第23話 粉塵爆発
ある日の工房の中、裕斗はアルバートとハンナにあるものを見せていた。
「こんな風な形をしていて、空から攻撃することができるんですよ」
「へえ、すげえな」
「こんなもんもあんのかい!すごいねえあんたの故郷」
アルバートとハンナは目を丸くして驚く。
「いやあ、でも僕のいた世界じゃ魔導騎士みたいなのはなかったんで、すごいと言われると微妙ですね」
「ンなことないよ!クゥゥ、創作意欲がわいてくるねえ!」
ハンナはプルプルと体を震わせる。と、そこで工房の扉が開けられた。
「入るわよー」
「ユウト、いるか?」
声とともにヴァネッサとルイーゼが入ってきた。
「ああ、ルイーゼとヴァネッサ」
裕斗は二人に手を振りながらヴァネッサの方をみた。
「もう歩いて大丈夫みたいだね。体の方はもう痛みない?」
「おかげさまでね。もう骨折も治ったし、近々ここの騎士団員として復帰するつもりよ」
ヴァネッサはフッ、と笑みを返す。
最近はこんな感じで、彼女は最初の頃よりも角が取れて、今では仲良くやれている。まあ、なぜか彼女は時々自分と目を合わせると顔を赤くしてそっぽを向くのだが、どうしてなのかはまったく分からない。
「そっか、よかった。……ところで二人ともどうしたの?」
裕斗の質問にルイーゼはハア、と頭を抑えた。
「どうしたのではない。お前が鍛錬の時間になっても来ないから探していたのだ」
「ええ、もうそんな時間なの?」
裕斗は目を見開く。この世界には時計はないため、時間は正確には測れないがもうそんなに経っているとは驚きだ。
「えっと、できれば今日も休みにしてもらっていいかな?」
「また?アンタこの頃何してんのよ」
「ええっと、それはですね…」
「まあまあ、別にこいつもサボってたわけじゃないんだよ」
詰め寄るヴァネッサにハンナが仲裁に入る。
「は?じゃあ何してたのよ」
「まあまあ見てみなって」
ハンナはそう言ってルイーゼとヴァネッサを大工房に案内した。大工房に入るとすぐに二人はあるものに目を止める。目を止めた先には細長い、巨大な鉄の棒があった。
「なんだこれは」
「槍…じゃないわよね」
困惑する二人にアルバートが答えた。
「こいつはミサイルっつうんだ」
「ミサイル?」
「ああ、着弾したと同時に周囲を巻き込んで爆発する恐ろしい兵器だ。…ちなみに、これを考案したのは裕斗だ」
「「え!?」」
ルイーゼとヴァネッサは驚いたように裕斗を見る。
フフン、と裕斗は誇らしげに下鼻をこする。
「ミサイルは僕のいた世界では普通にある兵器だからね。この世界の術式と組み合わせて新たに作り出したんだ」
「驚いた。ユウトの世界にこんな兵器があったとは…」
「……まあ、すごいっちゃすごいけど、これって対魔導騎士戦で役に立つの?」
驚くルイーゼとは対照にヴァネッサは眉をひそめた。そんな彼女に裕斗はニヤッと笑ってみせた。
「試してみる?」
***
ドゴオオン!と壁の外に着弾したミサイルの一撃に、ルイーゼやヴァネッサ…野次馬として集まった他の騎士団のみんなは絶句した。
「な、なんだ今の一撃は…」
「あんなの…魔導騎士の核どころか装甲すら砕きかねないじゃない。一体どうやって…」
絶句する二人に裕斗はフフン、と言って説明する。
「今の爆発は粉塵爆発を利用したのさ」
「粉塵…」
「爆発?」
聞きなれない言葉にルイーゼとヴァネッサは揃って首を傾げた。
「粉塵爆発っていうのは、密閉された空間に小麦粉みたいな粉末状の可燃物が舞っている状態で、火花みたいなのが散ると爆発する現象さ。今回のミサイルは中にあらかじめ小麦粉を入れていて、着弾と同時にミサイルに刻んでいた着火用の術式が発動、小麦粉と反応して爆発したのさ」
「ほう、それはすごいな」
「でしょ?しかもこれだけじゃなくって、僕たちの魔導騎士の改造案や新しい兵器の開発も考えているよ」
裕斗は「はいっ」と手に持っていた書類を2人に渡す。書類を貰った二人はそこに書かれた鋼鉄の鳥に目を止めた。
「なんだ?これは」
「鳥…にしては無機質ね」
「それは戦闘機っていって空から攻撃する兵器さ。これも僕の世界の兵器なんだけど、アルバートさんとハンナさんに協力してこの世界で再現しようと思ってるんだ。……だからお願い!しばらく鍛錬はお休みにしてくれないかな」
裕斗の必死の懇願ににルイーゼは思案するように考え込んだ。
「……一つ聞くが、そのセントウキとやらはミサイルよりも強いのか?」
「うん。機動力もあるし、ミサイルや他の武装も搭載するつもりだからかなり強いと思うよ」
「そうか。……なら、しばらくは鍛錬を中止しよう」
「ちょ、あんた正気!?」
ヴァネッサは驚いた顔でルイーゼの方を向く。対してルイーゼは先ほどの言葉を訂正することはなかった。
「いたって正気だ。ライダーを鍛えることも大事だが、新たな戦力を増やすことも必要だからな。それに、今は近くに魔導騎士は確認されない。だから大丈夫だろう」
「それは…そうなんだけど…」
ルイーゼの意見にヴァネッサは押し黙る。やがてあきらめたのかハア、とため息をついた。
「分かったわよ。……けど、絶対完成させなさいよ」
「分かってるって。任せてよ」
裕斗はニヤッと笑ってヴァネッサに親指を立てた。
もっとも、自分が出すのはあくまでアイデアだけで、作るのはアルバートやハンナなど、魔道具づくりに長けた者たちなのだが……。
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