ!」


 大刀を炎で纏い、『ルシフェル』に迫る。


 しかし突然、『ランスロット』が金縛りを受けたかのように止まってしまった。


「機体が、動かない!?」


「「ぐっ……うう……!!」」


——なんだ!?クラウディアとアランが苦しそうだ!


「舐めるなよ……。全魔力を使えば、貴様らを捕えることは造作もない!」


——なるほど、彼女たちを通して『ランスロット』の動きを止めているのか


「なら……それ以上の力を使うまで!」


 ユウトはパスワードを打ち込む。


「『オーバーロード』!」


 再び『ランスロット』が紅く染まる。


 ギ……ギギ……ギ……!


 軋む音を立てながら、『ランスロット』の力が死霊魔法の支配を上回ったことを示すように『ランスロット』が動き出した。


「うあああああああああ!!!!!!!!!」


 『オーバーロード』で『ルシフェル』を縦一文字に叩ききる。


 同時に、新堂英二の肉体に潜む、クラウス・ローゼンフェルトの魂を切り捨てた。


「バ……カな……。こ、この私が……!許さん……許さんぞ小僧ーーー!!!」


 クラウスの断末魔とともに全体の核が光る。


「———————!!!」


 逃げる暇もなかった。


 巨人は『ランスロット』や『トリスタン』たちを巻き込み、大爆発を引き起こした。

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