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第20話 暴走

夜が明け、裕斗が二度目に目を覚ますと同時に、団長のユリウスから報告があった。


なんでも、壁の外の見回りをしていた騎士団員の一人が暴走した魔導騎士を見つけたらしい。


そういうことで、ユリウスから裕斗たち三人のライダーに暴走魔導騎士の討伐をするように頼まれた。

確認された敵機は一機…しかも量産機の“ソルジャー”だということなのだが、三人とも出撃することとなった。


理由として、裕斗とルイーゼはライダーとしての経験が浅いため、ヴァネッサはその実力がどの程度なのか分からないためらしい。


そして、敵機はオルトランデから少し離れた場所にいるということで、移動はあの巨大な船を使うこととなった。


「僕たちって魔導騎士を移動させずに船に乗っちゃっていいの?」


裕斗は移動に使う船を眺めながらルイーぜに問うた。


「我々が乗らずとも魔導騎士を移動させる手段はほかにある。……あんな風にな」


ルイーゼが指を向けた先を裕斗が見ると、荷車に載せられ、縄でグルグル巻きにされた“ランスロット”が、巨大な牛のような生き物に引かれ、船の後部にある格納庫に入れられていた。


次に“トリスタン”、そしてその次に、黒い鎧をまとい、槍を右手に握った魔導騎士が後部の格納庫に積まれていくのが見えた。


「“ソルジャー”?だけど…なんか違う?」


とそこで、ヴァネッサが後ろから答えた。


「ただの“ソルジャー”じゃないわ!装甲を薄くし、機動力を上げた私専用の機体よ!」


――ほう?量産機を自分専用に改造しているのか。ロマンあるな


「おい、何をしている。早く乗るぞ」


いつの間にか船に乗っていたルイーゼに言われ、裕斗はハッとした。


「ご、ごめん!すぐ乗るよ!」


裕斗はあわてて返し、船へと乗り込んだ。


ヴァネッサも「私に命令すんじゃないわよ」とグチりながら船に乗った。


「おおっ!」


裕斗は船の中に入って目を輝かせた。


「すごい!廊下が広くて長い!部屋もいろいろある!どんな部屋なんだろ!」


裕斗のその様子に、ヴァネッサはため息をついた。


「なに子供みたいにハシャイじゃってんのよ……」


とそこで、裕斗の耳に付けた通信魔導具からエルザの声がした。


『離陸する。何かに掴まっていろ』


次の瞬間、ガコン、と床が揺れ、裕斗は倒れそうになった。


「おっとっと……」


裕斗はなんとか体制を立て直し、近くに付いている窓を見た。


街が、上から見える形でよく見えていた。


「おお!飛んでる!飛んでるよ!」


裕斗は窓に顔を近づけ、子供のようにはしゃぐ。

とそこで、再度裕斗の通信魔導具からエルザの声がした。


『ハシャいでいるところ悪いが、魔導騎士に乗って待機していてくれないか』


「ええ!?もうですか!?」


「ほら、隊長の言う通り準備するぞ」


「ああ!待って!」


「待たない。行くぞ」


ルイーゼは裕斗の肩を掴み、格納庫へ引きずっていった。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


ルイーゼに引きずられて連れてこられた船後部の格納庫には、縄から解かれた裕斗の“ランスロット”、ルイーゼの“トリスタン”、ヴァネッサの“ソルジャー”がそれぞれ立っていた。


各々は自分の魔導騎士乗り込んだ。


乗り込んだ。裕斗は操縦桿を握り、あぶみに足をかけ、一言呟く。


魔力接続開始コネクト・オン


次の瞬間、体に痛みが走り、“ランスロット”と繋がった。


「繋がったようだな」


ブウン、と音を立て、目の前のモニターのようなものにルイーゼとヴァネッサが映った。


と、そこで裕斗の耳に付けた通信魔導具から声がした。


『あのー、よろしいでしょうか』


この声は、副隊長のシーラだ。


「シーラさん?」


『はい、そうです。今回からユウトのサポートをすることになりました。何か分からないことがあったら答えますので、よろしくお願いします』


「あ、はい」


『……では、もう少しで敵機のいる場所に到着しますので落下に備えてください』


「え?落下?」


次の瞬間、“ランスロット”の足場が消失した。

当然、立つものの無くなった“ランスロット”は重力に引かれ落ちていく。


「え?あわわわわ!」


裕斗は手足をジタバタさせたが、なんとか地面に着地した。

少し遅れて、ルイーゼとヴァネッサの魔導騎士が着地する。


――あっぶなあ…


『少し歩いた先に敵機がいますので、ここからは自力でn移動をお願いします』


「ああ…はい…」


色々と言いたいことをグッとこらえ、裕斗はルイーゼやヴァネッサとともに先に進んだ。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「……あれか!」


木陰に隠れる裕斗の目線の先に“ソルジャー”がいた。


“ソルジャー”は……鹿を追いかけていた。

鹿はなんとか逃げようとするが、歩幅も速度も上の“ソルジャー”にあっさりと捕まる。

鹿は逃れようとバタバタと暴れていたがやがて力が尽きたように動かなくなった。


「あれは……何をやっているんだ?」


その問いにはルイーゼが答えた。


「魔導騎士の活動には魔力が必要なのは知っているだろう?しかしライダーからの魔力を供給されない暴走魔導騎士はああやって動物から魔力を吸い取って活動の糧にしているのだ」


“ソルジャー”はポイッと鹿の死体を捨て、フラフラとその場をさまよう。


「……さて、奴をどうするべきか」


ルイーゼは考え込む。


「相手は気づいてないみたいだし、三人一気に攻撃しちゃえば勝てるんじゃない?」


「そうだな。では、合図と同時に一斉に――」


「まどろっこしい!ちゃっちゃと倒すわよ!」


ルイーゼの声を遮り、ヴァネッサの“ソルジャー”が木陰から飛び出した。


「ちょ――」


裕斗が止めようと手を伸ばしたが、その行為虚しく空を切り、敵機の“ソルジャー”がヴァネッサの“ソルジャー”(紛らわしいのでヴァネッサ機と呼ぶ)に気が付いた。


“ソルジャー”はヴァネッサ機に向かって剣を振り下ろす。


「甘い!」


ヴァネッサはそれを槍で受け止める。


これはマズイ、と裕斗は思った。


暴走した魔導騎士は並の魔導騎士に比べて膂力、脚力ともに強化されているらしく、そのため鍔迫り合いに持ち込んだとしても力負けしてしまう。


しかし、ヴァネッサは鍔迫り合いに持ち込まなかった。

なんと、ヴァネッサは受け止めた剣を受け流し、敵機の体制を崩したのだ。


「ハアッ!」


その隙を彼女は見逃さず、槍の柄を短く持ち替え、“ソルジャー”の両腕を切断。無防備となった胴体に蹴りを入れた。


両腕を失った“ソルジャー”は吹っ飛び倒れた。両腕を失ったため立ち上がることができず、ジタバタとその場でもがく。


当然、奴が立ち上がるのを待ってくれるほど彼女は慈悲深くない。


「これで……」


ヴァネッサは飛び上がった。着地地点は“ソルジャー”のコア


「とどめよッ!」


ヴァネッサ機は槍を突き出す形で急降下し、切っ先がコアに深々と突き刺さった。

ヴァネッサは即座に槍を引き抜き、その場から飛び下がった。


次の瞬間、コアが赤く発光。

ドゴォォン!

と、すさまじい音とともに爆発した。


「すごい……」


10秒も立たずに仕留めた。まさに秒殺だ。


「ああ……」


ルイーゼもその腕前に啞然としていた。


ヴァネッサはフン、と鼻を鳴らして槍を機体の肩に担ぐ。


「お疲れ様。すごかったね」


裕斗はヴァネッサに話しかける。


「当たり前でしょ?だって私は――ウッ!?」


と、ヴァネッサが呻くと同時に彼女はうなだれた。

ブツン、とモニターから彼女が消え、機体も力が抜けたようにだらんとなる。


「?ヴァネッサ?」


裕斗はどうしたのかとヴァネッサ機に近づいた。


『いけませんユウトさん!』


次の瞬間、ヴァネッサ機の槍が裕斗を襲った。


「ッ!」


シーラの声がなければ、自分は死んでいただろう。

裕斗はその槍をとっさに腰から抜いた“アロンダイト”で受け止める。


「……!?ヴァネッサ!?」


裕斗が声をかけるが、彼女は何も答えない。それどころか、機体の力がだんだんと強くなっている。


そして、裕斗は信じがたいものを見た。


ブゥゥン、とヴァネッサ機のバイザーの奥に1つの真紅の瞳が現れ、胸には赤黒い宝石が現れたのだ。


「これは……暴走!?」

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