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第49話 三つ巴の戦い

連載再開ということで、このまま最終回までいきたいと思います。次話も近日中に投稿を予定しておりますので、楽しみにお待ちくださいませ。

 裕斗たちがオルトランデを離れ、一年が経った。


 その間、様々な変化があった。


 オルトランデは『ソルジャー』の解析データと裕斗の残した戦闘機のデータを基に、新たな魔導騎士の開発、量産に成功した。


 それによりオルトランデの国力は成長し、ノウゼン帝国を含む大国を懐柔、取り込んでいった。


 英二率いる転移軍はこれに対抗するべく、オルトランデの滅亡を宣言。


 オルトランデ側も他国を巻き込み徹底抗戦を主張した。


 かくして、現地人と転移者との絶滅戦争が始まったのだった――。


「やれえ!転移者たちから、この世界を守れぇぇぇ!!!」


 大軍の大空を駆ける影。


 それらは『ソルジャー』に似た鎧を着こみ、背中には戦闘機を思わせる巨大な翼を背負っていた。


 機体の名は『ヴァルキリー』。オルトランデが量産に成功した魔導騎士である。


 制空権を手に入れたオルトランデの魔導騎士たちは転生者の操る暴走魔導騎士を次々と破壊していった。


 「やれるぞ!これなら――」


 ダンッ!


 上空から銃撃が放たれ、『ヴァルキリー』の腹部を貫いた。


「……え?」


 腹部に内蔵された魔力タンクに穴が開き、光が漏れる。


 次の瞬間、機体が爆散した。


「「「なっ!!!」」」


 他の『ヴァルキリー』のライダーたちは驚きに目を見開き、銃弾が降ってきたであろう上空を見た。


 そこには、戦闘機のような平べったい機体に乗る転移者の乗る『ソルジャー』たちがいた。


「空を飛べるのはお前らだけじゃねえんだよ!」


 ライフルが『ヴァルキリー』を次々と撃ち落とし、爆散していく。それは端から見れば、きれいな花火が何度も打ち上げられてるようにも見えた。


「お前らぁぁぁ!」


 そんな中、1機の『ヴァルキリー』……それに乗るマルセル・エンバルクは両手に持った剣を転移者たちに振るう。


 生身で積んだ剣の腕と『ヴァルキリー』の機動力が合わさり、次々と敵機を撃墜していった。


「なんだよこいつ!」


「焦るな!数はこっちが上回ってんだ!囲んで叩け!」


 四方八方から浴びせられる無数の銃撃。

『ヴァルキリー』の機動力を活かしても、すべてを回避するのはもはや不可能だった。


 装甲をかすめる攻撃が増え、そこかしこに傷跡が刻まれていく。


 「くそっ、これじゃキリがねえ!……ぐぉ!?」


 後方からの銃撃が背中の滑走翼を掠める。


 致命的なダメージにはならなかったものの、機体が揺れ、操縦が狂う。


 その隙を見逃すほど、転移者たちはバカではない。


「しねぇーーー!!!」


 『ソルジャー』の剣がマルセルのいる操縦室を狙う。


 機体を満足に操縦できない今の状況では、避けるのは間に合わない。


――やられる!


 そう思った瞬間、上空から現れた謎の機体が『ソルジャー』の右腕を切り落とした。

 右腕を切り落とされた『ソルジャー』は腹に蹴りを入れられ、落下する。


 「はっ……?」


 マルセルは突如現れた謎の機体を見る。


 白を基調としたその機体を、マルセルは知っていた。


 「あれは……『ランスロット』!?」


 だが、姿が違う。背中には『ヴァルキリー』と似た翼を背負い、右手には大刀を握っていた。


「無事ですか!マルセルさん!」


 声とともに、少年がモニターに映し出された。


「お前、ユウトか!?」


「はい!お久しぶりです!」


「ああ……!本当に……久しぶりじゃねえか!生きていたんだな!」


「ええ!……それに、僕だけじゃありませんよ!」


 そう言って、裕斗の乗る『ランスロット』は上空の雲を指す。


「僕たちはこの一年間、隠れていたわけじゃありません。辺境の国々と出会い、友好を結び、同盟を組んだんです」


 次の瞬間、曇を突っ切り、大量の戦艦が降りてきた。


 中から大量の魔導騎士たちが降下する。


 魔導騎士たちは転移者たちを撃ち落とし、暴走魔導騎士の核を貫いていった。


「お前たち……応援に来てくれたのか……?」


 マルセルの言葉に、裕斗は首を振った。


「僕たちはオルトランデを助けに来たんじゃありません。僕たちはただ……この戦いを止めたいだけです」


「……いいや、それでもいいさ。俺たちはただ、オルトランデを守りたいだけなんだからな」


 その時、銃撃が『ランスロット』に襲いかかった。


「ッ!」


 裕斗はすかさず大刀を振るい、銃弾を打ち落とす。


「……どうやら、お上の方々はそう思ってないようですね」


 裕斗は奥を見る。


 銃弾はオルトランデ側の船から撃ち出されたのだ。


「ユリウス団長!?何やってんだ!」


『なにをやっている。早く討て』


「……なんだと?」


『その男は我々を裏切った。ならば、それを誅するのも騎士の役目だろう?』


「し、しかし……」


 『ヴァルキリー』に乗る他のライダーたちは動揺し、混乱する。


 ユリウスは静かに宣言した。


『そうか……。なら、君たちの友人家族がどうなってもいいんだね』


「「「ッ!」」」


 『ヴァルキリー』たちは剣をこちらに向ける。


「お前ら……」


『なにをやってるんだ?マルセル君、早く裏切り者を撃ちたまえ』


「……断る。あんたがなんと言おうと、こいつは俺の戦友だ。そんな真似できるわけないだろ!」


『そうか。なら、裏切り者ともども死ぬがいい』


 宣言とともに、周囲の『ヴァルキリー』が襲い掛かろうと動く。


 しかし、上空から放たれた矢が彼らの武器を撃ち落とした。


「「「ッ!?」」」


 皆が上空を見上げる。


 上空から、戦闘機に吊り下げられるような形で飛行している『トリスタン』、『スレイプニル』が降りてきた。


「ユウト、一人で突っ走りすぎだ」


「世話が焼けるわね!」


 『ランスロット』の操縦室のモニターにルイーゼ、ヴァネッサが映し出された。


「ルイーゼ!ヴァネッサ!」


「団長は私たちが抑える。お前は転移者たちを抑えろ」


「で、でも……」


「そんなに心配なら、ちゃっちゃと終わらせてこっちに来なさい!」


 ルイーゼに続き、ヴァネッサも声を出す。


「…………!!!」


 これではどれだけ言っても同じだろうと、裕斗は決断した。


「分かった。気をつけてね!」


「誰に言ってる!」

「誰に言ってんのよ!」


 三人はそう言葉を交わし、各々の戦場へと向かった。


▲▽▲


「グッ……!ゴホ、ゴホ!」


 男は口元を抑え座り込む。


「ハァ……ハァ……ハァ……」


 抑えていた手の平を見ると、血がべっとりと付いていた。


「辛そうだな……英二よ」


 そこに聞こえる声。誰もいないのにだ。


 しかし、声をかけられた男……新堂英二は驚くことはなかった。


「無理もないだろう。一命を取り留めたとはいえ、全身に受けた火傷は体表だけでなく内臓にまで修復不可能のダメージを負ってしまっている。その体は持って、数日といったところだろう」


 声は英二の命が消えかけていることを淡白に、無慈悲に告げる。


 だがしかし、英二は特に気にする様子はなかった。


「関係ない……やつを……榊原裕斗を殺せるなら……この体がどうなっても……いい……」


 英二は右の義手で手すりを掴み、引きづるようにして格納庫へと向かった。


「リーダー!」


 英二が格納庫へとたどり着くと、整備員の1人が気づいた。


「準備はできているな?」


 英二は先程までの不調を感じさせない毅然とした態度で言った。


「はい!これで奴らを根絶やしにしてください!」


「ああ……」


 英二は自らの愛機、『ルシフェル』に乗り込んだ。


 『ルシフェル』はクレーンによって運ばれ、赤い装甲の機体に埋め込まれる。


『ドッキング完了。リーダー、接続お願いします』


「……魔力接続開始コネクト・オン


 瞬間、ルシフェルとは比べ物にはならないほどの膨大な情報と激痛が英二を襲う。


「がっ……あ……!」


 目や鼻から血が流れ、口の端からブクブクと泡を噴く。


――だが、これで……いい……!


 血の付く口角を上げ、英二は笑った。


 それだけこの武装には凄まじい性能が秘められているということ。これなら榊原裕斗を殺せると、そう確信したのだ。


 英二は義手で右の操縦桿を、生身の手で左の操縦桿を握る。


「新堂英二、『ワイバーン』……いくぞ!」


▲▽▲


 場所は戻る。


 ユウトとマルセルは転移者たちを倒しながら本境地へ向かっていた。


「……あれか!」


 ユウトの『ランスロット』、マルセルの『ヴァルキリー』は飛行を止める。


 そして……転移者たちの本拠地をその目で見た。


 一言で言うと……天空の島だ。


 広さはそれほどでもないが、島にある無数の基地が存在し、そこから次々と魔導騎士たちが発進、または降下する。


 「これが……彼らの本拠地……」


 裕斗がそう呟いた、その時だった。


 ピカッ、島の一点から光が漏れた。


「ッ!ユウト下がれ!」


 マルセルはとっさに『ランスロット』どかす。


 直後、『ヴァルキリー』の左腕と左翼が溶解、爆破した。


 飛行能力を失った『ヴァルキリー』は煙を上げ、地面へと落下する。


「マルセルさーーん!」


「俺はいい!それよりも気を付けろ!なにかやばいのが――」


 プツン、とモニターが切れる。


 ハッ、とユウトは再びビームが来た方を見た。


 そこには赤い機体が浮かんでいた。


 その機体の外見を一言で表すなら、竜だ。


 だが、生物ではない。赤い金属の装甲が全身を覆い、背中には光の翼が生え、両手は大砲のように大きい銃になっており、尻尾には鋭いブレードを携えている。


――なんだ……これは……魔導騎士、なのか……?


「久しいな……榊原裕斗……」


 モニターに映し出される男の顔。


 顔の右半分には目を覆いたくなるような火傷の痕があり、それが気にならないほど狂気を貼り付けた顔を見せる。


 だが、彼には見覚えがあった。


「新堂英二……」


 裕斗の呟きに、英二は笑って答えた。


「ああ、そうさ!覚えていてうれしいよ!じゃないと俺の復讐が完結しないからな!」


「僕こそ会いたかったよ。君には聞きたいことがあったからね。……新堂英二、君が転移者たちのリーダーか?」


「……?だったらどうする?」


「仲間を連れてここを退け。僕たちはこの戦いを止めたいだけだ」


 裕斗は彼ら転移者の怒りは分かる。

 勝手にこの世界に召喚されて、無理やり戦わされたのだ。

 

 オルトランデを守りたい気持ちもあるが、できるなら転移者を皆殺しにして終わりにするなんて道は取りたくはない。


「ハン!」


 しかし、英二は鼻で笑う。


「退くわけないだろ!お前は今日、ここで死ぬんだからな!」


 二門のビーム砲から光線が放たれる。


「ッ!」


 裕斗はとっさにそれを避けた。


 地面に着弾したそれは爆発し、巨大なクレーターを作り出す。


 かすめでもしたらひとたまりもないことが一目で分かった。


「どうだ!この『ワイバーン』の威力は!お前を殺すために作り出した、対魔導騎士用の魔導要塞だ!」


「どうしても戦いを続けるか……。なら、頭である君を潰して、降伏させる」


 チラ、と裕斗は隣を見た。


 そこには、『ランスロット』に潜む少女、クラウディアが姿を現した。


「クラウディア……いくよ」


「ええ」


 次の瞬間、『ランスロット』の瞳が赤く染まり、魔導騎士とは異なる、異質なオーラが全身を纏う。


「―――――!!!」


 英二はその姿を見て、英二の仲間である須藤麻衣を握りつぶし、己の右半身を消し飛ばしたあの力と重なる。


「しねぇーーーーー!!!!!!」


 再び二門の砲台からビームが放たれる。


 対して裕斗はビームに突っ込んだ。


 『ランスロット』の持つ大刀の刃を炎が纏う。


「はあああああ!!!!!」


 炎の刃はビームを切り裂く。そのまま、二門の砲台ごと焼き切った。


「クソッ!」


 『ワイバーン』の翼から無数の刃が展開し、『ランスロット』に襲い掛かった。


 しかし、裕斗はそれらを避け、剣で切り伏せ迫る。


 頭、翼、尻尾などを斬られ、『ワイバーン』はだるま状態になった。


「これで終わりだ」


 『ランスロット』の手の平から魔方陣が出る。そして、そこに魔力の炎が集中した。


「『ヘル・インフェルノ』!」


 集約された炎が放出され、『ワイバーン』へと迫る。


 『ワイバーン』は逃げる間もなく炎に呑み込まれ、爆散した。


「やりましたか……?」


 クラウディアの呟きに、裕斗は首を振る。


「……いや」


 煙の中から英二のかつて乗っていた魔導騎士……『ルシフェル』が姿を現した。


 恐らく外装として装着していた『ワイバーン』をパージし、脱出したのだろう。


「ハァ……ハァ……ハァ……」


 しかし、完全にダメージを防ぎ切ることは不可能だったのだろう。


 『ルシフェル』の装甲はボロボロ。中の英二も辛そうだった。


 そんな状態では『ランスロット』に勝てないことは、英二も分かっているはずだ。


「もう終わりだ。おとなしく降伏しろ」


「ふざけるなよ……こんなところで、終われるかーーー!」


 英二の叫びと同時に、謎の力が裕斗を襲う。


「がはっ!」


 まるで重力を横殴りにされたかのような一撃に、機体はあえなく吹き飛ばされてしまった。


「なんだ!?」


 裕斗は体制を立て直し、見る。


「なっ……!!!」


 そこには、信じられないものがあった。


 『ルシフェル』の眼が赤く染まり、今の『ランスロット』と同じオ-ラを纏っていたのだ。


 冷や汗を頬に伝わらせ、裕斗は叫ぶ。


「まさか……暴走!?」

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