第18話 グーとパーでわかれましょ
朝食の後、裕斗はルイーゼの案内で国内を見て回ったり、彼女からこの世界の常識を教わったりした。
やはり、昨日の暴走魔導騎士の襲撃で人的被害はなかったものの、建物の被害は相当なものだったようで、街は復興に尽力していた。
家々も魔導具で、修復機能を持っていたら便利なのだがな、とはルイーゼの談。
やがて、夕日が沈み、ゴーン、ゴーンとどこからか鐘の音が鳴る。
「む。もう時間か。ユウト、そろそろ帰るとするか」
「そうだね」
裕斗とルイーゼは本部へと戻り、食堂で夕食を取った。
食堂には朝に比べ隊員の数が多かったからか、ヴァネッサの姿を見ることはできなかった。
夕食を食べ終えた裕斗たちは、自分たちの部屋へと戻る。
「あー、疲れた…」
裕斗はヨタヨタと頼りない足取りで自分のベッドに近づき、ボフッ、と飛び込んで身を沈めた。
一日中歩き回っていたからか、相当体に疲労がたまっている。
このまま目を閉じたらそのまま眠ってしまいそうだった。
「眠るのはいいが、体を洗ってからにするのだぞ」
「えー、めんどい」
「お前が面倒くさがるようでは、私が浴場まで引きずっていくが?」
「あー、分かったよ。行けばいいんでしょ行けば」
裕斗はよいしょ、と身を起こした。
とその時、ガチャリ、と部屋のドアが開き、外から赤髪の少女が入ってきた。
「な、なんでアンタたちがここにいるのよ」
「ヴァ、ヴァネッサ!?」
ドアを開けて入ってきた赤髪の少女は、ヴァネッサ・ランドールだった。
彼女の右手には、荷物を持っている。
「ど、どうしてここに……」
「あー、お前達ちょっといいか?」
と、そこで新たに声がかかる。
部屋の外から話しかけてきたのは、騎士団隊長の一人……マルセル・エンバルクだった。
「団長から伝言だ。今日から君たち三人でこの部屋を共有してくれってな」
「「「はあ!?」」」
衝撃の一言に、裕斗、ルイーゼ、ヴァネッサの声がきれいに重なる。
「ちょ、それはどういうことよ!?」
「そ、そうです!他に部屋はないんですか!?」
「ねえからそうなったんだよ。それに、同じ隊のライダー同士、寝食を共にした方が連携の強化につながるということで決まったんだ」
その一言に、ヴァネッサはピタッと動きが止まった。
「は?同じ隊?」
「ああ。言い忘れてたな。お前もユウトやルイーゼと同じエルザ隊に入ってもらうことになったから。……じゃ、そういうことでよろしくな」
そう言い残し、マルセルはその場から去った。
「ちょ…待ちなさいよ!」
ヴァネッサが制止の声をあげるが、マルセルが戻ることはなかった。
――あれは、逃げたな
「ど、どうすんのよ…?」
ルイーゼはハア、とため息をつく。
「団長の決定だ。了承するしかないだろう」
ルイーゼの言葉に、ヴァネッサはクッ…と歯嚙みした。
「もうこの際、同じ隊に入ることや部屋が同じことはどうでもいいわ!……けど、ベッドはどうするのよ!?」
ヴァネッサの意見に、裕斗は確かに、と思った。
この部屋にあるベッドは2つ。対して、自分達は3人いるからもう1人分足りない。
さすがに、床に寝るわけにもいかないだろう。
なら、
「女性同士なんだし、ルイーゼとヴァネッサで1つ使えば……」
「「絶対いや!」」
――ですよね…
「アンタたちが二人で1つ使えばいいでしょ!」
「ええ!?それは…ねえ?」
「あ…ああ」
ルイーゼは顔を赤くして目をそらした。
――ちょっとルイーゼさん、なんで顔真っ赤なの?
「じゃあどうすんのよ!?」
「うーん、どうするって言ってもなあ……」
このまま話し合ったところで、きっといい案は出ないだろう。
であれば、もう運に任せるほかない。
「じゃあ、グーとパーでわかれよう」
「グーと…」
「パー?」
ルイーゼとヴァネッサは、裕斗が何のことを言っているのか分からず、首を傾げた。
「ええとね、文字通り『グーとパーでわかれましょ』と言った後、グーかパーの手の形をどっちか出して、手の形が同じ人同士グループを作って別れる方法だよ」
裕斗はグー、パーと拳を握ったり手の平を開いたりして伝える。
「面白い、それで決めましょ」
「……あまりこういった運で決めるのは好きではないのだがな」
ヴァネッサは乗り気なのに対し、ルイーゼはあまり乗り気ではなさそうだった。
「でも、こうでもしないと決まりそうになくない?」
「…それも…そうだな。分かった、これで決めよう」
ルイーゼはギュッ、と拳を握った。
「それじゃ、いくよ!」
裕斗は何を出すか分からないよう、拳を後ろに引く。
「グーと…」
「パーで…」
「わかれましょ!」
裕斗の声とともに、3人の手が出る。
結果は…
「僕と…ヴァネッサがパー…、ルイーゼがグー…。つまり…」
「お前たち二人が一つのベッドを共有するということだな」
「うそーん!」
「ま…まあ、頑張ってくれ」
そう言うルイーゼの顔は少し残念そうだった。一人で眠れることがうれしくないのだろうか?
「……………」
ちなみに、ヴァネッサは無言で出したパーの手を見下ろす。
「……アンタ」
「……なんでしょうか」
「寝てるときに何かしたら殺すからね」
「……ハイ」
そんな度胸があったなら、この年まで童貞やってないんだよな…と、裕斗は心の中で呟いた。
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