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第27話 ヴァネッサの過去

「どう?落ち着いた?」


そう言いながら、裕斗とルイーゼはヴァネッサのいる部屋へと入った。


ここはノウゼン帝国から借りた宿舎の一部屋、オルトランデに比べて部屋も広く、質素ではないが、今の彼女には何の慰めにもなりはしなかった。


「……ええ」


ヴァネッサは力なくベッドに座り込んだままコクン、と頷く。落ち着きはしたが元気はない、そんな様子だ。


「飲め。どうせ交渉が終わって少しも飲んでいないのだろう?」


ルイーゼは進み出て手に持っていた水の入ったコップをヴァネッサにやる。ヴァネッサはこれを「ありがと」と言って受け取り、それを飲んだ。


裕斗は問うた。


「ヴァネッサ。できたらで良いんだけど、教えてもらえるかな?あの人たちとなにがあったのかを……」


ピクッとコップの動きが止まった。少しして、彼女の薄桃色の唇からコップが離れる。


「……少し長くなるけど、いいかしら?」


「うん」


裕斗が頷くと、ヴァネッサはポツリポツリと話し始めた。


「私の家……ランドール家は名家でね、何代も騎士団員として戦果を残してるし、私の兄や弟、父上も騎士団のライダーや隊長として功績を残している。……けどその分、力が全てであるという考えが根付いてしまっていて、私みたいな非力な女は家では下で見られていたのよ」


「そんな……」


いわゆる男尊女卑ってやつか。


「気に入らんな。女だから非力だと決めつけるのは……」


同じく女であるルイーゼはフン、と不機嫌に鼻を鳴らす。


「仕方のないことよ。それに私が弱かったことは事実なんだし」


「……けど、君は戦う道を選んだんだよね?」


裕斗が聞くと、ヴァネッサはコクッ、と頷いた。


「ええ。強くなって、家族を見返すためにね」


そう言って、ヴァネッサは自嘲気味に笑った。


「幻滅させちゃったわね。前にあんたを保身のために戦うなんて、魔導騎士に乗る資格はないとか言ったくせに、私も家族を見返したい、そんな思いで戦ってたんだから」


そんなことを言うヴァネッサに、裕斗は目を丸くして手を振った。


「いやいやぜんぜん、そんなこと思わないよ」


「え?」


驚くヴァネッサに裕斗は笑って返した。


「たとえ自分のためだったとしても、君がこれまで血を吐くような努力をしてきたことは変わらない。……だから僕は、いつも通り君を尊敬するよ」


「…………」


少しして、ヴァネッサは顔を急激に赤くした。


「そ、そうよね!私、すごいんだから!」


そう言って、彼女は目をそらした。


なんでそうなったのかは分からなかったが、彼女が元気になったことに裕斗はホッ、とした。とはいえ、まだ彼女の元気が元に戻っていないことに裕斗は気づく。


どうしたものかと裕斗は悩んだが、とある妙案を思いついた。


「そうだ!せっかくノウゼンに来たんだしどんなところか見て回ろうよ」


「は?」


ヴァネッサは何言ってんだこいつといった目で裕斗を見た。


「おいおい、だから観光に来たんじゃないんだぞ」


ルイーゼは呆れたように言った。


「もう交渉は終わったんだし、大丈夫だよ」


「そ、それはそうだが……」


「大丈夫だって!ほら、ヴァネッサも!」


「はあ?私もいくの?」


「僕たちノウゼンのことなんにも知らないし、おススメの場所とか聞いてみたいから。お願い、君にしか頼れないんだ」


裕斗は両手を合わせてお願いする。


「しょ、しょうがないわね!この私がガイドしてやろうじゃないの!」


ヴァネッサは立ち上がって、部屋のドアへと移動した。あまり人に頼られることがないからか、彼女は張り切っていた。


「いったいどういうつもりなのだ?」


ルイーゼは小声で裕斗に聞いた。裕斗はそれに答える。


「他に楽しいことをすれば、彼女の気がまぎれると思ってね。現に今、彼女楽しそうじゃん」


「……そうだな」


「あんた達、なにコソコソ話してんのよ」


ヴァネッサは怪訝な顔で裕斗たちをみた。


「ううん、何でもないよ。……ほら、僕たちも行こ」


「……ああ」


そうして裕斗たちのノウゼン帝国の観光が始まった。

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